韓国大法院(最高裁)が三菱重工業に元女子勤労挺身隊員らへの賠償を命じた判決をめぐり、韓国の大田地裁が27日、差し押さえられていた同社の商標権と特許権の売却命令を出した。元徴用工訴訟で売却命令が出るのは、今回が初めてだ。

 報道によると、大田地裁は商標権2件と特許権2件について売却命令を出した。原告の元女子勤労挺身隊員2人の債権額は、1人あたり約2億973万ウォン(約1970万円)で、賠償が遅れた利子なども含まれているという。三菱重工は即時抗告する方針で、一審で退けられても、三審まで争うことが可能でその間は売却できない。日本政府は、企業側に実害が生じれば報復措置も辞さない姿勢で日韓関係の悪化が懸念される。

「韓国地裁がこのタイミングで売却命令を出したのは日本の自民党総裁選と無関係ではないでしょう。岸田文雄さん、河野太郎さん、高市早苗さん、野田聖子さんと立候補者がこの問題に対してどのような発言をするのか、韓国国内で注視されている。また日本でこのニュースが取り上げられて高市さんに支持が集まっているのは、韓国に対して強硬な姿勢をとってほしい支持者が一定数いることの表れです」(政治部記者)

 問題解決に向け、日韓両政府の主張は平行線をたどっている。

 韓国大法院(最高裁)が三菱重工業に元女子勤労挺身隊員らへの賠償を命じた判決を言い渡し、三菱重工業の再抗告が棄却された際は、加藤勝信官房長官が今月13日の記者会見で「韓国大法院判決、および関連する司法手続きは明確な国際法違反。仮に現金化に至ることになれば、日韓関係にとって深刻な状況を招くので避けなければならない」と警鐘を鳴らした。

 すると、韓国外交省は翌14日、「国際法違反という日本の主張は全く事実に合わず、一方的な主張だ。韓国側に解決しろというのは問題解決に何の助けにもならない」と反論。「1965年の日韓請求権協定について、適用範囲に対する解釈争いがあるだけに、国際法違反であることは一方的かつ恣意的な主張」と強調した。

 朝鮮半島を巡る懸案材料は韓国の元徴用工訴訟だけではない。北朝鮮も9月に入り、ミサイル発射の動きが活発化になっている。11、12日には新型長距離巡航ミサイルの発射実験を実施。15日にも日本海へ短距離弾道ミサイル2発を発射し、石川県沖の日本のEEZ内に落下したとされる。さらに、28日早朝に短距離ミサイルと推定される飛翔体1発を発射。日本政府は警戒を強めている。

「韓国の文在寅大統領が国連総会の演説で、朝鮮戦争の終結宣言を提案したのに対し、金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長は南北の関係改善に前向きな談話を発表しています。ミサイル発射の一連の動きは韓国、米国の様子を探るとともに、総裁選が行われている日本政府がどんな反応を示すのかを探ることを意図していると思います。韓国、北朝鮮、中国に対してどのような外交姿勢で臨むか。総裁選は一般国民に選挙権があるわけではなく、党所属の国会議員と全国の自民党員などによる投票で決まりますが、世論の風向きも投票の結果に影響するでしょう」(前出の政治部記者)

 29日に投開票が行われる総裁選は、4人の候補者が票固めへラストスパートをかけている。接戦が予想される中、勝利の女神がほほ笑むのは誰だろうか。(松木歩)