プロ野球界では現在、長く険しいペナントレースを終えた選手たちが、翌シーズンへ向けた契約更改を続々と行なっている。「夢を売る職業」であり、かつて鶴岡一人が「グラウンドにはゼニが落ちている」と語ったプロ野球の世界。その言葉通りに年俸の大幅アップを勝ち取った選手は誰なのか。“アップ率”に注目すると、今季ブレイクした選手が誰なのか、よく分かる。(金額はすべて推定)
11月30日までに契約更改を終えた選手の中で筆頭は、高卒3年目で最多安打のタイトルを獲得した岡林勇希(中日)だ。昨季までの2年間では1軍通算30試合出場で17安打を放ったのみだったが、今季は開幕スタメンからレギュラーを確保し、8月以降は1番に座ってチーム最多の142試合に出場した。
打率.291をマークしてリーグ最多タイの161安打を放ちタイトルを獲得するとともに、リーグ2位タイの24盗塁、リーグトップ7補殺も記録し、ベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞。契約更改では今季年俸から441%増(740万円→4000万円)でサイン。「思った通りの金額でした」と笑顔を見せた。
野手陣では大卒3年目の高部瑛斗(ロッテ)も、今季年俸から250%増(1000万円→3500万円)の大幅アップとなった。プロ2年間は2軍では活躍するも、1軍では通算38試合出場で9安打と“壁”にぶち当たっていたが、今季はオープン戦からアピールに成功して外野のレギュラーに定着した。
137試合に出場して148安打、打率.274をマークしながら自慢の俊足を生かして44盗塁で盗塁王を獲得。広い守備範囲でゴールデン・グラブ賞も受賞した。飛躍のシーズンを証明する形での契約更改となったが、「今年の成績で満足していないし、まだまだできると思っている。体を鍛えて来年は今年以上のものを出せるようにしたい」と力強く語った。
投手陣では、中継ぎとして42試合に登板してリーグ優勝&日本一に貢献した本田仁海(オリックス)が340%増(500万円→2200万円)となった。高卒1年目に右肘を疲労骨折して長期離脱を強いられたが、手術から半年以上のリハビリ期間を経て実戦復帰を果たすと、2020年は1軍で1試合、2021年は1軍2試合に登板。
そして迎えた今季、中継ぎに転向して大活躍して欠かせない戦力になった。「4年間先発で結果が出なかったけれど、リリーフで結果を出せた」と本田。納得の表情を見せて契約更改を終えると、来季へ向けて「8回を任されるようになりたい」とさらなる進化を誓っている。
その本田を上回るアップ率だったのが、甲子園優勝投手でもある清水達也(中日)で、今季年俸から344%増(720万円→3200万円)でサイン。昨季までは4年間で1軍通算17試合と伸び悩んでいたが、リリーフに本格転向した高卒5年目の今季は、自己最多の54試合に登板して3勝3敗32ホールド、防御率3.04と奮闘。プロ初セーブもマークした。契約更改後の記者会見では「(年俸を)すごく上げてもらったので、素直にうれしかったです」と笑み。来季へ向けて「もっとレベルアップして圧倒できる投球をしたい」と意気込みを語った。
そして、球団史上最高、歴代でも3位の驚異的なアップ率となったのが湯浅京己(阪神)だ。2018年に独立リーグからドラフト6位で入団した右腕は、プロ入り4年目の今季はセットアッパーとして大車輪の活躍。59試合の登板で43ホールド、防御率1.09の好成績で最優秀中継ぎのタイトルに輝き、840%増(500万円→4700万円)の契約を勝ち取った。本人も「ここまでは想像していなかった」と予想以上の昇給に笑顔を見せ、「2年連続のタイトルを」と来季への抱負を語っている。
中継ぎとして同じく飛躍のシーズンを送った伊勢大夢(DeNA)も233%増(2760万円→9200万円)と大幅アップ。今季はリーグトップの71試合に登板して39ホールド、防御率1.72と安定した投球を見せ、先輩の山崎康晃を「いつか超えたい」とクローザー座奪取にも意欲を示している。
その他、育成選手から這い上がって今季32試合に登板した31歳・渡邉雄大(阪神)が256%増(450万円→1600万円)、ドラフト1位入団の期待にようやく応えて今季47試合に登板した矢崎拓也(広島)が250%増(800万円→2800万円)と200%超のアップ率を勝ち取ってサイン。さらにアップ率順に、増田陸(巨人)が195%(610万円→1800万円)、入江大生(DeNA)が181%増(1600万円→4500万円)、才木浩人(阪神)が171%増(700万円→1900万円)、高橋宏斗(中日)が150%増(1400万円→3500万円)、松本竜也(広島)が129%増(700万円→1600万円)、西純矢(阪神)が124%増(1250万円→2800万円)、島田海吏(阪神)が122%増(1350万円→3000万円)、赤星優志(巨人)が120%増(1000万円→2200万円)、吉田輝星(日本ハム)が106%増の(970万円→2000万円)。前述した4人に加えて、彼らも今季ブレイクした選手と言えるだろう。
その一方で年俸大幅ダウンとなった選手たちも存在し、最も大きなダウン率になったのが、宮西尚生(日本ハム)。野球協約の減額制限(1億円超は40%)を大きく超える80%減(2億5000万円→5000万円プラス出来高)でサインした。プロ1年目から14年連続50試合以上登板を記録し、最多の通算ホールド数の日本記録も持つタフネス左腕だが、2年契約2年目で6月に37歳となった今季は不調が続き、9月に左肘を手術したこともあり、24試合で0勝3敗7ホールド、防御率5.66の成績に終わった。
契約更改後の会見では「ファンの期待を裏切ってしまったという思いだけがある」と頭を下げるとともに、来季へ向けて「400ホールド達成、優勝、監督の胴上げができるよう、最年長になる自覚をもって少しでも貢献していきたい」と奮起を誓った。その他、同じくベテランの中島卓也(日本ハム)が63%減(8000万円→3000万円)、今季1試合のみの登板に終わった岩嵜翔(中日)も59%減(6800万円→2800万円)の大幅ダウンとなった。
今後、まだまだ各球団の大物選手たちが契約更改を控えており、三冠王を獲得してリーグ連覇の原動力となった村上宗隆(ヤクルト)が今季の年俸2億2000万円から、2年連続沢村賞&MVPを獲得してチームを日本一に導いた山本由伸(オリックス)は今季年俸3億7000万円から、ともに「どこまでアップするのか」が大きな注目点。新人王に輝いた大勢(巨人)、水上由伸(西武)、日本一に貢献した阿部翔太(オリックス)、さらにプロ11年目での“打撃開眼”で首位打者に輝いた松本剛(日本ハム)も大幅アップ間違いなしだろう。不況にコロナ禍、円安に物価高と、ネガティブな話題ばかりが続くが、せめて「夢を売る」プロ野球の世界では、景気の良い話を聞きたいところだ。
ここまで最も“昇給”したのは? 「年俸アップ率」から見る今季のブレイク選手たち

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