希少種のトンボ「キイロサナエ」の松山市での生息が、約70年ぶりに確認された。専門家らは「松山での再発見は貴重」としつつ、「なんとか生き残っている状況。手放しでは喜べない」と警鐘を鳴らしている。
 キイロサナエは成虫が体長約6・5センチで、黄と黒のしま模様がある。平地の河川や水路などに生息するが、コンクリート護岸への改修や水質汚濁で全国的に減少。環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。
 見つけたのは、自然保護に取り組むNPO法人「森からつづく道」の理事で県希少動植物保護推進員の武智礼央さん(41)=松山市。3日に同市南高井町の川沿いで別のトンボを調査していたところ、偶然キイロサナエの幼虫を見つけた。
 生息地は植生がある川沿いで、流れが緩やか。流入する生活排水の量も比較的少なく、湧水もあって水質が良好に保たれているとみられる。武智さんは「人間活動の影響を受けやすく、今後の開発次第でどうなるか分からない」と話す。
 キイロサナエは県内では西予市や内子町などに生息。中予地域では長らく確認されておらず、松山市の2012年のレッドデータブックでは「50年以上採集されておらず、市内では絶滅したとみられる」としていた。その後は市独自の調査はなく、県のレッドデータブックに統合。22年版では絶滅危惧II類に指定されている。武智さんによると、近隣では東温市(旧川内町)で1985年に1匹見つかったとの記録が残っている。
 松山市のレッドデータブックを執筆した人間環境大(愛知県岡崎市)の久松定智准教授によると、松山での確認は50年代以来。「良好な里地で見られるトンボがいると知ってもらうことが、保全へのきっかけとして重要だ」とコメントした。(杉本賢司)