友人が繰り上げ返済をしていると聞くと、「自分も繰り上げ返済した方がいいのかな」と気になる人は多いでしょう。確かに住宅ローンを完済できると心にゆとりが生まれると考えられますが、では、そのために繰り上げ返済することは、普通に返済するよりもお得なのでしょうか。   本記事では、繰り上げ返済の仕組みや利息軽減効果について解説します。ぜひ参考にしてください。

そもそも繰り上げ返済とは

繰り上げ返済は、毎月の返済額と別に、まとまった額を返済し、借入総額を予定よりも早く減らす返済方法です。この繰り上げ返済の大きな特徴は、返済の金額を「元本の返済のみに充てることができる」点にあります。つまりその分、将来支払うべき利息を少なくできるため、住宅ローンの総支払い額を軽減することが可能です。
 
なお、繰り上げ返済には「全額繰り上げ返済」と「一部繰り上げ返済」の方法があります。
 
「全額繰り上げ返済」は住宅ローン返済期間が終了する前に、全ての残高を繰り上げて完済してしまう方法です。「一部繰り上げ返済」は完済ではありませんが、返済期間中にまとまった金額を繰り上げて返済するもので、次の2つの方法があります。
 

返済期間短縮型

毎月の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなる返済方法です。短縮された期間分の利息を軽減する効果があります。利息軽減の効果は、次に紹介する返済額軽減型より大きいです。
 

返済額軽減型

返済期間は変わりませんが、毎月の返済額が減る返済方法です。全期間の元本の一部を前倒し返済できるため、それに応じて支払う利息総額が減ります。返済期間短縮型の方が利息軽減効果は大きいですが、返済額軽減型は毎月の負担額を軽減することができます。
 

繰り上げ返済の効果

例として、借入額3000万円、返済期間35年、全期間固定金利1.5%の条件で住宅ローンを組んでいるケースにて、繰り上げ返済の効果を確認してみます。
 
住宅ローン控除の適用期間である13年が経過した後に300万円の繰り上げ返済を実施したと仮定し、繰り上げ返済は期間短縮型を選択したとすると、繰り上げ返済による支払利息の軽減額は105万5400円です(繰り上げ返済に係る諸費用は考慮していません)。
 
なお、繰り上げ返済による総支払い額の軽減効果は、借入金利が高いほど大きくなります。
 

繰り上げ返済の注意点

繰り上げ返済を行う際の注意点を紹介します。
 

手元資金が大きく減少する

一度返済したお金を手元に戻すことはできないため、繰り上げ返済の実行は慎重に行う必要があります。繰り上げ返済後に予期せぬ大きな支出があった場合、とたんに家計が圧迫される可能性があります。
 

団体信用生命保険(団信)が消滅する

団信は、住宅ローン債務者が返済期間中に死亡または高度障害状態になってしまった場合などに、その保険金によって住宅ローン残高が完済される保険です。仮に団信の保険金が支払われることになった場合、繰り上げ返済を行わずに手元にお金を残しておいた方が金銭的メリットがあるといえるでしょう。
 

住宅ローン控除の適用を受けられなくなる

住宅ローン控除を受ける条件の1つが、返済期間が10年以上であることです。仮に期間短縮型の繰り上げ返済を行い、返済期間が10年を下回る場合には、住宅ローン控除の適用を受けられなくなります。
 
また、住宅ローン控除の控除額は、年末の住宅ローン残高に対して控除率をかけて計算されます。そのため、繰り上げ返済に伴うローン残高の減少により、控除額も減少してしまいます。
 

まとめ

繰り上げ返済は金銭的メリットが存在しますが、注意点も存在します。住宅ローン控除や団信を念頭に入れた上で、繰り上げ返済を検討してみてください。
 

出典

国土交通省 住宅ローン減税
 
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート