扶養控除による節税など、親族を扶養することで恩恵が受けられる扶養制度ですが、仕送り額を減らしてしまうと扶養から外れてしまう可能性があることを知っていますか。   本記事では、そもそも扶養とは何か、扶養に入るための要件、また「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」についてそれぞれ詳しく解説します。

扶養とは?

扶養とは、主に生計を担っている人が自分の収入では生計を立てられない親族を経済的に援助する制度のことです。
 
扶養には「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」の2種類があります。扶養している人のことを「被保険者」と呼び、扶養を受けている人のことを税制上では「扶養親族」、社会保険上では「被扶養者」と呼びます。
 
社会保険上の扶養や税制上の扶養に入るには、それぞれ要件があります。要件を満たした親族が扶養に入っていると、税金の控除を受けられたり保険料の負担を減らせたりと、扶養している側も恩恵が受けられます。
 
ただし、扶養に入る要件は保険組合ごとに異なり、要件を満たしていない場合は扶養から外れて恩恵を受けられなくなるので注意しましょう。
 

仕送りを減らすと扶養から外れるの?

被扶養者に仕送りなどの金銭的な援助をしている場合、仕送り額を減らした場合に必ず扶養から外れるというわけではありません。
 
社会保険上の扶養や税制上の扶養に入るには、それぞれで定められている要件を満たしている必要があり、仕送り額を減らしたとしても要件を満たしていれば扶養に入れます。それぞれの要件を解説するので確認してみましょう。
 

「社会保険の扶養」の要件

社会保険の扶養に入るための要件は次の通りです。
 

・被扶養者本人が社会保険に加入していないこと
・被扶養者本人の収入が年間130万円未満であること
・後期高齢者医療制度に加入していないこと

 
また、別居している親族を扶養に入れるには「仕送りなどの金銭的な援助をしていること」や「被扶養者本人の収入が援助金よりも少ないこと」も要件に挙げられます。
 
そのため被扶養者がバイトなどをしている場合、被扶養者本人の収入よりも仕送り額が少なくなってしまったり、毎月の仕送り額が条件を満たしていなかったりすると、扶養から外れてしまう可能性があるので注意してください。
 
社会保険の扶養から外れた場合、健康保険料の支払いが必要となります。生活状況や仕送り額などを変更する場合には、事前に健康保険組合のほうで、扶養の有無で異なることや要件などを確認しておくことが大切です。
 

「税制上の扶養」の要件

税制上の扶養とは、対象となる親族を扶養した場合に納税者(被保険者)の所得から扶養控除を受けられる制度です。
 
税制上の扶養に入るには、扶養親族本人の所得金額が年間48万円以下(給与収入の場合は103万円以下)であることが要件となります。
 
所得から控除される金額は、扶養親族の年齢や同居の有無によって異なり、控除金額は以下の通りです。
 

・16歳以上なら38万円
・19歳以上23歳未満なら63万円
・70歳以上なら58万円(同居以外は48万円)

 
70歳以上で病気の治療のために長期にわたって入院となった場合に関しては同居としてみなしますが、老人ホームなどに入所している場合はその場所が居所となるため同居にはなりません。
 
また、所得金額が48万円を超えた場合は扶養控除の対象外となり、扶養親族本人に所得税や住民税の納税義務が発生するので注意してください。所得控除の有無で税額が大きく異なることもあるため、扶養親族がバイトなどで収入がある場合には、収入金額と扶養の要件をよく確認しておきましょう。
 

まとめ

扶養とは、主に生計を担っている人が自分の収入では生計を立てられない親族を経済的に援助する制度のことで、「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」の2種類があります。
 
社会保険上の扶養に入るには「被扶養者本人が社会保険や後期高齢者医療制度に加入していない」ことや、「被扶養者本人の収入が130万円以下」かつ「被扶養者本人の収入が援助金よりも少ない」ことが要件です。
 
また、税制上の扶養に入るには「16歳以上、かつ扶養親族の所得が48万円以下(給与収入なら103万円以下)」である必要があります。ほかにも保険組合によって要件が異なることもあるため、扶養の恩恵をしっかりと受けるためにも、要件や内容についてはきちんと組合に確認しておくことが大切です。
 

出典

全国健康保険協会 被扶養者とは?
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
国税庁 No.1180 扶養控除
 
執筆者:梅井沙也香
FP2級