ホンダのB セグメントSUV、ヴェゼルがモデルライフの後半に備え刷新。新たに加わった2つのサブグレードを中心にその進化を確かめた。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。

ホンダ車No.1

売れているクルマのデザインは変えないのが定法ということで、マイナーチェンジしたヴェゼルは横桟フレームレス・グリルがよりスクエアになり、バンパー・サイドの造形が若干変わったことと、テールライトが全LED化されて水平基調がより強調された程度の変更に留まるために、実際に見比べないと新旧の違いが分からないぐらいだ。



ホンダのコンパクトSUVのヴェゼルは月販台数では時にはフリードを上回ってホンダ車No.1になるほど(もちろんN-BOXを除く)の主力モデルなのである。

2021年発売の2代目ヴェゼルは、今回の変更でラインナップが整理され、ガソリン車は4WDの「G」グレードのみになり(FFは新顔のWR-Vにお任せということか)、シリーズ・ハイブリッドが基本のe:HEVは「X」と「Z」の2グレード(ともにFFと4WDあり)となり、それぞれに「PLaY(プレイ)パッケージ」と「HuNT(ハント)パッケージ」という、いわばサブグレードが設定された。



新設されたハント・パッケージはトレンドのアウトドア志向で、ルーフレールや撥水加工のコンビシートを標準装備、2トーン・ボディ・カラーが特徴的な都会派のプレイ・パッケージと対になる車種である。

1.5リッター 4気筒エンジン(106ps/127Nm)に駆動用モーター(131ps/253Nm)を組み合わせたパワートレインは従来通りだが、一般道を普通に走る分には明らかに静かに、乗り心地も滑らかにしなやかになった。



2代目にモデルチェンジして一気に洗練されたヴェゼルの数少ない弱点がロードノイズだったが、新型は防音材と遮音材を最適に配置し、またハイブリッド・システムの制御を見直してEV走行領域を拡大(エンジンのオンとオフ頻度低減)したことが効いているのだろう。何かスペシャルな飛び道具を採用したからではなく、ひとつひとつの積み重ねで実現したというのが開発陣の説明だ。

しなやかに動く脚まわりは山道でも堅牢でスタビリティも高い。もっとも、登りの山道や高速道路の合流ランプなどでは、あとほんの少し力強ければと思わないでもないが、それよりも目一杯踏んで回した時の音質が苦し気なことが惜しい。シビックなどの2リッター版e:HEVは回しても健康的ないい音であることを考えればなおさらである。

とはいえ、すっきり上質で実用的なヴェゼルは同クラスの中では出色の出来栄えと言っていいのではないだろうか。お客様はちゃんとわかっていらっしゃるのである。

文=高平高輝 写真=望月浩彦



(ENGINE2024年8月号)