配偶者の扶養に入るため、年収が106万円や130万円を超えないように働き方を調整している人は少なくありません。勤務先が1社なら調整も簡単ですが、2社以上であればどうでしょうか?   本記事では、2社で働いている場合に労働時間は通算されるのか? どちらの会社に残業代の支払い義務があるのか? 2社で働いている人が扶養範囲内の年収に抑えるための注意点や知っておきたい制度について解説します。

2社で働いている場合の労働時間や残業代はどうなる?

労働基準法には「労働時間は事業場を異にする場合においても通算する」とあります。そのため2社で働いた時間の合計が法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える場合は残業代(割増賃金)が発生することになります。
 

どちらの会社が残業代を払うのか?

一般的には、2社の労働時間を積算した場合に法定労働時間を超える所定労働時間を定めた労働契約を後から締結した事業所が、残業代を支払う必要があります。
 
例えば、A事業所で6時間勤務しており、新たにB事業所で4時間の労働契約を結んで実際に通算10時間労働した場合、B事業所に残業代を支払う義務があります。
 
労働時間はA事業所の方が長いのですが、B事業所は法定労働時間の8時間を超えることが分かっていながら労働契約したため、B事業所に割増賃金の支払い義務が発生するのです。
 

1日8時間超だけでなく、1週40時間を超えても残業代が発生する

1日の労働時間が8時間以内でも、1週間の労働時間が2社合計で40時間を超えた場合も残業代は発生します。
 
A事業所で月曜〜金曜まで毎日8時間働いている労働者が、土曜日にB事業所で3時間労働する契約を結べば、B事業所での3時間は1週40時間を超えますので、B事業所に割増賃金の支払い義務が発生します。
 

残業代により扶養を外れる可能性がある

このように2社以上で働いており、繁忙期や出勤日が重なるなどの原因で勤務時間が1日8時間または1週40時間を超えると、残業代が発生します。その結果、収入が増えて配偶者の扶養から外れる可能性も考えられます。
 
会社は労働者の自己申告などで他社での労働時間を把握し、自社での労働時間と足し合わせることが必要なため、労働者も各勤務先での労働時間を正確に把握し、それぞれの会社に報告するように求められています。
 
思わぬ残業代が発生して収入が多くなると、扶養範囲内の収入に収めようと労働時間を過少申告する場合も考えられますが、給与が増えないどころか、労働時間を正確に申告しなかったことを会社側から指摘される場合もあるので、絶対に止めましょう。
 

年収の壁を超えてしまったらどうすればよいのか?

2023年から、年収の壁・支援強化パッケージとして繁忙期などで労働時間が増え、収入が一時的に上がった場合でも、事業主がその旨を証明することで引き続き被扶養認定が可能となる仕組みが始まりましたので、この制度を活用するのが良いでしょう。
 
また年収106万円の壁を超えて社会保険に加入することになっても、手取りが減らないような仕組みを会社が設けると、国から会社に助成金が支給されます。会社側にもメリットがあることを訴えて、手取りが減らないのであれば、扶養から外れて社会保険に加入するのも良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー