2024年、バブル期以降34年ぶりに日経平均株価が過去最高値を更新しました。しかし、株価が過去最高値を超えたにもかかわらず、国民の暮らし向きによい兆しは見えていません。   そこで今回は、なぜ株価が高いにもかかわらず景気が好転しないのか、その理由について解説します。

株価と景気はイコールではなくなった

一説では、高度経済成長期の株高と今回の株高は性質が異なるといわれています。1955〜1973年まで続いた高度経済成長期による株高は、日本の経済的発展が急激に進んだことが主な要因でした。
 
しかし、今回の株高は数字のインパクトに対し、それほど経済の発展が進んだとはいえません。確かに名目GDP(国内総生産)は過去最高の591兆円に達し、物価と賃金も数値上は上昇しました。それでも国民の生活に反映されていない理由は、格差が広がったためといわれています。
 
例えば、賃上げの多くは大企業が占めており、中小企業は賃上げできていないところがほとんどです。資本力の大きい大企業だけが賃金を上げたため、数字だけで見ると全体で賃上げが成功したように見えるのです。
 
このように、昨今の株高は昔のように日本企業全体の経済成長を伴っておらず、限定的な成長にとどまっています。そのため、現代の株価は景気を反映しているとはいえないでしょう。
 

株高の正体

次に、日経平均が過去最高値に達した理由について解説します。経済的実体が伴っていないにもかかわらず株価が上がったのは、コロナ禍と世界情勢が深くかかわっています。
 

余ったお金が日本に流れた

コロナ禍のなかで、世界の主要国は大規模な金融緩和を実施しました。コロナによる経済的な打撃を回復するために実施されましたが、結果として市場に大量のお金が余る事態が起きることになりました。
 
今回の株高は日本株に人気が集まっていることを意味しますが、一方でお金が余っているから日本に資金が流れたともいえるでしょう。
 

海外が日本に注目している

近年の海外では、日本経済の将来的な成長を見越して株式を買う動きが活発化しています。東京証券取引所が実施した株式分布状況調査によると、2022年の日本株の保有割合は外国法人等が30%前後という結果がでています。
 
また、円安の加速も海外からの買いを後押しする要因です。海外目線で日本は「お買い得」な状態にあるため、個人や機関にかかわらず多数の投資家が日本株を買っているのです。そのため、現在の株高は海外投資家たちによって成り立っているともいえるでしょう。
 

2020年から日銀が日本株を買い続けている

日経平均株価が上昇した理由の1つとして、日銀による日経ETFの買い支えも関係しています。日経ETFとは、日経平均株価の動きに合うよう運用する投資信託を指します。2010年以降、日銀は不定期で日経ETFを購入しており、結果として日経平均株価を下支えしています。
 
特に株価が低迷したコロナ禍では、日銀による日経ETFの買い入れが何度も起きています。2022年11月末時点の日経ETFの保有総額は、51兆8494億円です。
 
このように、日経平均株価がここまで上昇したのは、日銀による買い支えの影響も少なからずあると考えられます。
 

株価は景気の目安ではなくなった

「現在の株高は景気の実態を反映したものではない」といった意見をもつ人は少なくありません。数字上は最高値を更新していますが、国民の生活には大して影響していないのが現状です。
 
今の株高はコロナ禍で水増ししたお金が日本に集中しているため、実質的に昔の高度経済成長期を超えたとはいえないでしょう。
 

出典

株式会社 東京証券取引所 2022年度株式分布状況調査の調査結果について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー