日本人にとって身近な海外旅行先だった韓国。ビザの申請や入国前後のPCR検査の義務化といったハードルはあるものの、コロナで途絶えていた行き来がついに再開された。2022年6月15日から4泊5日で実現した、韓国観光公社主催のマスコミ関係者向け視察旅行では、人気ドラマのロケ地も訪ねた。

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 日本リメイク版「六本木クラス」の放送を目前に控え、再び注目を集めている韓国ドラマ「梨泰院クラス」。Netflixで配信が始まった20年、ステイホーム中にドハマリしたという人も多いだろう。「梨泰院クラス」の舞台となった梨泰院一帯のロケ地の「いま」もお伝えしたい。

 まず訪れたのは、パク・ソジュン演じる主人公パク・セロイがオープンした居酒屋「タンバム」のロケ地となった店。タンバムは「甘い夜」という意味だが、実際の店名は「ソウルの夜」を意味する「ソウルバム」だ。内装はドラマと異なるが、店構えはほぼ同じ。上部には、ドラマで輝いていたネオンの看板の跡もうっすらと見えた。

 丸い看板にはウサギと月とともに、タンバムのハングルを1文字変えた文字が。カタカナで発音を表すとどちらもタンバムだが、変えたほうの意味は燃えた夜、または焦げた栗となる。これは「梨泰院クラス」と同じテレビ局のバラエティー番組「ジャンルだけコメディー」の企画で、パロディードラマを撮影したときの名残だろう。パロディーが作られるほど、「梨泰院クラス」は放送当時、韓国でもヒットを飛ばした。

 タンバムの前で写真を撮っていると、とある日本人女性に声を掛けられた。アメリカ在住30年という彼女は、夫の仕事の関係で訪韓し、梨泰院を訪れたという。

「娘の影響で、Netflixで韓国ドラマを初めて見たんですけど、すごく面白くて。それが『愛の不時着』でした。そこから『梨泰院クラス』にハマって、BTSのファンになって…。いい年してなんでそんなに夢中なのって娘に笑われるんです」

 サウジアラビアから来たというヒジャブを被った女性2人組も、タンバムの前で記念撮影中。コロナ禍において、韓国ドラマが世界的に人気を拡大しているんだと実感する。

 タンバム関連のスポットは、もう2カ所ある。まずは「梨泰院クラス」の原作および脚本を手掛けたチョ・グァンジン氏が経営する居酒屋「クルバム」。ロケ地ではないが、原作漫画の大きな看板が掲げられていて、作品の世界に浸ることができる。

 そしてタンバム2号店として登場したカフェ&バー「Oriole(オリオール)」。梨泰院駅周辺から少し離れた解放村(ヘバンチョン)というエリアにあり、ルーフトップからソウルの街並みを見下ろせる。タンバム1号店からは坂道が続くため、タクシーで行くのがおすすめ。約10分、5000ウォン(取材時点で520円)ほどで到着した。

 ほかにも、梨泰院には、ドラマに頻繁に登場する歩道橋「緑莎坪陸橋(ノクサピョンユッキョ)」や、キム・ドンヒ演じるチャン・グンスが暮らす宿舎となった「Gゲストハウス」など、見覚えがある場所があちこちにある。ドラマファンならマストで訪れたいエリアだ。

 今後、入国条件が緩和されて観光客が増えれば、ソウル市内だけでなく周辺都市のロケ地にも海外のファンが集うだろう。Netflixで配信中のドラマ「その年、私たちは」は、ソウル近郊の水原(スウォン)市で一部シーンが撮影された。「梨泰院クラス」のチョ・イソ役でブレイクしたキム・ダミと、映画「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシクが主演を務めるラブロマンスだ。

 ソウル駅から地下鉄に乗り1時間ほどで到着する水原は、ユネスコ世界文化遺産に登録されている水原華城(スウォンファソン)で有名。「イ・サン」や「赤い袖先」など時代劇の主人公としてもおなじみの朝鮮王朝第22代王・正祖(チョンジョ)が築いた城郭で、全長5.7キロの城壁にぐるりと取り囲まれている。城壁に沿って歩いていると、まるで時代劇の中に入り込んだような気分になった。

「その年、私たちは」でチェ・ウシク演じるチェ・ウンの家は、その城壁の西側にある。もとはカフェ。現在は閉店しているが、白い壁には主人公たちを彷彿(ほうふつ)とさせるイラストが描かれていた。「コロナが収束して観光客が来るようになれば、ロケ地として再オープンするんじゃないか」というのは、ガイドの女性の話。今は中には入れないが、20代とおぼしき現地の女性たちが外観をバックに楽しそうに写真を撮っていた。

