ベース・モデルのBMW3シリーズのマイナーチェンジにともない、BMW M社が手掛ける3シリーズ・ベースのスポーツ・モデルである「M3」のセダンとツーリングのマイナーチェンジも行われた。新型は2024年7月から生産が開始され、順次、各国、各地域で発売される予定だ。

初代は1986年にデビュー

初代BMW M3は、1986年に発表され、周知のとおり、世界中のツーリングカー・レースでも成功を収めた。いまでは、狼むき出しという雰囲気だが、「羊の皮を被った狼」という比喩が繰り返し使われてきた。

3.0リッター直6ツインターボを継続

マイナーチェンジ版のM3セダンとツーリングに搭載されるパワーユニットは、Mツインパワー・ターボ・テクノロジーが採用された高回転型の3.0リッター直列6気筒ツインターボ。出力の違いを問わず、高回転域までスムーズに回り、BMW Mモデルに相応しいリニアな出力特性を生み出す。

ベーシック・グレードの「M3セダン」、「M3ツーリング」は最高出力486ps(353kW)を発生し、6段MTが組み合わされている。中間グレードの「M3 セダン・コンペティション」、「M3ツーリング・コンペティション」は最高出力517ps(375kW)に8段ATが組み合わされる後輪駆動モデルになる。

そして、最上級グレードの「M3セダン・コンペティション with M xドライブ」と「M3ツーリング・コンペティション with M xドライブ」は、現行型から27ps向上となる最高出力537ps(390kW)、最大トルク650Nmを発生。8段ATと4WDのM xドライブが搭載される。

クローズド・デッキ構造の直6

クローズド・デッキ構造を採る直6エンジンのクランクケースは、剛性が非常に高く、軽量設計の鍛造クランクシャフトと組み合わされ、分厚いトルクも発揮。シリンダー・ボアには、ワイヤーアーク溶射による鉄コーティングが施され、シリンダーヘッドの3Dプリント・コアは、従来の金属鋳造では実現できなかったクーラントダクトの最適な配置を可能にした。

Mツインパワー・ターボは、2つのスクロール・ターボチャージャーからなり、それぞれが3つのシリンダーに圧縮空気を供給。低温回路から供給される間接的なインタークーラーと特別設計されたコンプレッサーが、ターボの出力をさらに高める。燃料の噴射圧は最大圧力350bar。燃料の微粒化とエンジン・レスポンスの高速化を実現する高精度インジェクション、可変バルブ・タイミングの「バルブトロニック」、可変カムシャフト・タイミングの「ダブルVANOS」も備わる。

2WDでも楽しめる

「M xDrive」の4WD仕様は、リア・アクスルに「アクティブMディファレンシャル」を備え、コーナーを力強く駆け抜ける際のMモデルならではのフィーリングをさらに高める。また、走行モードの中から「4WDスポーツ」モードを選択すれば、後輪への駆動力配分が高くなり、より俊敏なハンドリングが可能になるとしている。

さらに、姿勢安定制御装置の「DSC」(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)をオフにすると、後輪のみに駆動力が配分される「2WD」モードが有効になる。サーキット走行など、制御システムの介入なしにM3の走りが楽しめるようになる。

ボディの高剛性化も図る

ボディは高剛性化が盛り込まれた。ボディとシャシー・マウントの高いねじり剛性は、ハンドリングの向上に寄与。セダンのブレース・エレメントに加え、ツーリングには、リアにトーション・ストラットが追加されたことで、ワゴンモデルでありながらMモデルに相応しい俊敏性やハンドリングの正確性など、ダイナミックな走りをもたらす。

脚まわりでは、ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式のフロント・サスペンションと5リンク・タイプのマルチリンク式リア・サスペンション、Mモデルのエラストキネマティクス(運動学的構造)が、日常使いからロングドライブまで、ダイナミックなハンドリングと高い快適性を両立する。また、標準装備される「アダプティブMサスペンション」は、電子制御ダンパーのレスポンスを好みに合わせて調整することが可能。走行モードが選択できるMセットアップ・メニューから3つの異なるセッティングを、走行場所や走りの好みに合わせてクルマのハンドリングを最適化することができる。

