カタールW杯のグループステージで、日本代表がドイツ代表に2−1で逆転勝利を飾った試合は世界中に衝撃を与えた。奮闘したのはピッチの選手だけではない。勝利の立役者のひとりが森保一監督であることは間違いない。

 前半戦はドイツに攻め込まれる一方的な展開だった。前半33分にGK権田修一の犯したミスからPKで先制点を奪われると、森保監督が動く。後半開始から久保建英に替えて冨安健洋を投入して3バックにシステムを変更。さらに、後半12分にMF三笘薫、FW浅野拓磨、後半26分にMF堂安律を投入。後半29分には酒井宏樹に代えて南野拓実と攻撃的な選手をつぎ込んだ。この采配がハマる。三笘が左サイドで攻撃の起点になり、堂安が後半30分に同点ゴールを奪うと、攻撃の手を緩めない。浅野が後半38分に逆転弾。板倉のロングパスに最高のトラップで合わせると、快足でDFを振り切り、世界屈指のGKノイアーからゴールを奪った。

 スポーツ紙デスクは、森保采配を絶賛する。

「正直、今までの4年間で森保監督の采配に対する評価は低かった。相手の後手、後手に回ることが多く、動きが遅い。この試合は前半にドイツに圧倒的に押し込まれて動かざるを得なかった背景があるが、三笘を左ウイングバックで起用したのは驚きでした。高い位置で輝く選手なので持ち味を発揮できないかと思われたが、攻守でMVP級の働きをみせた」

 勝てば官軍だ。森保監督の采配を絶賛する声が日本国内だけでなく、世界からも続出しているが、違った見方もある。現地・カタールで取材するスポーツ紙記者は試合をこう振り返る。

「森保監督の采配が逆転勝利の要因になったことは間違いない。ただ、試合内容はドイツの自滅です。前半であれだけ攻め込みながら2点目を奪えず、後半22分で攻撃の軸だったイルカイ・ギュンドアン、トーマス・ミュラーを引っ込めたことで攻撃が組み立てられなくなった。日本相手に勝てるだろうという油断があったと指摘されても言い訳できない」

 また「ドイツ代表は世代交代がうまくいっていない」と分析する。

「ドイツ代表は2018年のロシアW杯でもグループステージで敗退し、20年のEUROでも決勝トーナメント1回戦でイングランドに0−2で敗退している。世代交代がうまくいかず、以前のような攻守のスキのない強さが見られなくなっている。日本代表は大金星を挙げましたが、グループステージの3戦目で対戦するスペイン代表や勝ち上がった場合に決勝トーナメントで戦う相手はドイツ代表よりも強い。森保監督はドイツ戦のハーフタイムから動きましたが、それでは手遅れになるレベルの相手です。ドイツ戦では猛攻を受けた前半に動かなかったですが、フォーメーションを変更して対処しなければ、今後対戦する相手は失点を積み重ねて手遅れになる。神采配と絶賛するのは早いと思います」

 W杯の全64試合を無料生中継する「ABEMA」でドイツ戦の解説を務めた元日本代表MF本田圭佑は試合後、「勝てたのはもちろん(森保監督の)采配のおかげなんですけど、気になる采配はあったんで、コスタリカ戦ではその課題をしっかり修正しないと。ドイツが勝ち試合を落としたとも言えるんで。勝った日本はもちろん素晴らしいんですけど、次に向けてしっかり修正してほしいと思います」とコメントしている。

 ドイツ戦の逆転勝利で最高のスタートを切ったが、W杯はこの先も続く。今回出場しなかったメンバーを含め、森保監督はどんな用兵術で試合を組み立てるか注目される。(今川秀悟)