 ウンの家のちょうど反対側、城壁の東側にはキム・ダミ演じるクク・ヨンスの家がある。カラフルな壁画に彩られた池洞(チドン)壁画村と呼ばれる住宅街で、ヨンスの家も実際に人が住んでいる個人所有の建物だ。壁画も緑色の門も劇中のまま。今にもウンとヨンスが出てきそうな雰囲気に感動したが、ここでは住民に迷惑をかけないよう静かに撮影してその場を去った。

 ほかにも、水原では公園でのデートシーンなどさまざまな場面が撮影されたが、実はこの作品のロケ地は全羅北道・全州(チョンジュ)など全国各地に散らばっている。ドラマをきっかけに地方都市を訪れ、その土地の魅力を知るというのもいいものだ。これまで水原にはなかなか来る機会がなかったが、おしゃれなカフェが並ぶ行理団(ヘンニダン)キルをはじめ、見どころがたくさんあることを知った。いつか再訪し、ゆっくりと街歩きを楽しみたい。

 そして今、韓国ドラマとともに世界を席巻しているのがK−POP。

 コロナ禍以降、コンサートはオンラインが主流となっていたが、リアルな公演も徐々に再開している。1995年から続く毎年恒例のK−POPイベント「ドリームコンサート」(通称ドリコン)も、3年ぶりに有観客で開催されることになった。6月18日の土曜日、ソウルの東南部に位置する蚕室(チャムシル)総合運動場・オリンピック主競技場で、総勢27組のK−POPアーティストが出演したドリコンに参戦した。

 会場に着くと、すでにたくさんの人たちが集まっていた。この日の動員は4万5000人。公演開始前から熱気が伝わってくる。チケット代わりのリストバンドを腕に巻き、スタジアムの中に入った。スタンド席にはにぎやかな横断幕がかかっていたが、これは各アーティストを応援するためにファンが制作したもので、通常は、事務所がファンから応募を受け付け、その中で選ばれた横断幕が採用される。「神(シン)人アイドルCLASS:y」などウイットに富んだ文言がずらりと並ぶドリコンの風物詩で、「これこれ!」とうれしくなった。

 午後6時、まだ日が落ちないうちに、コンサートが始まった。序盤は新人アーティストから1曲ずつパフォーマンスを披露したが、歓声から会場全体が高揚しているのを感じられる。その声がひときわ大きくなったのは、今回唯一のソロアーティスト、イ・ムジンがヒット曲「信号」を歌ったときからだった。ムジンがサビ前に「知らない人はいないよね〜?」と呼びかけると、会場全体でサビの大合唱が起きたのだ。韓国では4月18日にコロナによる規制が解除され、それまで禁止されていたテチャンと呼ばれる観客の歌唱行為も解禁になった。待ちに待ったテチャン。アーティストと観客がともに歌い、一体になって盛り上がる、韓国ならではのコンサートが復活した瞬間だった。

 その後はほかのアーティストたちもMCで「一緒に歌って」と呼びかけ、大合唱の連続!直近では18年のドリコンも観覧したが、会場の熱量や一体感はそのとき以上だと感じた。3年ぶりの有観客公演に喜びを隠せないのはアーティストも同様で、コロナ禍にデビューしたグループが「こんなに人がいるのは初めてです!」とはち切れんばかりの笑顔で語っていたのが印象的だった。

 帰り際、この日のトリを務めたNCT DREAMのファンだという女子高校生2人組が、興奮冷めやらぬ様子でこう語ってくれた。
「オンラインライブと違って、声を出してみんなと一体になれるのが楽しかったです。やっぱりこれからは、オンラインじゃなくてリアルのコンサートに参加したい!」

 視察団の中には初めてK−POPアーティストのステージを生で見たという人もいた。口をそろえて言っていたのが「とてもエネルギッシュ」「全力でパフォーマンスする姿に元気をもらった」ということだった。

 コロナ禍において、K−POP界のオンラインライブやオンライン特典会への対応の素早さは目を見張るものがあった。世界中どこにいても彼ら、彼女らの存在を感じられることで、これまで現地に行けなかった人たちも取り込み、ファン層を拡大したのは確かだ。しかし、K−POPの強みは、観衆を熱狂させる生のパフォーマンスの力だと今回のドリコンで確信。すでに多くのK−POPアーティストの来日公演が行われ、ワールドツアーや世界各地での大規模イベントも続々と決定している。K−POPの快進撃は、ポストコロナも続いていく。

(執筆・写真 土田理奈/omo!)