今夜初地上波「万引き家族」リリー・フランキーの役を田中邦衛に替えて昭和版つくれる説

昨年、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」(是枝裕和監督)が今夜9時からのフジテレビ系の土曜プレミアムで地上波初放映される。


リリー・フランキーの役は昭和なら田中邦衛が演じていそう?


私が「万引き家族」を初めて観たのは、遅ればせながら今年2月、凱旋上映として各地の映画館で再上映されたときだった。観終えて、ふと思ったことがある。それは、この作品におけるリリー・フランキーの役は、30年ぐらい前なら田中邦衛が演じていたのではないか、ということだ。

もちろん自分の勝手な妄想である。とはいえ、まったく根拠がないわけではない。面長で長身のリリー・フランキーが、田中邦衛の姿と重なったというのもある。また、80年代の田中邦衛が「北の国から」をはじめ、新しい家族像を示すドラマや映画によく出演していたことも、たぶん私の頭の片隅にあったのだろう。倉本聰脚本の「北の国から」は、田中が扮する男が、妻と別れて子供たちとともに東京から北海道・富良野に渡り、自給自足の生活を始めるという作品だった。田中はその後も、映画「ウホッホ探検隊」(1986年)では単身赴任で妻子と離れて暮らす会社員を、また1989年放送のドラマ「砂の上のロビンソン」(1988年)では、憧れのマイホームを得るため住宅展示場のモデルハウスに妻子と住み始めたものの、やがて家庭崩壊に直面し、ついには会社員からホームレスへと転落する男を演じている。

こうして考えてみると、私の思いつきもあながち的外れではないのではないか。ならば、いっそほかの役も別の俳優に替えて、昭和版の「万引き家族」を妄想するのも面白そうだ。もちろん、年金の不正受給や児童虐待などの問題が噴出する現代だからこそ生まれたこの映画を、昭和の作品として“逆リメイク”することはどだい無茶な話ではある。キャスティングにしても、ほぼ全員がこれ以上の適役はないだろうと言いたくなるほどの布陣だ。それでも、あえて別の配役を考えることで、「万引き家族」という作品の本質みたいなものがひょっとすると見えてくるかもしれない。また、この作品は、社会派っぽくもあり、またコメディの要素もあったりと、懐の広さを感じるだけに、ちょっと遊んでみたいという気持ちもある。

そんなわけで、以下にあげるのはすべて私の妄想である。昭和版「万引き家族」の配役を考えるにあたっては、その公開年を昭和62年=1987年と一応設定してみた。これは、田中邦衛(1932年生)とリリー・フランキー(1963年生)の年齢差(31歳)を踏まえ、本物の「万引き家族」の公開年2018年から逆算したものだ。なお、各記事の先頭に掲げた太字は、「役名:実際に演じている俳優名/昭和版で考えられる俳優名」を示す(例…柴田治:リリー・フランキー/田中邦衛)。

安藤サクラの「生々しさ」を再現できる俳優は誰か


柴田信代:安藤サクラ/樹木希林
信代は治の妻だが、これを安藤サクラ以外の誰が演じるのかという役で、別人に置き換えるのは非常に悩ましい。何しろ、ただ映っているだけでその存在感に圧倒されてしまうのだから。たとえば、治とそうめんを食べているうち、久々に肉体関係を持つシーンは、色っぽさとかそういうものをすっ飛ばして、ただただ生々しかった。

本作公開時、安藤は32歳だったが(劇中での設定もほぼ同じだろう)、1987年当時で近い年代の女優を探すと、たとえば大竹しのぶ(当時30歳)があげられる。ただ、その後「魔性の女」と呼ばれたころならともかく、30代に入った時点での大竹が、はたしてあの生々しさを出すことができるのか……。勝手に名前をあげておきながら失礼ではあるが、そんな懸念を抱いた。

本作における安藤に近い存在を、強いて過去から探すなら、ひょっとすると30〜40代の樹木希林こそふさわしいのではないか。そこで思ったのだが、樹木は映画やドラマで濡れ場を演じたことはあったのだろうか。40代ぐらいまでホームドラマが活動の中心だっただけに、そうした機会はおそらくほとんどなかったような気がする。同様の理由から、殺人犯など冷酷無比な役もあまり演じたことがないはずだ。そう考えると、さまざまな面を持つ信代を、中年期の樹木希林がどう演じるのか非常に気になるところである。終盤では信代の顔がアップになり、心中を打ち明ける場面もあるが、これなど樹木が演じたらさぞ迫力があるに違いない。

柴田亜紀:松岡茉優/岸本加世子
4番さん:池松壮亮/中井貴一
亜紀は信代の妹(ということになっている)。祖母の初枝(樹木希林)に甘えたがる一方で、小遣い稼ぎのため割り切ってJK見学店で働くなどクールな一面も併せ持った女性だ。

亜紀を昭和なら誰に置き換えられるか考えたところ、小林聡美(1987年当時22歳)や岸本加世子(同27歳)などが思い浮かんだ。本作公開時の松岡茉優の年齢(23歳)でいえば、小林のほうが近いが、雰囲気的には岸本のほうが似ているかもしれない。岸本が若手時代にドラマやCMで樹木希林やビートたけしと共演してコメディエンヌぶりを発揮したところなどは、現在、抜群のトーク力でバラエティでも活躍する松岡と重なる。若き日の岸本の歯磨き粉CMでの名フレーズ「お口のにおい、嫌われるゾ」は、きっと松岡が言ってもハマるはず!

とはいえ、1987年当時、27歳だった岸本にはJK見学店で制服姿になるのはちょっときついかもしれない。いや、そもそも1987年にはJK見学店などなかったはずなので、そこは、ランジェリーパブなどその時代に見合った風俗店という設定に変えて対処したい。

ついでに亜紀が店で出会う若い客、通称「4番さん」の役(池松壮亮)には、中井貴一(1987年当時26歳)でどうだろうか。これは、ドラマ「ふぞろいの林檎たち」(1983年)で、中井演じる大学生がよく知らずに入った風俗店で、高橋ひとみ演じる女子大生からサービスを受けるうち涙を流すというシーンがあったことからの発想である。

名子役を昭和末期に探すなら……?


柴田祥太:城桧吏/稲垣吾郎
ゆり:佐々木みゆ/安達祐実
祥太は治の息子(ということになっている)。ゆりは、治と信代が、寒空のなか家の外に出されているところを見つけて、家に連れ帰り一緒に暮らすようになった幼女である。

この映画の主人公は治ということになっているが、むしろ祥太が主人公ではないかと思う部分も多い。当初は、生活のため、父親に教えられるがままに万引きを繰り返していた祥太だが、やがてそれに疑問を抱くことになる。そこから彼は確実に成長していく。面構えまで前半と後半とでは違っているように思えるから、不思議なものだ。この難しい役を11歳(公開時)にして演じきった城桧吏には、末恐ろしさを感じてしまう。

思えば是枝監督は、「誰も知らない」(2004年)の柳楽優弥、「奇跡」(2011年)のまえだまえだの兄弟、「ゴーイング マイ ホーム」(2012年)の蒔田彩珠(「万引き家族」にも出演)など、起用する子役がことごとく演技上手で、その眼力に感心させられる。いっそ、「万引き家族」の昭和版では、祥太の役に柳楽優弥を当てようかとも思ったのだが、残念ながら柳楽は1990年生まれで、生粋の平成っ子なのだった。

できれば、昭和の末期に子役として活動し、なおかつ現在も活躍している芸能人から選びたいところだが、これがなかなか思いつかない。あれこれ考えた末に、浮かんだのが、稲垣吾郎だった。目力では城桧吏に負けるかもしれないが、聡明な顔立ちなど似ているところもあるのではないか。ただし、稲垣は14歳となる1987年当時、まだジャニーズ事務所に入ったばかり、SMAPが結成されるのはその翌年で、ドラマデビューはさらに平成元年(1989年)の朝ドラ「青春家族」まで待たねばならない。ここは“特例”ということでお許しいただきたい。

一方、ゆりの役はあっさり1987年当時6歳だった安達祐実に決まった(実際にゆりを演じた佐々木みゆも公開時6歳)。ちなみに安達が「同情するなら金をくれ」の名ゼリフを発したドラマ「家なき子」が放送されたのは1994年、彼女が13歳のときである。

脇役にも豪華キャストを配置


柴田譲:緒形直人/緒形拳
柴田葉子:森口瑤子/野際陽子
柴田さやか:蒔田彩珠/石田ひかり
治の現場の同僚:毎熊克哉/渡辺謙
北条保:山田裕貴/時任三郎
北条希:片山萌美/原田美枝子

