ロードカーである「アストンマーティン・ヴァンテージ」のビッグ・マイナーチェンジと同時に、GT3カテゴリーのレーシング・モデルとなる「アストンマーティン・ヴァンテージ GT3」がデビューを果たした。

52回のクラス優勝と11回の世界選手権タイトル

このほど披露されたヴァンテージGT3は、2012年から2023年の11年間、52回のクラス優勝と11回の世界選手権タイトル獲得という圧倒的な強さを誇った「ヴァンテージGTE」の後継モデル。2024年から新設されるFIA世界耐久選手権(WEC)の「LMGT3」クラスをはじめ、アメリカで開かれるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権、ファナテックGTワールドチャレンジといった世界各地で行われるGTシリーズの最高峰への参戦を予定しているレーシング・カー。そのほか、スーパーGTのGT300をはじめ、FIA GT3クラスの参加が認められているレースに投入される。

F1の知見を採り入れる

ヴァンテージGT3は、技術部門であるアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)とF1をはじめとしたレーシング活動を担うアストンマーティン・レーシング(AMR)が初めてタッグを組み、新型ヴァンテージと同じDNAを共有しながら、GT3の最新のレギュレーションに適合させた。搭載されるパワートレインは4.0リッターV8ツインターボで、空力性能の向上とサスペンションの進化を主眼に据えて開発された。

両部門による初のGTレース・プログラムにより、レースを走る実験室として活用しながら将来のロードカーにも知見が活かされることになる。今回の新型ヴァンテージGT3の開発では、AMPTが目標を設定し、AMRが実現するという形で進められた。

ドライブしやすい操縦性

旧モデルの課題であったハンドリングを中心に、プロ・アマを問わず、ドライバーにとってよりドライブしやすい操縦性を追求。具体的には、新レギュレーションに対応しながら、高速域の走行性能と扱いやすさという相反する要素を両立させるため、ブレーキング時の安定性向上に着目している。

空力性能の向上策として、数値流体力学を活用することでFIAのダウンフォース規制の枠内でエアロダイナミクス性能と効率性の目標を達成している。

空力とサスペンションを上手にバランス

また、サスペンションのセッティングも重要な開発目標だった。新世代のGT3マシンはよりダウンフォースに頼るため、制動時の安定性確保が不可欠。旧モデルではブレーキング時にかなり沈み込んでいたため、新型ではリア・サスペンションのセットアップでピッチの制御を試みている。

ただし、サスペンションが硬くなり過ぎてタイヤにも過度な負担が掛かるというデメリットが発生するため、ダンパーのチューニングに徹底的に取り組んだ。その結果、新型ではより優れたバランスを見つけだし、サスペンションのセットアップを悪化させることなくダウンフォースを発生できるようになっている。

美しさと機能を両立

美しい外観も見どころで、機能性に裏付けられたパーツを開発。なかでも注目は新しいフロントまわりで、ワイドになったグリルは見栄えの良さだけでなく、ブレーキ・ダクトからブレーキに流す冷却用空気の量を増やし、より安定したパフォーマンスにも寄与している。

カーボンファイバー製のフロント・ノーズは大型の一体型クラムシェルで成形され、クイックリリース設計によりレース中の接触などのアクシデントで損傷した際などでも素早く交換ができる。

また、ワイドなレーザーライトのほか、スプリッターを短くすることで圧力の中心を後方にずらし、ピッチ感度を下げて安定性を向上。フロント・ホイールアーチ上部に配置された大型ルーバーは空気を逃してリフトを低減し、さらにリア・アーチのルーバーで高圧の空気を逃すことでドラッグを減らしている。

新型ヴァンテージGT3を採用する世界中のチームやパートナーはこれまでよりも増える見込みで、2024年シーズンが終わる頃には30台に達すると想定されている。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)