昨年は又吉克樹(中日→ソフトバンク)1人だけと静かだったフリーエージェント(以下FA)による移籍だが、今年はここまで既に3人の移籍が決まり、久しぶりに多くの動きを見せている。そして特徴的なのが移籍の決まった森友哉(西武→オリックス)、嶺井博希(DeNA→ソフトバンク)、伏見寅威(オリックス→日本ハム)がいずれも捕手という点だ。そして過去のFA移籍を振り返ってみると、捕手ならではの傾向が見えてくる。これまでにFAで移籍した捕手の移籍前後の成績をまとめてみると以下のようになった。

田村藤夫(1996年オフ・ロッテ→ダイエー)
1996年:95試合 28安打1本塁打8打点 打率.166
1997年:22試合 6安打0本塁打2打点 打率.240

中嶋聡(1997年オフ・オリックス→西武)
1997年:73試合 37安打2本塁打14打点 打率.219
1998年:60試合 25安打2本塁打7打点 打率.236

谷繁元信(2001年オフ・横浜→中日)
2001年:137試合 117安打20本塁打70打点 打率.262
2002年:130試合 96安打24本塁打78打点 打率.215

野口寿浩(2008年オフ・阪神→横浜)
2008年:55試合 27安打1本塁打9打点 打率.191
2009年:17試合 8安打0本塁打3打点 打率.211

相川亮二(2008年オフ・横浜→ヤクルト)
2008年:101試合 78安打7本塁打22打点 打率.255
2009年:122試合 102安打5本塁打43打点 打率.247

橋本将(2009年オフ・ロッテ→横浜)
2009年:94試合 59安打2本塁打27打点 打率.234
2010年:43試合 33安打2本塁打13打点 打率.246

藤井彰人(2010年オフ・楽天→阪神)
2010年:8試合 4安打0本塁打2打点 打率.222
2011年:99試合 59安打2本塁打15打点 打率.223

細川亨(2010年オフ・西武→ソフトバンク)
2010年:112試合 56安打8本塁打33打点 打率.191
2011年:97試合 44安打1本塁打20打点 打率.201

鶴岡一成(2011年オフ・巨人→DeNA)
2011年:34試合 12安打0本塁打1打点 打率.218
2012年:102試合 38安打1本塁打15打点 打率.189

日高剛(2012年オフ・オリックス→阪神)
2012年:52試合 28安打1本塁打8打点 打率.239
2013年:44試合 28安打2本塁打7打点 打率.289

山崎勝己(2013年オフ・ソフトバンク→オリックス)
2013年:91試合 35安打1本塁打20打点 打率.252
2014年:60試合 7安打0本塁打4打点 打率.108

鶴岡慎也(2013年オフ・日本ハム→ソフトバンク)
2013年:114試合 72安打2本塁打26打点 打率.295
2014年:98試合 35安打0本塁打25打点 打率.216

相川亮二(2014年オフ・ヤクルト→巨人)
2014年:58試合 48安打2本塁打21打点 打率.250
2015年:40試合 31安打4本塁打17打点 打率.313

大野奨太(2017年オフ・日本ハム→中日)
2017年:83試合 34安打3本塁打13打点 打率.221
2018年:63試合 27安打2本塁打10打点 打率.197

鶴岡慎也(2017年オフ・ソフトバンク→日本ハム)
2017年:29試合 9安打3本塁打5打点 打率.321
2018年:101試合 58安打2本塁打22打点 打率.243

炭谷銀仁朗(2018年オフ・西武→巨人)
2018年:47試合 32安打0本塁打9打点 打率.248
2019年:58試合 33安打6本塁打26打点 打率.262


 これまで捕手がFA移籍したケースは延べ16件(14選手)。そのうち移籍前年に100試合以上に出場していたのは4人しかいない。ちなみに今年のオフに移籍の決まった3人でも100試合以上に出場していたのは森だけで、嶺井と伏見の2人はキャリアハイでも100試合以下にとどまっている。裏を返せばそれだけレギュラーではなかったとしても、評価されやすいポジションということではないだろうか。

 そして移籍後の成績についてもその傾向が表れている。移籍した先の球団で完全にレギュラーをつかんだ選手は谷繁と相川(横浜→ヤクルトのケース)の2人だけで、他は控えとなっていることが多いのだ。大野のようにレギュラーを期待されながら成績を落としてしまったケースもあるが、大半は他の捕手との併用を前提として獲得したものだったのではないだろうか。嶺井などはまさにそのような意図で獲得した選手であり、レギュラーの甲斐拓也を完全に控えに追いやることを期待しているファンはほとんどいないだろう。

 嶺井に対して控えになる可能性が高いのになぜ移籍するのかという声もあるが、出場機会を求めて成功した例も確かに存在している。1人目は藤井だ。楽天では嶋基宏の台頭によって出場機会を減らしていたが、阪神移籍後に見事に復活。移籍3年目の2013年には112試合に出場し、キャリアハイとなる77安打も放っている。もう1人が2度目のFA移籍で古巣の日本ハムに戻った鶴岡だ。2017年は甲斐の成長で出場機会が激減したが、日本ハム復帰1年目には101試合に出場するなど活躍。まだまだ力があるところを見せている。捕手が特殊なポジションということを改めて感じさせた例と言えそうだ。

 FA以外でも石川亮がトレードで日本ハムからオリックスに移籍しており、捕手の数が少ない中日なども現役ドラフトなどで捕手の獲得に動く可能性は高い。今後も捕手が移籍市場を賑わすことは十分に考えられるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。