一昔前のゴルフクラブは、今よりも手の届きにくい「高級品」の一つとされていました。その要因の一つが「物品税」です。これはどのようなものなのでしょうか。

「ゴルフ=お金持ちのたしなみ」というイメージは「物品税」の影響もある

 コロナ禍で、日本のゴルフ人口は新規と再開したゴルファーを合わせて70万〜80万人も増えたと言われています。それに合わせて、ゴルフ用品店やネットショップでは、中古を含めてゴルフクラブの品揃えが良くなっただけでなく、安い値段で手に入るようになりました。

「物品税」の影響もあり、今よりも手の届きにくい存在だったゴルフクラブ 写真:AC
「物品税」の影響もあり、今よりも手の届きにくい存在だったゴルフクラブ 写真:AC

 ところが、今から数十年ほど前まではクラブ1本だけでかなりの出費だったと言われ、その原因の一つとして「物品税」と呼ばれるものがありました。それはどのようなものなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「物品税とは1940年から89年までの間にあった税金の一種で、ゴルフクラブ以外にも宝石や毛皮、洋酒などにも課せられていました。いわゆる『ぜいたく税』と呼ばれるもので、高価でなおかつ生活必需品ではない、趣味や嗜好のために使われる商品が対象となっていました。現在はゴルフが老若男女あらゆる人々に親しまれ、クラブを安く買えるだけでなく、気軽にラウンドもできます。しかし、物品税の制度が導入された頃は、まさしく『紳士・淑女』の嗜みで、ほんの一握りのお金持ちしかゴルフは経験できないものでした」

 物品税には第1種から第3種までの3つの等級に分かれ、第1種は宝石や貴金属といった調度品が対象でした。そして、ゴルフクラブは自動車や楽器、テレビをはじめとした電化製品と同様に第2種に分類されていました。税率は商品によってさまざまでしたが、ゴルフクラブは30%と最も高い部類に入っていたようです。

 しかし、日本のバブル景気もあり「物品税」は廃止になったといいます。

「日本の経済が一気に成長して多くの人々が趣味や嗜好に興じられるようになったとともに、ものやサービスの多様化によって課税対象の線引きが曖昧になっていたことが問題視され、1989年4月1日から消費税が導入されたのと入れ替わる形で廃止されました」

ぜいたく税の「ゴルフ場利用税」はいまだに残っている

 昔に比べてゴルフは多くの人に親しまれるようになり、「お金持ちのたしなみ」から「スポーツ」へと認識が変わってきました。ところが、同様にぜいたく税と言われている「ゴルフ場利用税」はいまだに残っています。

 ゴルフ場利用税は、消費税の施行と物品税の廃止と同じタイミングの1989年4月1日に、従来の「娯楽施設利用税」からゴルフに関するもののみを存続させる形で導入された税金です。

「娯楽施設利用税」では同じく課税対象であったパチンコや麻雀、ビリヤードなどはぜいたく税から外れたにも関わらず、ゴルフ場だけは引き続き徴収されることが決まったため、「不公平だ」として現在でもゴルフ業界と行政との間では存廃について議論が繰り返されています。

 ゴルフ場サイドは、撤廃されるとプレー料金が抑えられ、さらなる利用客の増加が期待できますが、自治体としてはゴルフ場利用税がなくなると市町村の財源に大きな影響が出る可能性があるので、導入から35年が経過した今でもなかなか廃止にできない状況だといいます。

 ここ数年の間でゴルフを始めた人にとっては「ゴルフはお金持ちのたしなみ」というイメージはあまり持たないかもしれません。しかし、日本ではゴルフがレジャーの一つとして誰でも楽しめるものになった期間は短く、平成に入るまでの時代では「ぜいたくな大人の遊び」だったのです。

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