7月8日に逝去された安倍晋三元首相。近年ではトランプ元大統領との「ゴルフ外交」が注目されましたが、それ以外にもゴルフ業界とは昔から深い関わりがありました。

2011年5月には日本ゴルフ場経営者協会の理事長に

 2022年7月8日に逝去された安倍晋三元首相は、2021年5月から一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会の名誉会長を務めていました。

 同協会は国内唯一のゴルフ場経営者団体として1969年9月に設立。ゴルフ場事業に関する行政府との窓口としてゴルフ場経営企業の抱える諸問題の解決策を研究してきました。

2019年5月26日、千葉県のゴルフ場でトランプ元大統領とゴルフ外交を行った安倍晋三元首相 写真:時事
2019年5月26日、千葉県のゴルフ場でトランプ元大統領とゴルフ外交を行った安倍晋三元首相 写真:時事

 安倍元首相は東日本大震災発生直後の2011年5月に同協会の理事長に就任。ゴルフ場業界で発生していた東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害で、損害を受けたゴルフ場が賠償金を受け取れるように尽力しました。

 ゴルフ業界には当時、17団体で構成される日本ゴルフサミット会議という組織があり(2022年9月現在は15団体)、毎年1月に都内のホテルでゴルフ新年会というイベントが開催されていました。2012年のゴルフ新年会で安倍元首相が同協会の理事長として挨拶したのを大勢の業界関係者が耳を傾けていました。

 2012年12月に第2次安倍政権が発足すると、国務大臣兼職禁止により理事長を辞任しましたが、2020年9月に総理大臣の座を退いた後、2021年5月に名誉会長に就任。ゴルフ業界とは親密な関係を築いていました。

第2次政権ではトランプ元大統領とのゴルフ外交で親交を深めた

 安倍元首相がゴルフを愛好していたのは、祖父である岸信介元首相の影響が大きかったのだろうと思います。1957年6月に米国のアイゼンハワー大統領からゴルフに招待された祖父の話を聞き、自らが総理大臣になった際にはゴルフを通じて諸外国と親交を深めようと決めていたのでしょう。

 2006年に発足した第1次政権時代には残念ながら機会に恵まれませんでしたが、2012年に第2次政権が発足すると、2013年3月のオバマ大統領との日米首脳会談の手土産にパターを持参しました。

 そして2017年1月にトランプ大統領が就任すると、翌2月の日米首脳会談後にフロリダ州パームビーチにあるトランプ氏所有のゴルフ場で念願の同伴プレーが実現しました。

 そのお礼に2017年11月には霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)でトランプ氏が希望した松山英樹選手とのラウンドをセッティング。ゴルフを外交に積極活用しました。

 2018年4月と2019年4月にも米国でトランプ氏とゴルフを楽しみ、2019年5月には茂原カントリー倶楽部(千葉県)で5度目のゴルフ外交。このラウンドには日本ゴルフツアー機構会長の青木功プロが同伴しました。

 青木プロは安倍元首相が逝去した直後に追悼コメントを発表しました。その中には次の一文がありました。

「思えば安倍氏とは長いお付き合いでした。晋三氏の御尊父晋太郎氏と親交がありましたので、晋三氏が大学生だった頃からのことです」

 実は青木プロ、安倍元首相の父親である安倍晋太郎氏にとてもお世話になった出来事がありました。

 1970年代後半から世界を舞台に活躍を始めた青木プロは、南アフリカ出身のプロゴルファーであるゲーリー・プレーヤー氏から自国開催のイベント出場の誘いを受けました。しかし、当時の南アフリカはアパルトヘイトという人種差別政策を続けており、日本をはじめとする多くの国が国交を断絶していました。

 青木プロは南アフリカに行けるよう外務省に働きかけたところ、かねてから親交があった外務大臣の安部晋太郎氏が特別ビザの発行を許可してくれたのです。

 お世話になった方の息子さんが総理大臣になったのですから、ゴルフ外交に協力するのは当然の流れだったのでしょう。

「長きにわたり国のため、国民のことを想い、ご自身の健康をも犠牲にして職務にあたるお姿を拝見するたび、尊敬の念を抱いておりました。祈り叶わず悲しい訃報に接し、深い悲しみ、痛恨の極みであります。今はただ万感の思いを込めて感謝申し上げ、謹んで哀悼の意を捧げます。合掌。」と追悼コメントを締めくくった青木プロ。ゴルフ業界にとってもかけがえのない人物を亡くしたのかもしれません。

保井友秀