駐車場の契約者は自分であるにもかかわらず、他人が許可なく駐車しており、イライラしたり、困ったりした経験がある方もいるでしょう。   しかし、相手が悪いとはいえ実力行使に出ると、思わぬ事態を引き起こしてしまうかもしれません。実際、契約駐車場に違法駐車していた車にタイヤロックをかけ、修理代として5万円請求されたケースもあるようです。   そこで今回は、違法駐車された際の適切な対処方法について解説します。

日本では自力救済が原則認められていない

自力救済とは、法律上の手続きを踏まず、自力で権利を実現する行為のことです。違法駐車に対する制裁として、タイヤロックをかけることは自力救済に該当する可能性もあるようです。
 
日本では、自力救済は禁止されているといっても過言ではありません。
 
なぜなら、1965年12月7日、自力救済について最高裁判所が「自力救済は違法な侵害により現状を維持するのが不可能、または緊急でやむを得ない特別な事情がある場合のみ認められる」と判断しているためです。
 
つまり、よほどの事情がない限りは、自力救済が認められないのです。
 

相手の車に傷がつくと損害賠償されることも

違法駐車にタイヤロックした際に、相手の車に傷がついた場合は損害賠償される場合もあります。損害賠償とは、不正行為や違反などによって生じた損害に対する補償を求める行為のことです。
 
今回のケースでは、自力救済でタイヤロックした行為が不正行為に該当する可能性があります。タイヤロックが不正行為と認められた場合、相手は損害賠償できる権利を得られます。
 

その他に考えられる刑事上のリスク

タイヤロックで相手の車を傷つけた場合は、損害賠償につながるリスクがあると説明しました。タイヤロック以外の自力救済を行った場合、一体どのようなリスクがあるのでしょうか。
 
例えば、相手の車に注意書きを貼り付けた場合を考えてみましょう。問題のある行為に思えないかもしれませんが、テープで注意書きをフロントガラスや車体に貼り付けた場合、テープを剥がす際にガラスコーティングや塗装が取れてしまうと器物損壊罪に該当する可能性があります。
 
その場合、30万円以下の罰金が課されることになるでしょう。
 

法律に従って適切に対処しよう

違法駐車への対処法として有効なのは、不動産会社に連絡を取り、問題解決の仲介役を担ってもらうことです。また、運転手を見つけて、直接話をするのも効果的でしょう。
 
ただし、その際は相手の車に触らないように注意する必要があります。違反駐車に対して、タイヤロックや注意書きの貼り付けといった自力救済に該当するおそれのある行為は行うべきではありません。場合によっては、器物損壊などの罪に問われてしまう可能性があります。
 
法律を守った適切な対処を取ることで、無駄なお金を支払うことなく、違法駐車の問題を解決できるでしょう。
 

出典

裁判所 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集  昭和38(オ)1236

裁判所 主文
デジタル庁 e-Gov法令検索 明治四十年法律第四十五 刑法 第三十六章 窃盗及び強盗の罪 第二百三十五条
デジタル庁 e-Gov法令検索 明治四十年法律第四十五 刑法 第四十章 毀棄及び隠匿の罪 第二百六十一条
デジタル庁 e-Gov法令検索 明治四十年法律第四十五 刑法 第五章 不法行為 不法行為による損害賠償 第七百九条
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー