10月11日にプロ野球のドラフト会議が行われたが、指名された選手の1人がにわかに話題となっている。巨人から2位指名を受けた山田龍聖(JR東日本)だ。

 ドラフト当日は都市対抗の東京都第3代表決定戦が行われており、3番手で登板した山田は9回1/3を投げて10奪三振の好投を見せたものの延長18回に決勝点を与えて敗戦。そして翌日の第4代表決定戦でも8回から5番手で登板し、3イニングのロングリリーフをこなしたのだ。山田の活躍もあってチームは都市対抗の出場権を獲得したが、2日間で投じた投球数は合わせて197球。この結果に巨人ファンからは山田の酷使を心配する声が上がった。

 社会人野球にとって都市対抗野球は最大の目標であり、出場権をかけた予選ではエース格の選手が連投することも珍しくない。また、プロのように多くの試合を投げ続けているわけではないだけに、この2試合だけで酷使と批判するのは早計だが、プロ野球では見られない起用に普段社会人野球に触れることのないファンには驚きだったようだ。逆にそれだけファンの間でも投手起用には敏感になっているということだが、では果たしてプロ野球の投手起用は近年どのように変化しているのだろうか。

 まず2010年以降200イニング以上登板した投手と、その年最もイニング数を投げた投手を調べてみたところ以下のような結果となった(所属は当時)。

2010年:6人 前田健太(広島):215回2/3
2011年:7人 ダルビッシュ有(日本ハム):232回
2012年:2人 前田健太(広島):206回1/3
2013年:2人 金子千尋(オリックス):223回1/3
2014年:2人 メッセンジャー(阪神):208回1/3
2015年:2人 大野雄大(中日):207回1/3
2016年:0人 則本昂大(楽天):195回
2017年:0人 マイコラス(巨人):188回
2018年:1人 菅野智之(巨人):202回
2019年:0人 千賀滉大(ソフトバンク):180回1/3
2020年:0人 大野雄大(中日):148回2/3

 昨年極端に少ないのはコロナ禍で試合数が少なかった影響だが、それを差し引いても明らかに減少傾向なのがよく分かる。今年も両リーグトップの山本由伸(オリックス)が10月14日終了時点で178回2/3となっており、日程的なことを考えても200イニング達成は現実的ではない。

 投手として最高の名誉と言われる沢村賞は先発完投型の投手を対象としており、7項目ある基準には200イニング以上登板、10完投以上というものがあるが、2010年以降でこの2つを満たすことができた受賞者は2011年の田中将大(楽天・226回1/3・14完投)と、2018年の菅野智之(巨人・202回・10完投)の2人だけである。2019年には沢村賞の該当者なしとなっており、基準の変更も議題に挙がっているが、先発投手がフル回転する時代ではなくなっていることは明らかと言えるだろう。

 以前と比べて変化が見られるのはエースクラスの投手だけではない。ルーキー、若手に対しても慎重な起用法が目立つようになっている。今年は伊藤大海(日本ハム)、早川隆久(楽天)、伊藤将司(阪神)などルーキーが目立つが、伊藤大海と早川は大学卒、伊藤将司は社会人からのプロ入りであり、アマチュア時代の経験も豊富な投手たちである。

 高校卒では2年目の宮城大弥(オリックス)が多く起用されているが、それでも優勝争いをしている10月に疲労を考慮して一度登録抹消して調整期間を設けている。宮城と同期の奥川恭伸(ヤクルト)、佐々木朗希(ロッテ)の2人にいたっては、かなりこまめに登録抹消して状態を見ながら起用していることがよく分かる。高校卒業時点での完成度や体力、プロ野球のレベルの上昇などを考えると単純に比較することはできないが、今年引退を表明した松坂大輔(西武)や田中将大(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)などが1年目、2年目からフル回転していたことを考えると、若手投手を守ろうという姿勢は強くなっているように感じる。

 佐々木が高校3年夏の岩手大会決勝で登板回避した時には大きな議論となり、更に昨年一軍に帯同しながらもなかなか実戦登板しない首脳陣の方針に過保護ではないかという意見も多かったが、10月14日のオリックスとの天王山でのピッチングを見て、その方針は間違っていなかったと感じたファンも多かったはずだ。前述したように体力面や成長時期には個人差があり、誰でも慎重に起用すれば良いというものではないが、長く活躍するためにどうすべきかということに目が向き始めたのは野球界全体でもプラスではないだろうか。より長い期間、高いパフォーマンスを発揮する選手が更に増えることを望みたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員