2024年7月から一万円札、五千円札、千円札が新しくなります。新札が登場するタイミングではさまざまな手口の詐欺が発生するのではないかと懸念されています。例えば「『新札に変わるとこれまでのお札は使えなくなるので回収します』と旧札をだまし取られる」などが考えられるでしょう。   本記事では元警察官の筆者が、旧札はいつまで使えるのか、新札切り替え時に起こる可能性のある詐欺の手口と対策について説明します。

旧札はいつまで使える?

これまで使われていた一万円札、五千円札、千円札が2024年7月から新しい紙幣に変更されます。一万円札は福沢諭吉と鳳凰像のデザインから、渋沢栄一と東京駅丸の内駅舎に変更されるなど、見た目が大きく変わります。
 
「新札に切り替わると旧札は使えなくなるのでは?」と不安に思う人もいるかもしれません。しかし、一度発行された紙幣は、法律による特別な措置がとられない限り使えなくなることはありません。実際に現在でも、明治時代に発行された武内宿禰の1円札でも1円として使えます。
 
法律による特別な措置は明治以降に3回しか行われておらず、しかも最後に実施されたのは1953年(昭和28年)の1円未満の小額通貨の整理です。そのため、新札が登場しても当分の間、旧札も問題なく使えるでしょう。
 

新札切り替えで想定される詐欺

2024年7月から行われる新札切り替え時にはさまざまな詐欺が発生するのではないかと警戒されています。例えば、自宅に電話がかかってきて「銀行協会のものです。7月から旧札が使えなくなるので交換しています」などと嘘をついて自宅を訪問し、旧札をだまし取る手口が考えられます。
 
また、「新札切り替えで法律が変更され、古い口座が使えなくなったから切り替えが必要です。キャッシュカードも変更する必要があります」などと嘘をついて、キャッシュカードを手に入れて、口座から現金を引き出す手口などもあるでしょう。
 

詐欺から身を守るには?

今説明した手口は、どこかで聞いたことがあるような気がしませんか? これらは特殊詐欺の手口で、キャッシュカード詐欺盗(被害者をだましてキャッシュカードを盗み取る手口)を基本とした派生パターンです。
 
こうした特殊詐欺は話だけを聞いていると「こんな手口になぜだまされるのだろう?」と思うかもしれません。しかし、犯行グループのやり方は非常に巧妙です。例えば、電話をかけるかけ子も複数人の役割分担がされており、入念に準備されたシナリオに沿って電話をかけるため、最初は疑っていても徐々に「本当なのでは?」と思うように仕向けられます。私は警察で特殊詐欺を扱う係だったことがあるのですが、被害者はみな「自分がだまされるとは思ってなかった」と口をそろえていました。
 
被害に遭わないためには、知り合い以外の電話には出ないことが有効です。それが難しい場合は、普段と異なる電話がかかってきた際に、必ず誰かに相談するようにしましょう。
 
特殊詐欺の犯人は、被害者が周りに相談する時間をつくらせないよう、あの手この手で「今すぐに」お金をだまし取ろうとします。しかし、電話の内容がお金に関わる場合は、すぐに行動するのではなく誰かに必ず相談することが大切です。
家族、友人、警察、市役所、取引先の金融機関などに相談すれば、冷静な第三者からの意見を聞け、詐欺かどうかが分かるでしょう。
 

まとめ

2024年7月から新札が登場しますが、旧札が使えなくなることはありません。もしも、「旧札が使えなくなる」などの電話がかかってきたら、特殊詐欺だと考えてよいでしょう。

特殊詐欺は、今回の新札のように旬の話題を取り入れるなど新しい手口を次々と考え出します。特殊詐欺被害から身を守るには、知らない電話には出ないことや、身近な誰かに相談することが重要です。
 

出典

日本銀行 これまでに発行されたお札のうち、現在使えるお札はどれですか? 古いお札を持っていますが、現在も使えますか?
 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士