内外装は小変更

内外装デザインも変更された。エクステリアではヘッドライト内に収まり、サイド・ライト、デイタイム・ドライビング・ライトおよびターン・シグナル・インジケーターとして機能するLEDユニットが縦長表示に変更。さらに、マトリックス・ハイビームを備えたアダプティブLEDヘッドライトをオプションで設定。アダプティブLEDヘッドライト装着車には、ヘッドライトの内側がダーク仕上げとなる「Mシャドウライン・ライト」も用意。

エクステリアに「Mカーボン・エクステリア・パッケージ」を選択すると、ワイドなフロント・エア・インテーク、モデルごとに独自の形状が与えられたリア・ディフューザーに加え、エクステリア・ミラー・キャップ、さらにBMW M3セダンにはカーボン製のリア・スポイラーが装着される。

リアまわりではL字型のテールライトをスリム形状に変更することで先進性を強調。また、コンペティション・モデルのトランク・リッドに装着されるバッジは、エレガントなシルバー・カラーで縁取られ、エクステリアのアクセントになっている。

アルカンターラ製ステアリングを初採用

インテリアでは、ステアリングとインテリア・トリムを刷新。12時位置にマルチファンクション・ボタンと赤いセンター・マーカーを備えた新デザインの3本スポークの「Mレザー・ステアリング・ホイール」は、フラット・ボトムのリムと最適化されたスポークを備えるのをはじめ、車両設定用の2つのMボタン付き。また、コンペティション・モデルのステアリング裏にはレーシーな雰囲気を醸し出すギアシフト・パドルが備わる。そのほか、Mアルカンターラ製ステアリング・ホイールの初のオプション設定もトピックス。どちらのステアリングにも、ヒーター機能がオプションで用意される。

センター・コンソールのコントロール・パネルもM専用デザインになり、シフト・レバーや赤いエンジン・スタート&ストップ・ボタン、iドライブ・コントローラーとともに、「セットアップ・ボタン」と「Mモード・ボタン」を含むコントロール・パネルが配置されている。

新OSのインフォテインメントを搭載

また、インフォテインメントインフォ装置には新型3シリーズ同様、新しいOSの「BMWオペレーティング・システム8.5」を搭載。システム8.5をベースとする最新世代のディスプレイは制御、操作システムも一新された。12.3インチのインフォメーション・ディスプレイと14.9インチのコントロール・ディスプレイで構成されるカーブド・ディスプレイには、Mモデルならではのコンテンツが表示される。

クラウド・ベースのBMWマップを持つナビゲーションのほか、データ転送用の2つのUSBポート、Wi-Fiインターフェイス、「Apple CarPlay」、「Android Auto」などを使用できるスマホ連携機能も搭載。加えて、10スピーカーと205Wのアンプを備えた「HiFiスピーカー・システム」も標準装備される。

9.6kg軽いカーボン製シートを設定

標準装備のM スポーツ・シートは、ステアリングで最適なポジションに設定できるほか、電動で操作できるさまざまな調整を用意。ヘッドレストにはイルミネーションが施され、先進的かつスポーツ性をアピール。また、前席両側にはシートヒーターが標準、オプションでシートベンチレーションも選択可能となっている。なお、シート表皮を含むインテリアのトリムには標準のメリノ・レザー・トリムのほかに、メリノ・フル・レザー・トリム、「BMWインディビデュアル・メリノ・レザー・トリム」、「BMWインディビデュアル・メリノ・フル・レザー・トリム」が設定され、それぞれ4色から選択できる。

オプションの「Mカーボン・バケット・シート」(フル電動調整/ヒーター付き)は、レーシングカーのような座り心地と機能性を提供しながら質感の高さによりロングドライブでの快適性も担保。シート表皮とバックレストにカーボン・ファイバー強化プラスチック(CFRP)が採用され、サイド・ボルスターとヘッドレストの下が一部カットされ、標準の「Mスポーツ・シート」よりも9.6kgの軽量化を実現した。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)