超一流の「個性的な動き」なスイングフォームは、誰もが注目してしまいマネしたくなる人も多いはず。その一方で、しばらくすると「真逆のトレンド」が生まれてしまうのもゴルフの不思議なところ。次々に取り上げられる一流プロの「個性的な動き」は、アマチュアがマネしてもいいのでしょうか。

最新スイング論に振り回されるべきじゃない

 野球やゴルフなどスポーツの世界では、強い選手の「個性的な動き」にはマネしたくなる魅力があるものです。特にゴルフスイングではプロアマ問わず「コロコロ変わるトレンド」が存在しますが、当の本人は「形」から作ったワケではなく狙ったショットをするうえで自然に身に付いたものが多いのも事実。

「〇〇スイング」などと一斉に取り上げられても、あっという間にブームは終わり真逆の動きがトレンドになったりします。

次々に移り変わるゴルフスイングのトレンド、今は「ダンシングフットワーク」が熱い? 写真:Getty Images
次々に移り変わるゴルフスイングのトレンド、今は「ダンシングフットワーク」が熱い? 写真:Getty Images

 2000年前後に「フックグリップ&ヘッドアップ」が特徴的だったD・デュバル選手は当時「現代クラブに適した21世紀のスイング」といわれていました。

 しかし、PGAツアーで松山英樹選手が活躍すると「後ろを向くくらい頭を残すスイングがよい」と手のひら返し。しかし松山選手本人は「無意識に首に負担をかけていた」と昨年インタビューで話し、意図していないことを語っています。

 近年では「シャローイング」やアドレス以上に深い前傾などがトレンドですが、現在世界ナンバー1のスコッティー・シェフラー選手の「ダンシングフットワーク」は「これが強さの秘密」とばかり取り上げられています。

 アマチュアにとって活躍しているプロの「個性的な動き」をマネすることは、ハッキリいってメリットよりもデメリットの方が大きいと僕は思っています。

「誰でもできそうな動き」の中に多くのヒントがある

 プロアマ問わず活躍しているプロの「個性的な動き」は、憧れてしまうものです。しかしそれは、プロ本人の柔軟性や身体的な特徴から生まれたものがほとんどです。

選手特有の個性的な動き(赤囲み)よりも、目的に合った「誰でもできそうな動き」(水色囲み)にスイングのヒントがある
選手特有の個性的な動き(赤囲み)よりも、目的に合った「誰でもできそうな動き」(水色囲み)にスイングのヒントがある

 アドレスよりも深くなる前傾をキープするインパクトなども、伸び上がってしまう悪いクセを直したい人にはお手本のように見てしまいますが、実際に役立つのは前傾角度ではなく「ボールに近づかない骨盤」や「芯を食うグリップ位置」だったりします。

「上半身の右側屈(サイドベンド)が大きい」などのスイングばかり考えてしまうと、マネしたいプロに近づくどころか余計にボールに当たらなくなり、ケガに繋がってしまう場合もあります。

逆立ちしてもマキロイにはなれない! マネしたいなら「体格&年齢」が近いプロを

 現在「スイングのお手本」といわれているタイガー・ウッズ選手ですら、全盛期の「ダウンスイング時の強い頭の沈み込み」には世界中から賛否両論がありました。40代後半となった現在のスイングを見ると、満身創痍の体の負担を考え激しい個性は影を潜めています。

今の自分と「体格と年齢」が近いプロの「オーソドックスな動き」ならマネする価値はある
今の自分と「体格と年齢」が近いプロの「オーソドックスな動き」ならマネする価値はある

 トップアスリートには若い頃に大きなピークを迎える選手もいれば、大きなスランプもなくシニアになっても元気に活躍する選手もいます。

 重要なのは、憧れのスイングをしているプロの体格や年齢が自分と近いのか、ということです。

 例えばローリー・マキロイ選手のスイングは誰が見てもカッコいいですが、逆立ちしても「マキロイにはなれない」ことは知っているはずです。せめてスイングの要素をマネするなら、自分に「体格と年齢」が近いプロを見つけることが先決です。

 例えば一般中年男性とほぼ同じ「体格と年齢」プロのスイングなら、個性的な動きも少なくマネしてみる価値はあるでしょう。

 多くのアマチュアが持っている「現実的な伸び代」は、「出来る範囲」の中にあるはずです。一時のトレンドなどに惑わされず、自分がマネできるスイングを見つける「目」を養って欲しいです。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数出演するほか「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン&コミュニティー「FITTING」編集長やFMラジオ番組内で自らコーナーも担当している。

猿場トール