国内でも海外においてもラーメンはファンが多い傾向にあるようです。日本には数多くのラーメン店があり、道路を走っているとあちこちで看板やのれんを見かけます。   しかし最近では、いわゆる「1000円の壁」を理由に閉店が続いているといわれています。「1000円の壁」とは、「ラーメンに1000円以上の料金は付けにくい」という考え方です。本記事では、1000円の壁に関連して、ラーメンに対する一般的な消費者意識やラーメン店の現状をご紹介します。

ラーメンにかける費用は1000円未満が主流

独立行政法人中小企業基盤整備機構がまとめた市場調査データによると、20代〜60代以上の1000人が回答した「ラーメンにかける費用」は表1の通りです。
 
表1

ラーメンにかける費用 人数
700円未満 103人
700〜1000円未満 657人
1000〜1500円未満 195人
1500〜2000円未満 10人
2000〜3000円未満 13人
3000〜5000円未満 7人
5000円以上 0人
利用したことがない 15人
合計 1000人

※独立行政法人中小企業基盤整備機構「市場調査データ ラーメン店(2023年版)」を基に筆者作成
 
700〜1000円未満が、657人と圧倒的に多いことが分かります。1000円を超える値段で食べる人もいますが、1000円未満の人数と比較すると明らかに少ないといえます。
 
この657人の回答者が「ラーメンに1000円以上は絶対かけられない」と考えているのか、それとも700〜1000円未満のラーメン店が多いためにそう回答しているかは分かりません。いずれにしても現状として、ラーメンを「1000円以下で食べられる」「1000円以下なら食べる」料理として捉えている人は、少なくないと思われます。
 

ラーメン店の倒産が相次いでいる

株式会社帝国データバンクの「『飲食店』倒産動向調査(2023年)」によると、2023年の飲食店倒産件数は「768件」でした。前年比で1.7倍の件数です。
 
倒産した店の内訳を業態別に見ると、居酒屋が204件と最多でした。それに続いて、ラーメン店などの「中華・東洋料理店」が109件報告されており、いずれも過去最多を更新しているようです。
 

ラーメン店倒産の原因は「1000円の壁」?

ラーメン店の倒産が相次いでいる原因の一つとして、物価高や価格転嫁の問題が挙げられるでしょう。
 
前述の倒産動向調査によると、仕入価格の上昇度を示す「仕入価格DI」は、2022年以降80を超える割合で推移しています。それに対して、販売価格への転嫁上昇度を示す「販売価格DI」は、それよりも低く60〜70前後での推移でした。つまり仕入価格の上昇分を、そのまま販売価格に転嫁できていない状況がうかがえます。
 
店側としては、「値段を上げると客離れが起きる」と考えるのかもしれません。本当は1000円を超える値段を付けたいのに、1000円の壁を意識するあまり、十分な値上げができないでいる可能性は否定できません。
 
冒頭でご紹介した市場調査データでは、「ラーメン店の利用基準」について「価格や量などのお得感」と回答した人が2番目に多くいました。この結果からも、客とラーメン店双方が値段に敏感である状況を推察できるでしょう。
 

1000円の壁はラーメン店の障壁になりえる

物価高や、1000円の壁も意識した価格転嫁の問題が、相次ぐラーメン店の倒産要因になっている可能性は否定できないでしょう。もちろんラーメン店により事情は異なります。単に、集客に失敗したのかもしれませんし、ライバルとの競争に負けたのかもしれません。
 
とはいえ、値上げの難しさを感じて経営に問題を抱えるラーメン店がある可能性も大いに考えられるでしょう。
 

出典

独立行政法人中小企業基盤整備機構 市場調査データ ラーメン店(2023年版)
株式会社帝国データバンク 「飲食店」倒産動向調査(2023 年)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー