賃貸にお住まいの年金受給中の方が、戸建ての購入を希望されることがあります。   毎月賃料を支払うことがもったいないと感じられたり、家賃を支払い続けられるかどうかを不安に感じたり、さまざまな思いを感じられることでしょう。   今回は、年金18万円を受給中の夫婦が、中古の戸建て住宅を購入することには、何か問題はあるかどうかについて検討します。賃貸物件に住み続ける場合とも比較して解説しますので、参考にしてください。

いくらの戸建てなら無理なく購入できる?

年金が18万円で、貯金が2000万円ある夫婦が、中古の戸建てを購入する場合に、金額がいくらぐらいまでならば、無理なく購入ができるかを考えてみましょう。
 
毎月の住宅ローンの返済以外にも、食費や光熱費などの生活費が必要です。これらの費用を考慮したうえで、住宅購入後の生活が成り立つかどうかを判断する必要があります。
 
ローン返済の目安は、返済額が収入に占める割合(返済負担率)を考慮しなければなりません。とくに年金収入のみの場合は、より慎重になる必要があるでしょう。
 
一般的に返済負担率は、月収の25%以内に収めることが望ましいとされています。しかし収入が年金に限られる場合は、より低く設定することが、無理なく返済できる目安となるでしょう。
 
年金収入が合わせて月18万円で、20%を返済負担率とすると月の返済額は3万6000円です。
 
また、ほとんどの住宅ローンは、完済時の年齢が80歳未満に設定されているため、80歳までに支払えるローンの金額と、頭金として用意できる金額の合計が、購入可能な金額の上限になります。
 
例えば、金利を含めて14年間、毎月3万6000円支払う場合でシミュレーションすると、購入可能金額の目安は550万円程度です。貯金2000万円のなかから1000万円を頭金に充当すると、購入可能額の目安は1481万円になります。(金利は2024年3月の変動金利0.298%で計算)
 

賃貸と戸建ての比較

中古の戸建てを購入してローンを返済する場合と、賃貸の家賃を払う場合を比較してみました。
 

家賃とローンの比較

2018年(平成30年)の「住宅・土地統計調査」によると、世帯主が65〜69歳の夫婦のみの世帯が住む賃貸住宅の家賃の平均は、7万6245円です。
 
住宅ローンの返済を月3万6000円にする場合のおよそ倍の金額となり、この面だけをみると、購入したほうが得ということになります。
 

中古戸建ての注意点

一方で戸建て住宅には、年数がたつにつれて、定期的なメンテナンスのための維持費がかかります。
 
さらに中古住宅の場合は、築年数によってはすぐに、屋根や外壁の塗装、水回りの修繕・交換、耐震補強などの大規模な修繕が必要になってくるでしょう。物件によっては、こうしたリフォームが前提になっていることもあります。
 
そのほかにも中古住宅では、ローンの審査が厳しいことや、固定資産税や都市計画税の支払いが発生することも考えなくてはなりません。
 

購入するならば、まずは信頼できる専門家に相談

年金生活者が中古住宅を購入することは、返済負担率を無理のない範囲にすれば、決して無謀なことではないでしょう。
 
しかし、家賃よりも毎月のローン返済額のほうが安くなるからといって、一概に、購入するほうが得であるとも言い切れない面があります。その理由は、戸建て住宅には賃貸にはない維持費がかかるからです。
 
また貯金が減ることとなり、病気などによる予期せぬ出費への備えが十分でなくなる可能性もあります。後悔しない住み替えのためには、購入する前に、信頼のおける専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
 

出典

総務省統計局 政府統計の総合窓口(e-Stat) 平成30年住宅・土地統計調査 / 住宅及び世帯に関する基本集計 全国・都道府県・市区町村 借家の家賃・間代 表番号 130 家計を主に支える者の年齢(14区分),家族類型(8区分),住宅の所有の関係(4区分),建て方(4区分)別世帯の1か月当たり家賃(10区分)別借家に居住する主世帯数及び1か月当たり家賃−全国
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー