なぜ外国人観光客に人気?都庁45階の展望室、月1万杯の特製ラーメン店、「電車男」の撮影スポット…東京の隠れ‟名所”に行ってみた
AERA DIGITAL6/1(日)12:00

日本人は素通りでも、外国人観光客が多く訪れている「穴場スポット」が、東京都内には存在する。日本人がまだ知らない、外国人が行列し、絶賛する東京へ出かけてみた。
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「きょうは日本のラストデイ。明日は成田空港からドイツへ帰国します。だから、どうしてもここに来たかった」
ドイツから来た身長190センチほどの男性は雨が降りしきる中、東京都庁にやって来た。目的は、東京を一望できる高さ地上202メートルの都庁45階の展望室だ。
「私はシュトゥットガルトから来ました。33歳です。日本に3週間滞在していました。南展望室からの眺めはグッド。雨は、雨なりに美しい光景だったね」
都内には複数の高層ビルがあり、誰もが思いつくのは、東京タワーやスカイツリーだろう。だが、外国人観光客には都庁の展望室もなかなかの人気ぶりだ。 都庁財務局庁舎管理課の担当者によれば、南と北の両展望室を合わせ、2024年度(昨年4月〜今年3月)は1年間で150〜160万人が訪れた。ゴールデンウィークに入った5月1日には1日で約7200人の客が訪れた。うち、8〜9割が外国人客だ。
展望室にある売店の担当者によると、 3月後半から4月中旬まではピーク。桜を見に来日する外国人が多く1時間〜90分待ちの行列になっていたという。

都庁の展望室は第一本庁舎の45階にあり、「南展望室」と「北展望室」の南北に分かれる。それぞれ1階に専用エレベーター乗り場がある。 担当者はこう話す。
「ここのビルの高さは地上243メートル。北も南も、東京を340度、一望できるのは変わらないんですね」(都庁財務局庁舎管理課の担当者)

記者が訪れた日はあいにくの雨だったため、窓からの景色は霧がかかっていて、東京スカイツリーや富士山を見ることはきなかった。 ただ、人気の理由は眺望だけではないようだ。 東京タワーはトップデッキで見学しようとすれば大人3500円(窓口)、東京スカイツリーは「天望デッキ+天望回廊」のセット料金で3500円(平日・当日WEB券)。ところが都庁の展望室は無料。
「無料なのも、人気の要因ですね。外国人の方からは『次に移動するまでのつなぎにちょうどいい』という声を聞きます」(同)
展望室に詳しい日本人女性は「ホテル『パークハイアット東京』の手前にあるセントラルパーク(中央公園)では時々、バザーをやっているので、外国人がここから見つけて、『バザーへ行きたい』とおっしゃることもありますね」と教えてくれた。

ちなみに外国人には 「パークハイアット東京」もよく知られている。ソフィア・コッポラ監督の映画「ロスト イン トランスレーション」の主な舞台となった。残念ながらホテルは全面改修工事で営業を一時休止中だ。
■「電車男」の待ち合わせ場所が新宿の撮影スポット
次に、都庁から歩いて向かったのは、西新宿の新宿警察署の裏手にある「LOVEのオブジェ」。アメリカの作家ロパート・インディアナが手がけた。隣接する交差点には、円形の梁で信号機や柱がつながれ、円盤のような輪になっているのが特徴だ。

「晴れた日には外国人が写真を撮ってます」と外国人の観光客に詳しい日本人女性。
実はこの場所は、日本の映画やドラマでたびたび登場する。「電車男」(フジテレビ系)では、主人公がLOVEのオブジェの前で「エルメス」と待ち合わせをし、円形交差点は映画「君の名は。」のオープニングシーンの背景。 NetflixやAmazonプライムなどで日本のドラマ、映画、アニメは見ることができるので、外国人にもよく知られるようになったのだろう。

■住宅街の細い裏道が人気 お寺やお墓だらけのエリアに外国人
新宿から場所を変えて、東京都文京区へ向かった。文京区の穴場スポットは根津神社。 観光客ではないが、ネパール人留学生のデブコタ・アンジャンさん(24)は友人のネパール人女性と2人でやって来た。日本に2年滞在しているそうだ。
「TikTokで、この場所を知りました。きょうは休みの日だからどうしても来たかった。ツツジの花は私の国の花にもある。東京は人がたくさん。一杯綺麗な場所があるけれど、時間とルールが厳しい。それを守らないといけないのが大変ですね」
一人でやって来たインドネシア人女性(25)は「グーグルで検索して、この神社を見つけました。1週間前に日本に来ました。明日、インドネシアに帰国します」。
つつじ苑の近くある、邪気を落とすという言い伝えがある「千本鳥居」が大人気で、写真映えする赤い鳥居をくぐる訪日外国人が後を絶たない。

