再生可能エネルギーを巡り、各地で問題が起きています。発電時に二酸化炭素を排出しないなどのメリットがある一方で、その建設を巡っては景観や生態系への影響を心配する声が上がっているんです。

2024年8月、福島市の木幡浩市長は会見でこう語りました。

■福島市 木幡浩 市長

「山地の大規模太陽光発電の施設をこれ以上望まないことをここに宣言します」

山あいを中心に福島市では建設中も含め大規模な太陽光発電所が26か所あります。中には、吾妻山麓の中腹の山肌が露出するなど景観を損ねるケースもみられます。樹木の伐採で一部ののり面が崩落したり、豪雨で泥水が流出したりする災害発生の危険もでていますが、市として建設を止めることはできません。

一方、政府は「エネルギー基本計画」の3年ぶりの改訂に向け、議論が始まりました。この中では、技術革新が進む太陽光発電や洋上風力など「再生可能エネルギー」のさらなる導入拡大策が論点になる見通しですこれに対し5月16日、木幡市長は会見で、強い言葉で懸念を示しました。

■福島市 木幡浩 市長

「環境や景観を守る視点を盛り込みながら供給計画を立ててほしい。自治体が関与できる仕組みを作ってほしい」「地方の山、自然を破壊して供給するのはどうかと思う」

続いては「風力発電」。その建設計画を巡って今、会津若松市で問題が起きています。

■今野清楓リポート

「会津若松市の東に位置する背あぶり山には8基の風車が稼働している。周辺には今後新たな風車が建設される計画」

会津若松市の背あぶり山周辺では2015年から8基の風車が稼働しています。この場所は強い西風が吹くため風力発電に適した場所で、今後、さらに60基ほどの風車を整備する計画があります。ただ、この計画に市民からはー

■会津若松市 写真家 叶 悠眞さん

「東山地区は全国でもまれなクマタカの生息地だと」「山は人間だけのものじゃないと」

会津若松市の写真家、叶悠眞さんです。

叶さんが撮影した絶滅危惧種の「クマタカ」。

背あぶり山などの周辺では「クマタカ」のつがいが複数、確認されているといいます。

また、この地区では国の天然記念物にも指定される「イヌワシ」も確認されるなど希少な鳥類が多く生息しています。仮に風車が乱立すれば、クマタカやイヌワシが風車に衝突したり、自然環境が大きく変化してしまうのでは、と叶さんたちは心配しています。

■会津若松市 馬場 泰さん

「風力発電は環境にいいよなというくらいしか思っていなかったのですがその周りに住んでいる動物のことを考えるともうちょっと本気で考えないといけない」

■会津若松市 写真家 叶悠眞さん

「福島の中でも日本の中でもこれだけ自然の豊かな東山にあるんだと」「何とか自然を守れないかなと」

そこで、叶さんは先月、会津若松市にクマタカやイヌワシの撮影記録を提出し、生息環境の保全を求めました。これに対し、市は…

■会津若松市 室井 照平市長

「生態系について十分我々としても注視していくべきだと思いますので(風力発電の)事業者に十分配慮するように申し入れをしたところであります」

風力発電を巡ってはおととし、昭和村などで計画されていた事業が住民らの反対で中止しています。全国各地で撤回や見直しが相次ぐ中、再生可能エネルギーの促進と自然環境の保全をどう両立していくか、難しい課題です。