このあたりは、ほぼ直感で選んでみた。柴田譲・葉子・さやかは、亜紀の実の両親と妹である。緒形直人(公開時50歳)演じる譲を昭和に置き換えるなら、安易ではあるが、やはり父親の緒形拳(1987年当時50歳)をあげないわけにはいかない。工事現場でケガをした治を自宅まで運んでくれた同僚には、若い頃の風貌が毎熊克哉とちょっと似てるのではないかと思い、渡辺謙(同28歳)を選んでみた。北条保・希は、ゆり=北条じゅりの両親。希を原田美枝子(同29歳)にしたのは、映画「愛を乞う人」(1998年)で原田が希と同じく子供を虐待する母親を演じていたからである。

「やまとや」店主:柄本明/殿山泰司
前園巧:高良健吾/沢田研二
宮部希衣:池脇千鶴/田中裕子
祥太がゆりと万引きを働く駄菓子屋「やまとや」の店主を柄本明(公開時69歳)に替わって演じるなら、この人しかいないと、殿山泰司(1987年当時72歳)を選んだ。大島渚監督の映画「帰って来たヨッパライ」(1968年)で、殿山がかつらをかぶってタバコ屋のおばあさんを演じていたのが強く印象に残っていたためだが、調べてみると、殿山は柄本明の父親と小学校の同級生だったと知って驚いた。柄本が俳優になってからは、共演するたび、父親は元気かなどとよく訊かれたという。

さらに、終盤で重要な役どころで登場する前園巧・宮部希衣のコンビには、沢田研二(1987年当時39歳)・田中裕子(同32歳)夫妻を当ててみた。実際に宮部を演じる池脇千鶴(公開時36歳)が映画デビュー作となる「大阪物語」(1999年)で、沢田・田中夫妻と親子の役で共演していたことからの発想だが、案外ハマるのではないだろうか。ちなみに、沢田・田中夫妻は1987年の時点ではまだ交際中で、結婚したのはその2年後である。

初枝ばあさん役はやはりこの人!


柴田初枝:樹木希林/樹木希林
最後に、晩年の樹木希林が入れ歯を外してまで演じてみせた老婆・初枝だが、これぞ樹木希林にしか演じられない役どころだろう。したがって、ここは昭和版でも樹木希林に演じてもらうしかないように思う(信代と2役になってしまうけれども)。30代にして「寺内貫太郎一家」でおばあさん役を演じていた樹木のこと、44歳だった1987年に老婆を演じたとしても何ら不自然ではなかろう。ただ、本人としてはこのときの演技に満足いかないところがあり、それがのちに自分が本当の老婆になってから、「万引き家族」をリメイクしたいと申し出るにいたった……というウソの経緯まで考えたところで、妄想を終わりとしたい。

実在する映画から昭和版「万引き家族」を探すなら…?


ただ、このまま終わるのもあんまりなので、最後に、実在する映画のなかから昭和版「万引き家族」と呼ぶにふさわしい作品を紹介しておきたい。それは、大島渚監督の「少年」(1969年)である。

タイトルどおり少年(阿部哲夫)を主人公とするこの映画は、全国各地を転々としながら、走ってくるクルマに自分でぶつかっていっては、運転していた人から示談金や見舞金をせしめる、いわゆる「当たり屋」の家族を描いたものだ。違法な手段で生計を立てる家族を描いた点は、まさに「万引き家族」と重なる。また、父親(渡辺文雄)に命じられるがままに、継母(小山明子)と当たり屋を続けるうち、少年がその行為に疑問を抱き始める点でも両作は似ている。とりわけ後半で、少年があるできごとをきっかけに自殺まで考えるも、幼い弟の泣き声を聞いて思いとどまる場面にはグッとくるものがあった。

なお、「万引き家族」が、親の年金を不正に受給していた家族が逮捕された事件に着想を得てつくられたのと同じく、「少年」もまた実際にいた当たり屋夫婦の事件を下敷きにしている。現実の事件からイマジネーションを膨らませて生み出したこれら作品は、いずれも現在、Amazonプライム・ビデオで配信中だ。今夜の「万引き家族」放送とあわせて、ぜひご覧いただきたい。(近藤正高)


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