ルールで14本以内と決まっているクラブセッティング。同じモデルでそろえる人もいれば、カテゴリー毎に異なるモデルを投入する人もいます。しかし、「自分のベスト」だと思っているセッティングが誰の目から見ても「残念な」場合もあるはずです。筒康博コーチに話を聞いてみました。

「自分に合わない」を連呼する自虐ゴルファーは要注意

「残念なクラブセッティングがあるのか?」なんて、今回テーマも難しいですね。

 クラブセッティングには、まずコースで活躍してくれる使い勝手のいいクラブがラインナップされているか、が重要になります。特にコースでの使用頻度の高いクラブが「どこに飛ぶか予想もできない」、「距離感が全くイメージできない」など、入れている意味が見いだせないクラブでは、仮に長さや重量がそろっていても“お飾り”番手といわざるを得なくなってしまいます。

練習時から「距離が分からない」、「どうやっても曲がる」などの不満ばかりが口をつくクラブセッティングなら買い替えたほうがいい
練習時から「距離が分からない」、「どうやっても曲がる」などの不満ばかりが口をつくクラブセッティングなら買い替えたほうがいい

 また、購入してから半年以上経っても、練習時から「自分に合わない」、「どうやっても当たらない」と感じるなら買い替えサイン。「買い替えても自分はヘタだから」と考えるのは自由ですが、うまく打てないと感じているクラブでラウンドするストレスに耐える必要はないのでは、と思ってしまいます。

「どんなクラブが合っているのか?」、「正しいクラブセッティングは?」という理想の前に、まず「必ず失敗するクラブ」を使わないことは可能です。

 例えば、「番手を変えてもグリーンに届かない」アイアンなら、スペック云々よりもセットごとリフレッシュした方が精神衛生上も合理的です。

 もしショートしがちなパターなら、ヘッド形状や重さシャフトなど一新して、やさしく打っても届くイメージにすることが必要です。「弘法筆を選ばず」といいますが、プロや上級者ほど「うまく打てる気がしない」クラブを使うことはありません。

 スコアメイクやスイングが難しいゴルフだからこそ、自分のプレースタイルに全く役に立たない“お飾り”番手が多いクラブセッティングは「残念」です。

「○本で十分」や「古い名器自慢」な人のセッティングには停滞の影が

 一方、コースで多用しないしうまく打てないけれど、存在理由があるクラブもあります。ビギナーにとって5番アイアンや3番ウッドは、「クラブ自体がコースで活躍する」ことはそうそうなはずです。

 しかし、「5番アイアンを練習することで、6〜7番アイアンが打てる」であったり、「3番ウッドがあることで、7番ウッドやユーティリティーが得意になっている」などの目に見えない効果をゴルファーに与えている場合もあるのです。

初心者クラブセットはとにかく「やさしく当たる」本数に絞ったものが多いが、成長のため「次のステップに挑戦する」ことも必要
初心者クラブセットはとにかく「やさしく当たる」本数に絞ったものが多いが、成長のため「次のステップに挑戦する」ことも必要

 ベテランゴルファーの中には「使わないから要らない」、「○本で充分」という“自称・正解セッティング”な人もいますが、ギアを楽しめない「残念」な停滞ゴルファーともいえます。

 最新モデルを購入するゴルファーを批判材料にする「古き名器自慢セッティング」な人にも疑問を持っています。どんな名器も、世に現れた時点では「最新」だったはずで、常にメーカー各社のクラブは「過去をお手本に」温故知新を繰り返しているからです。

「すごくコースで活躍しているから新しいモデルに換えられない」なら共感できますが、「最新モデルだからスコアがアップするのか?」みたいにネガティブで了見が狭い人のセッティングも「残念」といえます。

理屈より「ワクワク」を優先したポジティブなセッティングにしよう

 スコアアップには使用頻度の高い番手こそ、「使い勝手」と「結果」が重要になります。競技ゴルファーであれば、全ての番手で「役割を果たす」必要があり、ミスを最小限に抑えたトータルバランスが必要でしょう。重さや長さ、シャフトの種類など「セットの流れ」をチェックすることで、プレーに集中できるようなセッティングにしたいです。

 一方、100前後の「成長途上」ゴルファーなら、今はうまく打てない番手にも大いに挑戦すべきです。

腕前やスイング同様に、クラブセッティングも成長やアップデートされるのが理想。新しいクラブやセッティングに挑戦することもゴルフの楽しみ
腕前やスイング同様に、クラブセッティングも成長やアップデートされるのが理想。新しいクラブやセッティングに挑戦することもゴルフの楽しみ

 明日のコンペで恥をかかないプレーを希望するなら、「やさしい」、「ラク」な番手ばかりでもよいですが、「ゴルファーとしての成長」を促すなら新しいドライバーやフェアウェイウッド、シャープなアイアンやかっこいいパターにも挑戦すべきだと思います。

 クラブセッティングは野球やサッカーなどの「チーム」としてイメージするといいかも知れません。結果を出すための「主力選手」はもちろん必要ですが、存在することでモチベーションが上がる「ムードメーカー」的な存在も、セッティングにあってもよいと僕は考えています。

 例えば、使い慣れたドライバーと最新モデルの「2本体制」もアリです。せっかく自分で選んで自分のお金で購入したクラブセッティングなのに、「好きになれない」、「合わない」なんて口からもれてしまうのは非常に「残念」だからです。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール