サッカーW杯カタール大会の開幕まで約半年。森保一監督率いる日本代表が今後、本大会へ向けた強化と仕上げを行う中で、選手たちは熾烈な「メンバー入り」を争うことになる。6月に組まれている強化試合で序列が変わる可能性は大いにあるが、改めて現時点での「当確」とともに「当落選上」の選手たちを整理したい。

 現時点での「当確」は11人か。予選突破を決めるまでの全9試合でゴールマウスを守った権田修一と、唯一無二のキャプテンシーでチームを牽引してきた吉田麻也。もはやワールドクラスの能力を持つといえる冨安健洋と故障から復帰すれば不動の右SBである酒井宏樹もメンバー入り間違いなし。中盤では、遠藤航は欠くことのできない「チームの心臓」であり、最終予選途中から採用した4−3−3システムにおいて高い機能性を示した守田英正、田中碧の2人も不可欠な存在だ。

 そして、最終予選で救世主となった伊東純也、三笘薫の2人のドリブラーは間違いなく現チームのストロングポイントであり、日本人の中では傑出した得点能力を持つ南野拓実も外せない。さらに控えながらCBとアンカーを高いレベルでこなせる板倉滉も必ず連れて行くだろう。彼ら11人は、すでにドーハ行きの航空券を手渡されているといえるような存在だ。

 さらに、当確は打てなくても「濃厚」といえる面々もいる。W杯での経験をチームに還元できるベテランGKの川島永嗣に対する森保監督の信頼は厚く、DF陣ではレギュラー不在時にも安定したプレーを見せた谷口彰悟と山根視来の2人は最終予選で能力の高さと連携面でも問題ない証拠を見せた。また、パフォーマンス対しての賛否はあった中でも起用され続けた長友佑都、その控えながら途中出場のカードとして重用された中山雄太も、森保監督はカタールに連れて行くだろう。

 中盤では、インサイドハーフでもウイングでも起用可能な原口元気の汎用性が高く、メンバーには必ず入るはず。同様に、最前線で使い続けてきた大迫勇也をメンバー外とすることは考え難く、Jリーグでも進化した姿を見せている上田綺世の序列も高い。以上の8人は、まだ手渡されてはいないが、すでに記名済みのチケットが用意されているといえる面々だろう。

 ここで前回大会までなら“残り4枠”という狭き門になるが、コロナ禍の影響が続く今回のW杯は、すでに定着している「1試合5人交代制」とともに、選手登録枠を「23人」から「26人」へと拡大される見通し。そうなれば「残り7枠」となり、随分と選択肢が増える。ポジション的には「GK」を1人、「3センター」の控えと「ウイング」も左右で1人ずつ欲しいところ。南野を前線のマルチロールと考えても、4−2−3−1にした際の「トップ下」に1人、さらに「最前線のFW」にもあと1人は必要。残る1人は、3バックにした際の「CB」もしくは「ウイングバック」、あるいは日本の将来を見据えた「育成枠」があるかも知れない。

 そう考えた際、「GK」の残り1枠はシュミット・ダニエルと谷晃生の争いになる。ともに能力的には権田と遜色なく、シュミット・ダニエルには権田を10センチ上回る身長197センチの高さとベルギーリーグで強靭なフィジカルを持つFWと対峙してきた経験がある。谷も身長190センチと高さは十分で、21歳の若さとともに東京五輪で現在のDFラインの面々たちと戦い、スペインと対峙した経験がある。現時点で優劣の判断を下すのは難しく、6月シリーズの4試合の中でのパフォーマンスが重要な決定材料になりそうだ。

 中盤の「3センター」の人選も悩みどころだろう。最終予選の途中まで2ボランチの主戦格だった柴崎岳と優れたポリバレント性を持つ旗手怜央が有力だが、ともに決め手を欠くことも事実。その他にも優れた選手は多く、森保ジャパンで招集歴のある橋本拳人や稲垣祥、あるいはスイスで結果を残している川辺駿やポルトガルでインサイドハーフとしての能力を開花させた藤本寛也もいる。さらにベルギーで活躍を続ける森岡亮太も対応可能な能力を持っているはずだが、果たして森保監督の構想に入っているのかどうか。Jリーグにも樋口雄太や橘田健人ら楽しみな人材が頭角を現しており、6月シリーズで初招集される選手がいるかどうかが大きな注目点だ。

 左右の「ウイング」は激戦区といえる。伊東に続く右は、久保建英と堂安律の争い。久保には他の日本人にはないメンタリティーがあり、東京五輪で見せたような大舞台での強さも魅力になるが、堂安は代表漏れを経験してからオランダリーグで一気にギアを入れ替えたような活躍を披露しており、メンバー外にするのは非常に惜しい。一方、最終予選で「先発・南野」と「ジョーカー・三笘」の形が試合を重ねるごとに機能していった左は、中島翔哉の復帰や奥川雅也の抜擢を求める声があるが、ここまでの森保監督のチーム作りの流れを見る限りでは、浅野拓磨や前田大然のといったスピードタイプのFWがウイングとして起用される可能性の方が高そうだ。

 現状ではオプションであるが、点を取りに行く際に必要になるであろう「トップ下」では、欧州カップ戦で躍動した鎌田大地の復権がありそうだ。だが、先述した森岡もトップ下が主戦場であり、南野も適正は左サイドよりもトップ下にある。“日本の至宝”である久保も、トップ下の方が多彩なプレーを表現できるが、現状では伊東と南野の控えであり、今後、堂安と鎌田が所属クラブでアピールを続ける傍ら、久保が来シーズンもベンチスタートの日々が続くようだと、ドーハ行きの飛行機に乗り遅れる可能性もある。

「最前線のFW」は、セルティックのスターとなった古橋亨梧が、大迫、上田に続く3人目としては有力。左サイドもこなせる点もメンバー入りへのプラス材料になる。同じく、前田大然のスプリント能力は非常に魅力的で、ドイツ、スペインを相手にした際の「前線からのプレッシング」においても必ず相手の脅威になる。そこに林大地や原大智のベルギー組、そしてJリーグで出色のプレーを続けている鈴木優磨が“サプライズ招集”されることはあるのか。いずれにしても、最終予選を戦った主要メンバーの中では、GKを除いて柴崎、旗手、久保、堂安、浅野、前田、鎌田、古橋が「当落線上」にあり、その中から最低2人は「落選」することになるだろう。

 さらに6月シリーズでの新たに招集されると見られている伊藤洋輝と菅原由勢らがアピールに成功すれば、谷口、山根、長友、中山といった現状では「濃厚」と思われる守備陣の面々も「落選」する可能性はあり、佐々木翔や植田直通といった面々もチャンスはゼロではない。また、「5人交代制」を有効活用するためには、流れを変えられる攻撃陣の交代選手を多く用意すべきであり、対ドイツ、対スペインの戦略を練る中で3バックシステムへの変更を考えるのであれば、チーム編成も変わってくる。

 果たして、森保監督はどのような「26人」を選んでカタール・ドーハの地へ向かうのか。アジア予選と本大会とでは戦い方が異なり、“弱者”である日本が決勝トーナメントに進出するためには、より挑戦的な戦いとメンバー選考が必要になる。まずは6月に組まれている4試合に注視し、残り半年の“サバイバルレース”の中で森保ジャパンが「強くなる」ことを願いたい。(文・三和直樹)