ツインズ・前田健太の復活を期すシーズンが始まろうとしている。

 昨季は2021年に受けた右肘手術の影響もあり全休し、今季は渡米時にドジャースと結んだ8年契約の8年目。今後のキャリアを占う意味でも非常に重要なシーズンとなりそうだ。

「(前田の復帰を)球団、ファンの誰もが待っていた。ツインズはここ数年、ア・リーグ中地区で優勝候補にも挙げられることもあるが世界一に届かない。球団は勝つために前田を獲得したが、故障による不調と離脱がチームの低迷に直結した。上位を狙うためにも必要不可欠な存在」(大手エージェント会社関係者)

「投げることが大好きな前田は当初、手術を受けることに関して悩んだらしい。手術後のリハビリ期間、ボールを握ることができなかったのは相当の我慢が必要だったはず。マウンドに上がりたくて、ウズウズしているのが目に浮かぶ」(高校時代から知るスポーツライター)

 2016年にポスティングシステムを利用して広島からドジャース入りした前田は、メジャー1年目に16勝(11敗)をマークすると、その後は先発、リリーフの両方で活躍。2019年のオフにツインズにトレードされると、移籍1年目にはコロナ禍の影響で試合数(60試合)が短縮された中で、11試合に先発して6勝1敗、防御率2.70という好成績をマーク。サイ・ヤング賞の投票ではア・リーグ2位の投票を集めた。

 翌2021年シーズンは開幕投手も務めるなど、前年に地区優勝を果たしたツインズでさらなる飛躍を予感させていたが、防御率が4点台半ばと安定感を欠いた。そして、8月の登板で右肘に違和感を訴え降板すると、翌月に右肘のトミー・ジョン手術を受け離脱。そのシーズンの残り試合、そして2022年シーズンも全休となった。

 トミー・ジョン手術は術後完全復帰まで12〜14カ月と言われており、今シーズン前田は開幕からの活躍が期待されている。本人もこれから始まる春季キャンプへ向け「準備は100%」と語るなど、復活に手応えを感じているようだ。

「春季キャンプの状況を見てからにはなるが、ローテーションの一角に入ってくるはず。手術とはいえ前田のケースはそこまで重症ではなかった。クリーニングの延長線上にあるもので、休養と体のケアができたと思えば良い。経験と実績は十分なので、試合勘が戻れば問題ない」(MLBアジア地区担当スカウト)

「手術以前のパフォーマンスを取り戻すのはもちろん、それ以上の成長を目指しているはず。完全復活をアピールすることで、今オフは本人の希望に沿った形で選択肢が広がる」(大手エージェント会社関係者)

 今年はメジャー移籍時にドジャースと結んだ8年契約の8年目。オフにFAとなるため、年俸が高騰するメジャーで良い契約を掴み取るためにも結果を残したいところだ。だが、将来的には日本球界に復帰したいとも語っている前田は今季で35歳。タイミング的に「NPBに戻るのでは」という声もある。

「昔からメジャーに対する憧れや夢のようなものは、そこまで大きくなかったように感じた。野球人として自分のレベルを知り、最高の舞台で力を試したかったのかもしれない。世界一(ワールドシリーズ制覇)へのこだわりがなければ、やり切ったと感じた段階で日本球界への復帰もあるかもしれない」(高校時代から知るスポーツライター)

 そして、仮に日本球界に復帰となった場合、プレーするチームはやはり古巣となるのだろうか。

「(メジャー移籍後も)広島との良好な関係は変わらない。マエケンは義理堅い男なので、オーナーをはじめ、球団関係者、元チームメートへの連絡を欠かさない。在籍時に黒田博樹が広島へ復帰したのを間近で見ていたこともあり、同じような道を選んでもおかしくない」(広島担当記者)

「仮に日本球界復帰となった場合はお金ではなく、ファンの熱意なども含め本気で必要としてくれる球団となるでしょう。そうなると広島しか考えられない。NPB他球団の可能性があるとすれば、広島側と条件面で大きな開きがある場合。もちろん絶対に欲しい選手だが、現状では付け入る隙はなさそう」(在京球団編成担当)

 前田は2016年からメジャーに移籍したが、入れ違いでその年から広島はリーグ3連覇を果たした。前田は在籍時が低迷期だったこともあり、NPBで優勝の経験はない。逆に2015年にメジャーから復帰した黒田、そしてベテランになって広島に戻った新井貴浩は、常勝軍団へと変貌するチームの中で大きな役割を果たし、リーグ制覇も経験した。その黒田、新井と渡米前に一緒にプレーしていることが前田の“決断”に影響を及ぼすかもしれない。

「マエケンは3連覇の前に渡米したが、チームが変わっていくところを見ている。2人(黒田と新井)の姿からお金ではない野球選手の本当の価値を学んだ。今季から新井は監督に就任し、チームも再建期にも入っている。必要とされれば戻ってくる可能性はある」(広島担当記者)

 広島関係者は復帰を心待ちにしているようだが、今季のパフォーマンスがなにより重要だ。どのような道を選ぶにしても、まずは手術前のような高いパフォーマンスを見せることが最初の一歩となる。オフの去就が日米で注目が集まるようなピッチングを期待したい。