地震から建築物を守る構造材 河瀬博英 岡部社長

── 建物の構造材など、一般にはほとんど目に触れない製品を作っていますね。
河瀬 建築物の構造材や工事で用いる型枠、仮設など、建物の構造に関わる資材を製造、販売しています。このほか斜面の補強構造材などの土木関連製品や漁礁などの海洋事業も手掛けています。海外の子会社では、自動車のバッテリー端子(ターミナル)も作っています。(2021年の経営者)

── 主力製品の「ベースパック工法」とはどういうものですか。
河瀬 発売以来、40年近くたつ製品です。建物を建設する際は、鉄骨(柱)の下に付いているベースプレート(板)と基礎部分を、アンカーボルト(ネジ)で接合します。だいたい穴は四つ以上ありますが、ネジとのすき間は2〜3ミリ程度しかありません。そのため全ての穴とネジを合わせるのは、かなり難しい。ですから、昔はネジを無理やり曲げて入れることもありました。しかし、これでは想定した強度が確保できません。

 そこで、穴を大きめにして、ネジを合わせやすくし、穴とネジのすき間にはグラウト(充填(じゅうてん)材)を流し込んで、基礎と柱を一体化させます。分かりやすく言えば、手首をギプスで固定するような感じです。この方法は、「保有耐力接合」と呼ばれます。施工も効率的で、かつ十分な強度も得られ、工期も短縮できます。

── どれくらいの強度があるのですか。
河瀬 阪神淡路大震災や東日本大震災でも、この工法を使った柱脚は被害がありませんでした。地震の時は柱に「引き抜き」の力がかかります。そうなると接合が弱い柱は、アンカーボルトが抜けて、倒壊する危険性があります。実績が評価され、累計でおよそ30万棟に導入されています。

── 他に注目されている製品は。
河瀬 鉄骨の柱や梁(はり)には、空調設備などを通すために穴が開いているのですが、その穴を補強する「OSリング」という製品があります。従来は鉄板を両面に溶接して、穴の周囲を補強していましたが、「OSリング」は、穴にリングを溶接して補強します。しかも当社のリングは片面だけの溶接で済みます。構造計算も当社が行い、適したリングを選びます。

── 斜面やがけが崩れるのを防ぐ製品もありますね。
河瀬 土木事業で斜面を補強する「フリーフレーム工法」に用いる資材などです。高速道路などの斜面でよく見かけると思います。これは、鉄筋が入った金網を格子状などに組んで、モルタルを吹き付け、場合によっては杭(アンカー)も打って、斜面に設置していきます。従来は斜面の表層にモルタルを吹き付けるだけでした。「フリーフレーム工法」は斜面をより安定化できます。これまでにメートル換算で地球2周分ぐらいの導入実績があります。

3月から需要回復
── 新型コロナウイルスの感染拡大は、業績にどう影響しましたか。
河瀬 昨年は、既に着工された案件は順調に消化されましたが、設備投資の抑制などにより、新規着工案件は減りました。着工延べ床面積が対前年比で約11%の減少です。

 構造材製品の市場は、(1)鉄骨造、(2)鉄筋コンクリート造、(3)鉄骨鉄筋コンクリート造──に大別されますが、うち鉄骨造向けは15%減りました。

 一方、土木分野は、国土強靭(きょうじん)化計画など公共投資の追い風もあり、出荷は好調でした。国内事業に限れば減収減益ですが、思ったほどの落ち込みではありません。首都圏を中心に再開発や大型案件が予定されており、予定通りに着工されれば、年後半は回復軌道に乗ると思います。

 米国およびイタリアのバッテリー端子事業は、自動車工場の操業停止が影響して苦戦が続き、米国の建材販売事業は堅調でした。