全員主演の劇場版アニメ『 i☆Ris the Movie - Full Energy!! -』が17日公開

 声優アイドルユニットのi☆Ris(アイリス)主演の劇場版アニメ『 i☆Ris the Movie – Full Energy!! -』 が、今月17日から全国公開される。2012年のデビューから10周年の記念プロジェクトとして、一昨年に制作が決定。アイドルと声優を両立してきたi☆Risらしく、アニメとCGライブを融合させた作品に仕上がった。12年をともに過ごしてきた個性豊かな5人が、お互いの関係や12年目への思いを語った。(取材・文=大宮高史)

――劇場版の制作が決まったのは2年前でしたが、その時の印象は。

全員「『ええっ、なんで今』とみんな、ビックリでした」

芹澤優「私たちが映画になるなら、もっと若くてピチピチの頃でもよかったのに(笑)」

久保田未夢「もしかして、エイベックスさんおかしくなっちゃった? 実写じゃなくてアニメ? どうやって? と疑問符だらけでした」

――みなさん、意外な反応ですね。

若井友希「『売れるの? 大丈夫ですか?』って聞きそうになりました。個人のお仕事でも劇場版に出られる機会はなかなかないので、『結果を出さなきゃ』というプレッシャーも勝手に感じていたのですが、まずはi☆Risの軌跡をお祝いしようというコンセプトで、メモリアルな映画として作っていただいたので、ありがたい気持ちが湧いてきました」

茜屋日海夏「私たちと同じレーベルで1年後にデビューしたWUGちゃん(編注:声優ユニット『Wake Up, Girls!』)を主人公にした劇場版アニメが好きだったんです。i☆Risとしても映画の主人公になれたらいいなと思いつつ、10年近くが過ぎたところにこのお話がきて、その頃のキラキラした感情が蘇りました」

久保田「アイドルのドキュメンタリー映画が好きなので、『どうやってアニメの中で(i☆Risの歴史を)ドキュメントタッチにするんだろう』と不思議がっていました。そうしたら、劇場版の中では5人がいきなり違う世界に飛ばされます。その中でもメンバーの個性や夢も織り込まれていて、リアルとファンタジーのバランスが絶妙です」

山北早紀「私の口癖も全国の映画館で公開されてしまうんですね。『お疲れさきさま』とか『たのしもーもーふぁーむ』とか……みなさんがどんな反応をするか、ワクワクします。『さきさま』の『ま』をキャッチコピーにつける習慣があるんですが、そんな細かな癖まで活かされていました。『100点さきさまんてん!』なんて、いかにも私が使いそうなセリフだなと」

――制作にあたって、i☆Risを知る方々に綿密に取材を行ったそうですね。

久保田「ほとんど語ったり、見せていないはずの楽屋での様子もバッチリ反映されているんです。5人の立ち位置やツッコミ、ボケみたいな空気感がすごく上手く表現されていて、『いつのまにそんなに観察してたの』って驚きました」

芹澤「私の決め台詞の『Seriko is No.1!』もアフレコで何回言ったかな?ってくらい連発しています。実は過去に1度だけメンバーとダンスのクオリティーをめぐって大ゲンカをしたことがあり、それがi☆Ris唯一のメンバー同士のケンカです。そんな風につい熱くなったり、感情に素直で仲間を気にかけてしまうところをスクリーンの中でもメンバーに見せています。だから、『芹澤ってそういうところあるよな』と、i☆Risをずっと見てきたファンのみなさんなら共感してもらえると思います」

若井「一番若井らしいところは岐阜弁でしょうか。台本は全部標準語だったのですが、自分で全部岐阜弁にアレンジしました。結局、採用されたのは一言二言だけでしたが(笑)」

茜屋「私はYouTubeを始めてもう4年になるのですが、動画の中での振る舞いまで分析してくれたのか、小ネタが大盛りですね。リアルな私よりちょっとだけ面白くなっていて『こう見られていたんだ』と思いつつ、皆の性格がコミカルに強調されているところも楽しく見ることができて……」

茜屋以外の全員:「ちょっとどころじゃないでしょ!」

――みなさん、こう言っているようですが……。

茜屋「確かにネタが盛り込みすぎかも(笑)、普段の茜屋からなぜあんなキャラになったのか……例えば“顎ドン”をするシーンがありますが、あれはアゴ(の長さ)をよくイジられていた影響かなと。こんな風に、知る人ぞ知る細かなポイントが多くて笑える内容です」

「ビジョンを共有しないところにi☆Risの良さがある」

――デビューから12年で、変わったと思うところはありますか。

山北「リーダーとして、いい意味で頑張らなくなりました。以前はもっと真面目というか、猫をかぶって必要以上に責任感を感じていました。なので、アニメでは最近見せていなかった熱いリーダー像が見られて、我ながら感動してしまいました。アフレコも恥ずかしかったですね」

――具体的には、どんな場面でしょうか。

山北「メンバーの前で泣いてしまう場面がありますが、涙は陰で流す生き方をしてきたので、リアルなi☆Risでは絶対に見せてこなかった姿です。自分で自分を演じるこの作品ならではの経験です。最近はメンバーにもファンにも“おちゃめでかわいさきさま”でいたので、『私ってこういうピュアで真っすぐな女だよな』と熱いハートを思い出しました」

芹澤「変わったといえば、みゆたん(久保田)です。出演している別のアイドル作品 が始まって雰囲気が変わりましたね。一番クールだった子が、メイクさんとかともすごい仲良くしゃべるようになって、柔らかい印象が増しました」

若井「みゆたん は私に対して、お姉ちゃんぶってくるようになりました。2人でファンには『わかくぼ』と呼ばれているんですが、わかくぼでいる時はすごく面倒見がよいです」

久保田「でも、私は昔から落ち着いているつもりです(笑)。楽屋でも1人で音楽を聴いていたり、劇場版でも一番冷静なキャラに描かれています」

茜屋「いや、前にもましてよく笑うようになったよ。i☆Risってメンバー同士だとあまりアニメのオタクトークがないところも面白くて。みゆたんが一番アニメ好きなので、外仕事でオタク友達を作っているのかも」

久保田「私たちも声優アイドルグループなのにね(笑)。キャッキャし過ぎず、この適度な距離感もi☆Risらしさだなと思います」

――12周年を迎えましたが、これからの抱負やあらためてグループへの思いは。

若井「ビジョンを共有しないところにi☆Risの良さがあります。5人で一緒に仕事をするのも毎年のライブツアーとワンマンライブくらいで、1か月くらい会わない時もあります。なのに信頼し合える関係が12年続いてきました」

茜屋「デビューしたての頃は、秋葉原でチラシを配ってお客さんにライブに来てもらっていました。だから、同世代の子たちが羨ましく思える時もありましたが、続けられたことでいろんなお仕事の機会に恵まれました」

芹澤「i☆Risの歴史がなければ、これだけメンバーの個性とスキルを生かした映画はできなかったように、『続けることに意義がある』と実感できる瞬間が増えました。『いつまでアイドルやってるの』なんて思われたくないですし、キュートなアイドルとして『Seriko is No.1! 』を貫いていきます」

久保田「CGでのライブシーンのためにモーションキャプチャーも務めたことも、ずっとライブをやってきたi☆Risならではです。10年前にも『プリパラ』で全員でメインキャラ を演じる機会がありましたが、役を通してではなくアニメの中でも同じ人格を演じたので、より皆のことが愛おしく思えます」

山北「結成当時のライバルや仲間も、声優アイドルの枠から違う道を歩んでいます。それはi☆Risも同じですが、一人ひとり考え方も得意なことも違う中で 『同じグループでいられたのは奇跡だな』と思っています。だからなのか、『私たちが最後の希望だよ』ってファンから言っていただけるようになりました。ずっと伴走してくれたファンがいるかぎりi☆Risでいようと思います。そのためにも、まずは健康と元気でいることですね」

□i☆Ris(アイリス)エイベックス・グループと81プロデュースのダブルマネジメントによる声優とアイドルの活動を両立するハイブリッドユニット。メンバーは山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢の5人。2012年にCDデビューを果たすと、並行して個々の声優業も継続。14年にはアニメ『プリパラ』で、メンバー 全員でメインキャラクターを演じ、15年に1stアルバム『We are i☆Ris!!!』をリリース。16年に初の日本武道館公演「i☆Ris 4th Anniversary Live 〜418〜」を開催。 22年11月に10周年ライブ「i☆Ris 10th Anniversary Live 〜a Live〜」を開催。今年は1月に24枚目シングル『White Lyrical Kingdom/キセキ-ノ-フィラメント』、3月にカップリング曲のみを集めたアルバム『i☆Ris Coupling Best』をリリースした。大宮高史