鳥居を出た所で、ロシア人の夫婦に出会った。夫のアントンさん(30)と妻のケイトさん(31)夫妻。
「2日前にモスクワから東京に来ました。11日間、滞在する予定です。この神社は鳥がさえずり、木の緑がとても豊かで、美しい。日々の嫌なことや心配事を忘れさせてくれる」
筆者が「ハラショーよい旅を」と言うと、夫妻は「ありがとう」と日本語で返してくれた。 この日、根津神社で筆者が出合った人の9割近くが外国人だった。

根津神社から谷中銀座に向かう「ヘビ道」と呼ばれる裏通りがある。住宅街のど真ん中を通る細い道がなぜか外国人に人気。近くの喫茶店の店長はこう教えてくれた。
「時々、外国人が迷って、道を聞きに来ますよ。この辺は江戸時代からの寺町で、お寺とかお墓がすごく多い。外国人ばっかりですよ」

地元の道路沿いの案内版の「地図」にも「ヘビ道」は紹介されていて、「Snake Winding Road」と日本語と英語で表記されていた。海外のガイドブックやネットにも「ヘビ道」が紹介されているようだ。 「ヘビ道」を歩いている外国人の男女2人に話しかけると、エストニア人だった。
「日本に住んで3年目です。東京でまだ知らない街を訪ねてきました」
と、エストニア人女性は話した。
「さっきまで、根津神社にいました。グーグルマップで調べて、ヘビ道を通って、これから谷中銀座でショッピングの予定です」(エストニア人男性)
■ヴィーガンラーメンは月間1万杯 行列の多くは外国人
旅のお楽しみといえばグルメ。午後9時過ぎ、東京駅前の丸の内駅前広場で眺めていた男女に取材すると、インドから来た30代の男性サイさんと女性イシュタさんの2人だった。
「東京駅構内で晩ご飯を食べて、東京駅の周りを散歩していて、ここに来ました」
と話すサイさんは、インド出身で2019年に来日。日本の大学に通っていたが、現在は会社員だという。隣にいるイシュタさんはインドから2週間の旅行で、来日したばかり。2人が東京駅構内で食事をしたのは「T'sたんたん」。ラーメン店だという。
「ヴィーガンのラーメン屋なんです。肉が入っていない。私はベジタリアンなので」(サイさん)
翌日、東京駅構内の「T'sたんたん」グランスタ東京店へ行ってみると、15人ほどの行列ができていた。出直し、翌々日の夕方に行ってみると待ち時間ナシで入れた。
店内は外国人客ばかり。「金胡麻たんたん麺」は肉のような食べ応えや食感で、ソイミートを使用したオリジナルの肉みそとピーナッツクリームを使用しているという。

同店の経営はJR東日本の100%子会社「JR東日本クロスステーション」の「フーズカンパニー」。
「『T'sたんたん』は全てのメニューがヴィーガンですが、ヴィーガンの方もそうでない方にも食べてほしい」(フーズカンパニー担当者)
月に何杯くらい売れるのだろうか。
「東京店ではラーメンだけで、毎月1万杯以上販売しています。その中でも、『金胡麻たんたん麺』は月間約4000杯が売れている一番人気のラーメンです」(同)
担当者によれば、全体の8割以上が外国人で、「海外の口コミサイトやGoogleレビューを見てご来店されるお客さまが一番多いです」と言う。
■和菓子で人気のどら焼き 「ドラえもんで知った 」
最後に紹介するのは、東京の下町、江東区門前仲町の裏通りの路面店「どらやき焼 どら山」。オーナーの鈴木康之氏(42)はこう話す。

「近くに富岡八幡宮があるので、先日、境内の中にうちの屋台を出したんですよ。そうしたら、この路面店にも外国人客がやって来るようになりました」
外国人は案外、和菓子を食べ残すという。しかし、どら焼きは外国人の舌にも合うようで完食する人が多いとか。
「フランス人のお客さんはアニメのドラえもんで『どら焼き』を知ったと言っていました」
訪日外国人のたちのリサーチ力たるや……。日本人がまだ気づかない東京の魅力を教えてもらった気がした。(AERA編集部 上田耕司)










