脱炭素で火力を革新、再エネも強化

── 政府は昨年、2050年にCO2(二酸化炭素)排出を実質ゼロにする目標を発表しました。これに向けた中部電力の取り組みは。
林 日本のCO2発生量のうち40%は電力部門が排出しており、電力会社は大きな役割を求められています。そのためにも発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーの拡大が必要で、当社は30年までに再生エネルギーの発電設備を現在の約270万キロワットから、さらに200万キロワット増やす計画です。また、安全と地元の信頼を大前提に原子力発電所(静岡県の浜岡原発)を活用します。原発なしでは50年実質ゼロの目標達成は無理だろうと考えています。(2021年の経営者)

── 浜岡原発は国の安全審査が続いていますが、いつ審査を通過するか見通しが立っていません。
林 CO2削減のほかに、エネルギー安定供給確保という問題があります。日本はまだ中東に依存しています。当社関連の火力発電の燃料の多くはカタールからの液化天然ガス(LNG)が占めており、地政学的なリスクを背負っています。原発はエネルギー安全保障を確保する有効な手段です。

── 地元静岡県の川勝平太知事や周辺自治体の首長の多くは再稼働に否定的です。
林 安全対策の中身やエネルギーの必要性、避難対策も含めた当社の取り組みを丁寧に説明するしかないと思っています。

── 再エネを200万キロワット増やす具体的な方策とは。
林 洋上風力を大きくします。当社が参加する企業連合が秋田港(秋田市)と能代港(秋田県能代市)で13・9万キロワットを着工済みで、22年運転開始の見込みです。これとは別に、政府は、促進地域5地区(秋田県能代市・三種町沖、長崎県五島市沖など)で事業者を公募しており、当社もパートナーと組んで応募します。100万キロワット程度は洋上風力でやらないと目標には届かないと思います。

アンモニアと水素

 中部電力は14年に東京電力と火力事業の包括提携を発表し、15年4月に両社折半出資の「JERA(ジェラ、東京都中央区)」が発足。LNGの輸送や調達などの業務を順次移管し、19年4月に既存の火力発電所を含めて全面統合した。
── 国内最大の火力発電会社となったJERAは国内CO2排出の約1割を占めています。
林 原発の再稼働や再エネの増強だけではCO2を実質ゼロにする目標に到達しません。電力供給は、使用量と発電量を常に一致させる必要があります。したがって、発電が天候状況に左右される再エネや、発電量を一定水準で稼働させる原発だけでは安定供給はできません。変動する需要に供給量を対応させるには火力発電が必要です。そのためにも火力発電からCO2排出を減らしてゼロに近づけていかなければなりません。

── 政府は、火力発電のCO2削減でアンモニアや水素を活用する方針です。
林 JERAと協業するIHIが、天然ガスと石炭にそれぞれアンモニアを混ぜて燃やす「混焼」の実証実験を行っています。30年に20%の混焼を目指していて、実現可能なレベルに来ていると思っていますが、これを100%に引き上げるには、コストと燃料調達の両面で高いハードルがあります。ましてや水素となると実証実験もアンモニアの後になります。