WBCの準決勝が米国現地時間の19日に行われ、米国がキューバに14−2で快勝。2大会連続の決勝進出を決めた。

 力の差は歴然としていた。キューバは初回に無死満塁の好機を作り、昨年までソフトバンクでプレーしていた4番のアルフレッド・デスパイネが押し出し四球で先制したが、さらに無死満塁で得点を重ねられなかったのが、その後の展開に大きく響いた。

 最少失点で切り抜けた米国は、初回にポール・ゴールドシュミットの左越え2ランで逆転すると、2回に前日の準々決勝・ベネズエラ戦で逆転満塁弾を放ったトレイ・ターナーが2試合連続のソロ。その後も得点を重ねて、ターナーが6回に左中間へこの日2本目となる3ランを放つなど、14安打14得点とキューバ投手陣を打ち砕いた。

 1次ラウンドを4連勝、準々決勝・イタリア戦も9−3で快勝と危なげない戦いぶりで準決勝まで勝ち上がった侍ジャパンとは対照的に、前大会覇者の米国は1次ラウンドから苦戦した。初戦の英国戦は6−2で逆転勝利を収めたが、2戦目のメキシコ戦ではメネセスに2発を被弾するなど投手陣が打ち込まれ、5−11で敗れた。3戦目のカナダ戦は初回に9得点の猛攻で12−1と7回コールド勝ちを飾ったが、4戦目のコロンビア戦も苦戦。エンゼルスで大谷翔平のチームメイトのマイク・トラウトが2本の適時打を放ち全得点となる3打点の活躍で3−2と辛くも逃げ切った。メキシコに次ぐ2位で、1次ラウンド突破を決めた。

 米国の通信員は現地の反応について、こう話す。

「正直、1次ラウンド終了時点では盛り上がっているとは言えなかった。米国は投手陣が強力ではないので、優勝は厳しいという見方が少なくなかったが、準々決勝・ベネズエラ戦で潮目が変わった。試合終盤までリードを許す苦しい展開だったが、2点を追いかける8回にターナーの逆転満塁アーチで鮮やかな逆転勝利を飾ったことで、メディアやファンの注目度が一気に上がった」

 日本はWBCで熱狂的な盛り上がりに包まれているが、侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は「準決勝、決勝の相手は今までの相手より2ランク実力が上がる。日本の強みは投手力です。先発だけでなく、救援陣の質が高いのでメキシコ、米国の強力打線を抑えられるかがカギを握る。あとはアウェーの雰囲気にのみ込まれないことですね。マイアミはメキシコからたくさんのファンが来る。歓声が凄くて味方同士の声が聞こえないほどです。メキシコ戦に勝たなければ、米国と戦えない。準決勝に全ての神経を集中して一戦必勝です」と言葉に力を込める。

 日本はWBCで米国と過去3度対戦して1勝2敗。日本が初代王者となった2006年の第1回大会では、2次ラウンドで3−4と米国に敗れた。この試合では同点の8回1死満塁で三塁走者・西岡剛がタッチアップで勝ち越したが、離塁が早かったとしてボブ・デービッドソン球審が得点を取り消した「疑惑の判定」が大きな反響を呼んだ。09年の第2回大会では準決勝で対戦し、9−4と快勝。決勝・韓国戦も延長戦の末に5−3で撃破し、日本が大会連覇を飾った。13年の第3回大会では対戦がなく、17年の第4回大会では準決勝で激突。日本が米国の救援陣を攻略できず、1−2で敗れた。

 もし、決勝戦で日米対決が実現すれば、WBCで初となる。

「米国では1次ラウンドで敗れたメキシコとの再戦でリベンジを望むより、決勝戦で登板が予想されるダルビッシュ有、大谷翔平を擁する日本に勝って世界一を期待する野球ファンの声がSNS上で多い。特に大谷は投打で世界のトッププレーヤーとして注目度が高い。決勝戦で見たいファンが多いです」(前出の通信員)

 日本は米国現地時間の20日に、準決勝でメキシコと対戦する。難敵を下し、米国への挑戦権をつかみ取れるか(今川秀悟)