何度も味わいたくなるドラマ『silent』(フジテレビ系、毎週木曜よる10時)。放送を見ているとあっという間に1時間が経ってしまうが、何度も見たくなる名演があり、一つ一つのシーンについて考え始めるといくつも考えが浮かび、改めてそのシーンの“濃さ”みたいなものに気付かされる。余韻のなかで過去回とのつながりを感じたり、シーンの意味をあれこれ想像してみるのも面白い。




先週はサッカーW杯で放送がお休み。第7話ラストシーンでは、紬(川口春奈)の家で、想(目黒蓮)が紬をハグするというドキドキする余韻を残していた。前回のコラムでは、想のハグシーンに詰めこまれた意味や、第7話で温かく回収されていく『silent』の世界をじっくり味わった。



SNSではさまざまな考察で盛りあがっているが、大きくみてみると、これまでドラマ『silent』ではシリアスでつらいシーンもあるけれど、紬と湊斗(鈴鹿央士)の別れも、想と奈々(夏帆)の関係も、葛藤や気持ちの変化を繊細に描きながら最後は前を向くようなポジティブな描き方をしていると感じる。


そんななかで、第7話で気になるまま余韻を残しているシーンを2つあげてみたい。


一つ目は、紬と想がファミレスにいるシーン。急にガシャーンと皿の割れる音がして紬は驚くが、それを背にして座っている想は気づかない。想には大きな音は届いていない。紬の様子を見て、振り返って店員が割れた食器を片付けている様子を見ると、想の表情が曇り、紬に視線を向け、また視線を落とした。


ファミレスのシーンは想の暗い表情で終了した。
想が紬に「どうしたの?」と聞いて、紬が「何でもない」と答えたことに対する想の反応にも見えるし、これから紬が自分と過ごす未来への不安を抱いているようにも見えた。
こういった想像させる余韻を残す表情は、目黒蓮(Snow Man)の演技の魅力の一つだろう。放送中の朝ドラ『舞い上がれ!』では、『silent』とはまったく性格の違うキャラクターを演じているが、それでも心の葛藤を静かに表現するシーンで表情に引き込まれ、想像させるところは共通しているのではないだろうか。
目黒が表現した陰を落とす余韻も、『silent』なら向き合ってやさしく回収してくれるのでは…と期待してしまう。


もう一つ、気になるまま余韻を残しているのは、想(目黒蓮)の母・律子(篠原涼子)に妹の萌(桜田ひより)が放った「自己満足」という言葉。


律子が「聞こえる人と関わると傷つくから」「変に刺激になる人と関わらせたくないの」と話すと、萌は「それは お母さんの自己満足だよ」と言った。つらそうな表情をしながらも意志を持って言った萌。それを聞き、無言になる律子。高校のときの友達とまた交わるようになって楽しそうな兄を見て嬉しい妹と、「高校生のときみたいには いかない」と案じ、静かに落ち着いた生活をしてもらいたい母。どちらも想を大切に思っていることに変わりはない。


“自己満足”というのはちょっとマイナスな響きに聞こえるかもしれないが、人を思うがゆえの“自己満足”は明るい未来を生むのだと、第7話は示してくれたようにも感じた。


紬が奈々をカフェに呼び出して、「今の佐倉君がいるのは 奈々さんのおかげなんだなって思って。私に感謝されても 全然 うれしくないと思うんですけど。でも 伝えたくて。」と話す場面がある。お礼を言って、ずっと心配していたことを伝える。奈々に何か質問するでもなく、何かをお願いするわけでもなく、奈々を喜ばせるわけでもなく、ただ自分の気持ちを伝えること。それは、紬の自己満足とも言えるだろう。でも、そうやって相手への思いがまっすぐに伝わることによって、奈々は「すごく愛おしい」と感じ、想が紬に対して抱く気持ちを理解した。


奈々と想が図書館で話すシーンでも「自己満足」という言葉が出てくる。想が「奈々に手話教えてもらって ほんとによかったと思ってる」と話すと、奈々は「想くんのために教えたんじゃない 私と話してほしかっただけ 私の自己満足だよ」と答える。「自己満足」という言葉を使って、想へのまっすぐな思いを伝えている。奈々のその“自己満足”がなかったら、想は“音のない世界は悲しい世界”だと思ったままだったかもしれない。


第5話で「誰のせいでもないことが 一番やっかいなの」と言った律子。いろんな経験をして出てきた律子の言葉は重い。それでも、萌に「自己満足」だと言われた律子の思いが、想とまっすぐに向き合ったとき、優しく着地できる答えがあるといいな…と願わずにはいられない。


15分拡大となる第8話では、それぞれの家族の様子も描かれるようだ。

距離の縮まった紬と想もまた、“伝えたい、伝わらない”思いがあるようで…。「久しぶり」と再会した奈々(夏帆)と春尾先生(風間俊介)の続きや過去も気になる。第8話もゆっくりと『silent』の世界を味わいたい。


文:長谷川裕桃




第8話あらすじ

佐倉想(目黒蓮)は青羽紬(川口春奈)に、声が出せないわけではないが、自分で感じとれないことへの怖さがあることを話し、紬はそれを受け入れる。しかし、2人の距離が縮まるほどに、想は自分と一緒にいるのが大変なのではないかと紬を気遣うようになり、紬は否定するものの、なかなか思いは伝わらない。


一方、桃野奈々(夏帆)は春尾正輝(風間俊介)との再会を果たす。「紬と想を見ていたら春尾くんのことを思い出して」と言う奈々。そんな中、紬は実家の群馬に帰り、母・和泉(森口瑤子)に想のことを話そうとするのだが…。


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