しょうゆの海外展開を加速 中野祥三郎 キッコーマン社長
 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 新型コロナウイルスの経営への影響は?
中野 2021年9月中間決算は、国内の売り上げは前年同期並みでした。海外については2割ほど伸び、コロナ禍前の数字を上回りました。前年は新型コロナの感染拡大の影響で、国内外ともに業務用は減少しましたが、今年は国内外ともに戻ってきています。特に欧米では外食を楽しむ人が増えたので、業務用の回復が早いですね。家庭用は国内外ともに伸びています。(2021年の経営者)

── 米国など海外事業に積極的ですね。
中野 すでに海外売上比率は6割以上で、利益は7割を超えています。主力市場の米国では、50年近く前の1973年から現地生産を始めました。しょうゆはワインなどに比べ単価が低く、原料の大豆も米国産なので、日本から出していたら利益が出ません。そのため当時の経営陣が思い切って米ウィスコンシン州に工場を造り、早くから海外展開を始めました。

── 海外でのしょうゆ市場を開拓しました。なぜ人気なのでしょう。
中野 一気に売れたわけではありません。肉に合う調味料としてレシピを開発したり、スーパーの店頭で試食販売したりしながら、徐々に現地に浸透していきました。米国では4%以上、40年以上前に進出した欧州でも2ケタの伸びを続けています。コロナ下では家庭で料理を作る機会が増え、欧米ではさらに広がりました。調味料は一度定着すると、景気に左右されにくいという強みもあります。

── 欧米以外はどうですか。
中野 シンガポールの生産拠点から、東南アジアや豪州向けに輸出していますが、規模は大きくはありません。中国をはじめアジアにはしょうゆと似た調味料があるため、欧米に比べると市場拡大へのハードルは高くなります。一方、ブラジルではキリンホールディングス(HD)が持っていた工場を買収し、11月からキッコーマンブランドのしょうゆの製造・販売を始めました。南米は大きな市場ととらえ、注力していきます。

── 国内のしょうゆ事業の見通しは。
中野 市場全体が減少傾向です。消費者がつゆやたれのような加工品を使うようになったり、家庭で料理する機会が減ったりしているためです。この状況で必要なのは高付加価値商品を提案することです。11年に発売した密封容器入りのしょうゆ「いつでも新鮮」シリーズは、空気に触れないよう容器が二重構造になっています。生しょうゆの価値が消費者に受け入れられ、単価も高くなりました。

── 減塩タイプも伸びていますね。
中野 減塩しょうゆは塩分が少ない分、傷みやすいのが課題でしたが、密封容器の登場により売り上げに占める比率が高くなりました。健康意識の高まりもあります。国内の家庭用しょうゆの売り上げのうち減塩は10%ほどでしたが、密封容器を採用してから3分の1ぐらいまで増えています。

── 大豆など原材料価格や物流費が高騰しています。どう対応しますか。
中野 しょうゆの値上げを決めました。来年2月から、取扱商品の9割超に当たる164製品を4〜10%値上げします。しょうゆの値上げは14年ぶりです。

── しょうゆ以外の調味料や食品も扱っています。
中野 働く女性が増え、簡単に料理ができる商品へのニーズが高まっています。フライパンを使って5〜10分でできる「うちのごはん」シリーズは定着してきました。今年は電子レンジで調理ができるタイプを発売しました。調味料が入った容器に切った肉などを入れて温めるだけで料理できると好評です。