17日の広島戦で2−4と敗れた阪神。首位・ヤクルトとの差が3ゲームに広がり、残り試合を考えると逆転優勝が厳しい状況になった。

 6月までは首位を快走していたが、打線の勢いが止まると失速した。前半戦大活躍だったドラフト1位・佐藤輝明が8月下旬から野手ワースト記録の59打席連続無安打とスランプに苦しんだが、これは責められないだろう。新人左打者の本塁打記録を75年ぶりに更新する23本塁打をマーク。阪神という枠を超え、球界を盛り上げた。大きな誤算はエース・西勇輝だ。今季6勝9敗、防御率3.76。打線の援護に恵まれない登板も少なくなかったが、7月以降は3カ月連続で月間防御率が5点台を超えた。制球力と走者を出しても要所を締める粘り強さが真骨頂だが、集中打を浴びて大量失点を喫する場面が多く見られた。

  マウンド上での立ち振る舞いも物議を醸した。今月13日の巨人戦で先発した際、右肘の違和感で2回途中に緊急降板。投手コーチや捕手の坂本誠志郎がマウンドに駆け寄る前に、三塁ベンチに消えてしまった。SNS、ネット上では「先発投手としてあんな職場放棄かと疑われるような態度はあってはならない。アクシデントがあったならあったで、後を任せるリリーフの為に肩を作る時間を稼ぐなりやるべきことはあるはずだ」、「肘の痛みで降板は仕方ないですが、さっさとマウンド降りてベンチへ向かう態度いかがなものかと思いました」など批判のコメントが殺到する事態になった。

 「責任感の強い投手なので、悔しい思いがあったのかもしれない。誤解されている部分もあると思います。マウンドを掘り起こしたりする態度が悪いと言われていますが、足場がしっくりする形で投げたいのでパフォーマンスを高めるために必要な準備なのです。西は優勝したいという思いが誰よりも強い。現状に一番歯がゆさ、悔しさを感じているのは本人に他ならないと思います」(スポーツ紙記者)

 オリックスからFA移籍して3年目。19年は10勝、昨年は11勝と期待に応える結果を出し、今季も2ケタ勝利は最低ラインだっただけに首脳陣も大きな誤算だ。戦線離脱して復帰のメドは立っていない。エースの座が揺らぎ、今後も先発ローテーションの地位が保証されているわけではない。リーグトップの12勝を挙げている青柳晃洋、2年連続2ケタ勝利の秋山拓巳、9勝3敗と高い勝率を誇るガンケル、左のエースとして期待される高橋遥人、新人で8勝をマークしているドラフト2位左腕・伊藤将司と能力の高い先発選手がそろう。今季はセットアッパーで活躍している左腕・及川雅貴や19年ドラフト1位右腕・西純矢も来季は先発ローテーション入りの期待がかかる。

 今年2月の春季キャンプでは、伊藤とドラフト3位の佐藤蓮がトレーニング器具を雑に扱ったり落ちているゴミを無視したとして、西がその態度を叱責したことが在阪メディアに大々的に報じられた。後輩の教育役を買って出たのも投手陣を引っ張るリーダーとしての自覚の芽生えだろう。だが、最も求められるのはエースとしてのパフォーマンスだ。シビアな世界であることは西が誰よりも体感している。阪神ファンの信頼を取り戻し、「エース復権」の日は来るか。(松木歩)