「異次元の少子化対策」で実施が検討されている「児童手当」の拡充案ですが、徐々に財源も含め内容が明らかになってきています。現行制度から、新たな拡充案はどの部分が改正される見通しとなるでしょうか。   本記事では、児童手当の拡充案を現行制度と比較し、給付額がいくら変わるのかについてシミュレーションします。

児童手当の現行制度と新たな拡充案

児童手当は、子どもの年齢によって支給額が3つの区分に分かれています。それぞれの給付額は、図表1のとおりです。
 


 
児童手当の金額は、世帯主の所得でも給付額が変わります。子どもの扶養人数によって定められた「所得制限限度額」を超えると、特例給付扱いとなります。特例給付の支給額は、子ども1人あたり5000円です。
 
さらには、共働きで夫婦どちらにも収入がある場合は、所得が高い人が適用されます。特例給付に関しては、2022年10月からの改正で「所得上限限度額」が新たに設けられました。
 
「所得上限限度額」に該当すると、特例給付も受けられなくなります。対象となる「所得制限限度額」および「所得上限限度額」の目安は、図表2のとおりです。
 

 
現行制度の児童手当が、新たな拡充案でどのように改正されるか確認していきましょう。
 

新たな拡充案と手当額のシミュレーション

新たに拡充される項目は、次の3点です。


・所得制限の撤廃:「所得制限限度額」「所得上限限度額」の廃止
・支給対象を延長:高校卒業(18歳)まで月1万円の給付延長
・第3子以降の手当増額:第3子以降は3歳から小学生の支給額を月3万円に増額

これまで制限されていた所得制限が見直され、一律支給となりました。また、現行制度では中学生までの支給でしたが、拡充案では高校生まで支給となります。さらに、多子世帯への給付額を増額する方向で、月3万円を支給する見通しです。
 
児童手当の給付総額がいくらになるのか、現行制度と新制度の2パターンで比較してみましょう。子ども1人の世帯では、現行制度と新しい制度で給付総額は図表3のとおりです。
 
図表3

現行制度 新制度
3歳未満 1万5000円×12ヶ月×3年=54万円 1万5000円×12ヶ月×3年=54万円
3歳以上から
小学生修了前
1万円×12ヶ月×9年=108万円 1万円×12ヶ月×9年=108万円
中学生 1万円×12ヶ月×3年=36万円 1万円×12ヶ月×3年=36万円
高校生 1万円×12ヶ月×3年=36万円
給付総額 198万円 234万円

筆者作成
 
現行制度と比較すると、給付総額は36万円多くなりました。子どもが3人いる世帯は図表4のとおりになります。
 


 
第3子の給付総額で比べると、約200万円の差が生じました。給付額は現行制度より増額となりますが、制度を継続するための財源が必要です。財源がいくら必要なのか、確認してみましょう。
 

財源の確保

児童手当を拡充するためには、現行制度と比較して多額の予算が必要になります。必要な予算は、以下の金額になると見込まれています。


・所得制限の撤廃:1500億円程度
・対象年齢の拡大:4000億円程度
・多子世帯への支給増額:数兆円規模

政府は6月の「骨太の方針」で財源案も含めて児童手当のあり方をまとめる方針です。どのような制度設計で児童手当が拡充されるのかは未定ですが、16歳から18歳への扶養控除の廃止の可能性も浮上しています。子育て世帯が恩恵を実感できる制度となるか注目が集まります。
 

出典

内閣府 児童手当制度のご案内
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー