ゴルフクラブのリシャフトというとドライバーのイメージが強いですが、アイアンもリシャフトすることができるのでしょうか? 今回はアイアンのリシャフト工程を人気クラブフィッターの石井建嗣(いしい・たけし)さんに聞きました。

アイアンもウッド同様にリシャフトが可能

 ゴルフクラブのリシャフトというとドライバーのイメージが強く、アイアンのリシャフトに関してはなじみのない人も多いのではないでしょうか? 今回はアイアンのリシャフト工程を人気クラブフィッターの石井建嗣さんに教えてもらいました。

アイアンのネックはヒートガンで熱すると外れます
アイアンのネックはヒートガンで熱すると外れます

 フェアウェイウッドやユーティリティーはもちろん、アイアンもリシャフトすることができます。ウッドに比べてインパクト時の衝撃が強いアイアンは、リシャフト後の強度が心配な気もしますが適切な作業で行えば何ら問題はありません。今回はアイアンのリシャフトはどのように行っているのか作業の工程を説明します。

 まずネック上部に付いているソケットをヒートガンで温めてからカッターで切ります。シャフトがスチールならそこまで気にしなくてもいいですが、カーボンの場合はあまりにも強くカッターの刃を押し当てると、塗装にキズが入ってしまうので地味に難しい作業です。

 次に専用の工具にクラブを固定してヒートガンでネック部分を温めます。この作業もスチールなら万力などで固定して一気に抜くことができますが、カーボンの場合はシャフトの先端が曲がったりねじれたりするので必ず専用の工具を使用しないといけません。つまりシャフトを抜く作業はカーボンの方が難しいです。

 続いてヘッドのネック内部に元の接着剤の残りかすなどが溜まっていますので、ドリルなどでキレイに掃除します。ここまでがヘッドを抜く作業となります。

リシャフトはプロに任せたほうが無難

 ここからは新しいシャフトを装着する作業です。まずシャフトの先端を削ります。スチールならメッキを、カーボンなら塗装を剥ぎます。メッキや塗装が残ったままだと接着剤のなじみが悪くなり、ヘッドが抜けてしまう可能性が高くなるので注意が必要です。続いて先端を削ったシャフトに新たなソケットを差し込みます。

 ここからはいよいよ接着です。アイアンに限らずリシャフト作業は専用の接着剤を使います。弊社で使用しているのは2液混合の「アクリル樹脂系接着剤」です。これを1対1の割合で混ぜ、シャフト先端とヘッドのネック内部に塗り接着します。この接着剤は5分も経たないうちに固まり始めますので呑気に作業は出来ません。ちなみに作業後1時間も経てばボールを打てるほど硬化が早い製品です。

 また、シャフトの口径に対しネックの口径が大きすぎる場合は、「グラスビーズ」と言われる粉をまぶして調整しますが、こちらは無くても問題はありません。

 ちなみにネットで調べてみると多様な接着剤があるのが分かります。大抵は問題なく使用できますが、まれに接着力が弱いものもあると耳にします。愛用クラブのヘッドが飛んでいくだけでもショックなのに、万が一誰かに当たったら大問題です。もし、自分でリシャフトを行う際はあまりにも安価な接着剤を選ぶのは控えた方が無難でしょう。

 接着剤の質だけではなく、リシャフトの作業工程を間違えるとヘッドが飛んでいくリスクが高くなります。また、外したシャフトをできるだけ高く売ろうと思えば、キレイに外す技が必要なのは言うまでもありません。自分でやるのも楽しみの一つだと思いますが、やはり、安全面を考慮すればプロに任せるほうが間違いないと思います。

【解説】石井 建嗣(いしい・たけし)

香川県丸亀市で「ゴルフショップイシイ」を営むクラブフィッター。フィッター界の第一人者である浅谷理氏に師事し、クラブ&パターフィッター、TPIインストラクター、ゴルフラボ公認エンジニアの資格を持つ。ゴルフはHDCP「9.9」の腕前だが、自身のプレーより他人のクラブを“診る”ことに喜びを感じる職人肌。出演するYouTubeチャンネル「ズバババGOLF」では軽快なトークで人気を集める。

石井建嗣