障害等級1級・2級・3級の障害があるケースを対象とした障害厚生年金は、報酬比例で計算されます。しかし、一定の最低保障がされて支給される場合があり、最低保障額は、2024年度の額は2023年度の額より上がますが、68歳以下と69歳以上で異なるのでしょうか。   今回も、2024年度の68歳以下の人については「新規裁定者」(1957年4月2日以降生まれ)と「68歳既裁定者」(1956年4月2日〜1957年4月1日生まれ)、69歳以上の人については「69歳以上既裁定者」(1956年4月1日以前生まれ)という用語を用いて解説します。

障害厚生年金の計算

障害厚生年金は、障害等級1級・2級・3級に該当したケースを対象に、過去の厚生年金加入記録で計算された報酬比例制の年金です。以下、【図表1】で見てみましょう。
 


 
障害等級1級は、報酬比例の年金として計算された額の1.25倍で算出されます。また、1級・2級の場合は、第1回で取り上げた配偶者加給年金が加算されることがあります。報酬比例となる障害厚生年金自体は、2024年度は新規裁定者・68歳既裁定者と69歳以上既裁定者で異なっています。
 

障害厚生年金にある最低保障額とは

障害等級3級の場合は障害厚生年金のみで、1級・2級を対象とする障害基礎年金は支給されません。また、配偶者加給年金も加算されません。その結果、年金額が少なくなってしまうため、3級の障害厚生年金については最低保障額が設けられています。
 
障害基礎年金(2級)の額の4分の3がその最低保障額とされています。2023年度は、当時の新規裁定者(1956年4月2日以降生まれ)は79万5000円が障害基礎年金(2級)の額だったため、その4分の3である59万6300円(※100円未満四捨五入)が最低保障額となり、一方、当時の既裁定者(1956年4月1日以前生まれ)は79万2600円が障害基礎年金(2級)の額だったため、その4分の3である59万4500円(※100円未満四捨五入)が最低保障額となりました。つまり、生年月日によって異なっていました。
 
2024年度についても、第1回で取り上げたとおり、障害基礎年金(2級)の額が新規裁定者・68歳既裁定者の81万6000円と69歳以上既裁定者の81万3700円に分かれているため、その4分の3の最低保障額についても分かれます。新規裁定者・68歳既裁定者の最低保障額は61万2000円、69歳以上既裁定者の最低保障額は61万300円です(※それぞれ100円未満四捨五入)。
 

69歳以上の最低保障額対象者は少ない

もっとも、現実的に69歳以上の61万300円の最低保障額を受ける人はあまりいないと考えられます。というのは、3級の障害厚生年金を受けてきた人が65歳になると、老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)を受給する権利が発生するようになり、3級の障害厚生年金と当該老齢年金、いずれかの選択になるからです。
 
つまり、老齢年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)か障害年金(3級の障害厚生年金)、どちらか片方を選択し、もう片方は支給停止となります(【図表2】)。
 


 
3級の障害厚生年金にたとえ最低保障があっても、老齢年金は基礎年金と厚生年金の2階建てであることから、老齢年金の合計額が3級の障害厚生年金の額より高くなることが多いでしょう。
 
その結果、65歳からは老齢年金を選択して、障害厚生年金が支給停止となるケースが多くなります。そうなると、最低保障額で受給する場合、61万300円となる人は少ないと考えられ、65歳未満で61万2000円となる人がほとんどとなるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー