“遊ぶクルマ”の代表格と言えばキャンピングカー。アウトドアでも快適に過ごせる仕立てはまさに第二の我が家。その最新モデルが一堂に会した展示会から報告。モータージャーナリストの桐畑恒治がリポートする。

キャンピングカー市場は右肩上がり!

クルマで往く外遊びやクルマ旅がいまアツい。もちろん普段遣いのセダンやワゴン、あるいはスポーツカーだってそれはできるが、車中泊を伴うようなシーンにうってつけなのがキャンピングカーである。人との接触がままならないコロナ禍での、安心・安全なアウトドア・レジャーの相棒として、個々人の空間を守れる手段のひとつとしても最適なのは間違いなく、なんとなれば、リモートワークやワーケーションのスペースとしても重宝できて、精神衛生上にも非常によろしい。

実際、一般社団法人日本RV協会が発行する「キャンピングカー白書」によれば、2022年の国内におけるキャンピングカーの累計保有台数は、前年から9000台増の14万5000台を記録。新車・中古車を合わせた販売総売り上げも過去最高の762億円に達するなど、右肩上がりに伸長している。去る2月に開催されたアジア最大級のイベント「ジャパンキャンピングカーショー」が4日間で5万人超を集めたことからも人気の高さがわかるだろう。

ひと口にキャンピングカーといってもスタイルは様々。ベース車両に架装を施して快適な空間を作り上げるという根っこの部分は同じだが、そのベース車両は多岐に渡る。代表的なものでは、商用バン・ベースの「バン・コンバージョン」、トラックのキャビンやフレームを応用した「キャブ・コンバージョン」、マイクロバス等の広々とした空間を活かした「バス・コンバージョン」、軽自動車を用いた「軽キャンパー」、MPVやSUVをベースとしたモデルやキャンピングトレーラーなどがあり、価格帯やカスタム内容も様々。そんなモデルが一堂に会したイベントが、ジャパン・キャンピングカー・ショーである。取材班は初めてここに足を踏み入れたが、見るものすべてが新しい。そんな初心者目線で気になったモデルを紹介していこう。


フィアット・デュカト、キャンパーの黒船襲来!
今回のショーの目玉は、昨年末に発売されたフィアット・デュカトだ。このモデルは商用に用いられるLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)のベストセラーで、広大な荷室をいかようにでも架装できるのが特徴だ。上の写真は正規販売代理店のひとつであるRVランドが手掛けた「ランドワゴンルーム」で、荷室スペースを最大限に活かし、キッチンやシンク、対面式の4人掛けシートと引き出し式のテーブルで構成されるダイネット(ダイニングスペース)を設け、その奥にベッドスペースを配置するなど、その名のとおり清潔なワンルーム・マンションのような設えが特徴。トイファクトリー製「ユーロバーデン」は可倒式のベンチシートを備え、ベッドやダイネットにアレンジできる機能的なモダンリビングが構築されている。特別な架装は施さず、バギーをそのまま載せられるトランスポーターとしても活用できるなど、アレンジ力の高さがデュカトの魅力である。

セカンドハウス製「ウイングスプレミアム」
キャンプングかーのど真ん中!定番に求められる多様性
トヨタ・ハイエースを始めとするキャンパーの人気も健在だ。上の写真のセカンドハウス製「ウイングスプレミアム」は、真っ白な内装に大ぶりのプレミアム・キャプテンシートを配置した、銀座のクラブもかくやと思わせるほどのラグジュアリーな空間演出が目を引く。その一方でゴードンミラー・モータースの「GMLVAN V-01」は過度な作り込みをしないシンプルでウッディな内装が特徴。キャンパーのなかでも比較的リーズナブル(550万円から)なことも魅力だろう。また、ケイワークスは車椅子用リフトを備えたモデルを展示するなど、多様性が求められる現代ではこういった仕様も欠かせない。

キャブ・コンバージョンの主力モデル、トヨタ・カムロード。
ステップアップ派はこれ、自由度が高まるキャブ・コンバージョン
ハイエース等の“バンコン”モデルからのステップアップとして人気を集めるのがキャブ・コンバージョンだ。その主軸はトヨタ・カムロード。聞き慣れないこのモデルは、ダイナを基本に足回りを専用設計としたキャンピングカー専用ベース車両である。運転席用キャビンから後ろはまさに自由設計であり、リビング・ダイニング的な仕立てはもちろん、マリンレジャーで重宝する防水内装など、ユーザーの用途に合わせた架装がしやすい。キャンピングカーでは生活家電が使えるのも魅力のひとつだが、その際に必要となるサブ・バッテリーにリチウムイオンが用いられるようになってきたのも、最新のトレンドである。

欧州で人気のアドリア製モデル。
バス・コンバージョンは、もはやマイホーム
キャンピングカー・ユーザーの憧れの的が、マイクロバス等を架装したバス・コンバージョンである。RVランドが手掛ける、トヨタ・コースター・ベースのフラッグシップ「ランドホーム」は、本来の強固なボディ構造はそのままに、ウィンドウ部分をFRP一体成型の窓埋め構造として断熱性や遮音性を向上。バンコンが500〜1000万円、キャブコンが1000万円前後という価格帯にあるのに対して、バスコンは1000万円以上とお値段も張る(もちろんそれぞれの架装内容によって価格は大きく変動)。経済的に余裕のある方、あるいは多人数での使用を考える向きの選択肢と言えるだろう。特にアドリア製モデルは欧州で人気がある。キャンパーとしてはもちろん、サーキットで見かけるモーターホームとしての引き合いが多く、工具やタイヤなどが置けるスペースも確保されている。


軽キャンパーは、遊び方無限大
ミニマルなアウトドア・スタイルにうってつけなのが軽自動車をベースとしたキャンパーだ。キャビネットやシンクなどの基本アイテムを備えながら、スタートプライスが200万円台からとリーズナブルなところに注目が集まるが、限られたサイズに自由な発想を盛り込んで独自性をアピールしている点も見逃せない。特に目を引いたのはATV群馬のブースに展示されていたダイハツ・アトレー・ベースの「ノースハンター」。専用サスペンションを与えたリフトアップ・スタイルにオリジナルのバンパーやオーバーフェンダーなどを与えてワイルドさを演出。内装はフィッシャー向けとしてロッドやワーム・ホルダーなどを装着するなど、趣味に没頭できる空間づくりがなされていた。カスタムセレクト社による「ロードセレクト コンパクト」はスズキ・エブリイをベースに、畳を敷いて和室の趣を演出。抗菌・防湿・消臭作用の高い青森産ヒバを用いた家具やミニシンクを設けるなど、小さいながらも本格派の仕立てだ。

ホワイトハウスのシトロエン・ベルランゴ
SUVベースは、とってもフレンドリー
キャンピングカーという独特のジャンルの見本市にあって、身近なSUVやMPVの面影を色濃く残したモデルはちょっとホッとする。トヨタ・ハイラックスをベースとしたダイレクトカーズの「ハイラックスBR75」は、ダイネットやベッドなどを備える本格派ではありながら、運転席から見る景色や全幅はベース車のそれとほとんど変わらず、気負うことなく運転できるのも魅力。よりベース車に近いもので言えばホワイトハウスのシトロエン・ベルランゴもそう。ベッドルームになるポップアップ・ルーフを備えるとともに、通常の後席を取り払ってベッドマットを敷きながら、その下のスペースを活用して格納式のバーベキュー・グリルを仕込ませるなどのアイデアが効いていた。運転もアウトドアも手軽に楽しみたい方はこの辺りからキャンピングカーの世界に足を踏み入れてみるのもいいだろう。いずれにしても選択肢は盛り沢山。その中から自分に最適なものを見つけて、ライフスタイルの幅を広げてみてはいかがだろうか。

文=桐畑恒治 写真=小河原 認

(ENGINE2023年5月号)