2019年、金融審議会の市場ワーキンググループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、65歳以上の夫婦世帯では老後の生活費が2000万円ほど不足する可能性があるという問題が示されました。そのため、若いときから老後生活に備える必要があると考える人が少なくありません。そこで、本記事では、もし40代時点での年金見込み額が12万円だった場合、65歳で実際に年金を受け取るまでどの程度の金額を蓄えればよいのかについて解説します。

老後2000万円問題とは

金融審議会では、2019年時点で長寿化に伴う老後生活費の不足問題が取り上げられました。その報告書によると、夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では、毎月約5万円(年間約60万円)不足すると予想されています。もし余命が20〜30年あった場合、生活費の不足額は1300〜2000万円になる可能性があると示されました。これが老後2000万円問題として注目されています。
 

・老後生活では約1200〜1500万円が不足する可能性

厚生労働省が発表した「令和3年簡易生命表」によると、男性65歳の平均余命は19.85歳、女性65歳の平均余命は24.73歳です。前述したように、もし年間約60万円の生活費不足があった場合、老後生活において単純計算で男性1191万円、女性約1483万8000円も生活費が不足することになります。では、具体的に老後生活ではどの程度の金額が不足する可能性があるのでしょうか。
 

老後生活に余裕を持つためには約1000〜1200万円の資金があると安心

厚生労働省が発表した2022年度の家計調査「家計収支編」によると、世帯主が60歳以上、無職世帯の1ヶ月当たりの支出額は平均24万827円(年間288万9924円)です。
 
ちなみに、単身世帯で男性65歳以上の世帯では1ヶ月当たり平均14万8918円(年間178万7016円)、女性65歳以上の世帯では1ヶ月当たり平均14万8971円(年間178万7652円)でした。
 

・40歳時点で年金見込み額が12万円だった場合、老後生活の不足金額は年間約145万円

男性の平均余命は65歳時点で19.85歳なので、生活費は約3547万2268円必要です。一方、女性の平均余命は65歳時点で24.73歳あるので、生活費は約4420万8634円かかります。
 
40歳時点での年金見込み額1ヶ月当たり12万円を、65歳から受給すると仮定すると、年間で受給する年金額は144万円です。つまり、40歳時点での老後生活の不足額は「年間平均支出額288万9924円-年間年金受給額144万円」となり、年間144万9924円(1ヶ月当たり12万827円)もあります。
 
男女別で見てみると、男性の場合は平均余命までの19.85年で年金を2858万4000円受給することになり、生活費が688万8268円の不足します。女性の場合は、平均余命までの24.73年で年金を3561万1200円受給することになり、生活費が859万7434円不足します。
 
ただし、あくまでこちらの数字は平均額から算出した金額です。そのため、生活状況によって不足額は変わります。老後生活に余裕を持たせたいのであれば、不足分約700〜900万円に300万円程度プラスして1000〜1200万円ほどの老後資金を準備するのがよいでしょう。
 

年金を満額納めたうえで資産運用などをするのもおすすめ

40歳時点での年金見込み額1ヶ月当たり12万円を、65歳から受給すると仮定した場合、老後生活で700〜900万円前後の不足になる可能性があります。老後生活に余裕を持つためには不足分より数百万円程度多く資産を用意しておくのがおすすめです。今後も年金は毎月納付し、さらに資産運用などをして老後生活を安心して過ごせるようにしましょう。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

厚生労働省 主な年齢の平均余命

厚生労働省 e-Stat 政府統計の総合窓口 家計調査 家計収支編 単身世帯 表2

厚生労働省 e-Stat 政府統計の総合窓口 家計調査 家計収支編 2人以上の世帯 表3-12

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー