おひとりさま(60歳男性)の老後の不安

文蔵さん(仮名、60歳)は専門商社の部長で、10年前に妻を失くして以来、1人暮らし。娘は米国の大学を出て今はオランダに住んでいます。出身は九州地方で、地元には妹が2人おり、両親はどちらも介護施設に入居中です。車が好きなので、ドライブを兼ねて週末はよく同僚や同級生とゴルフをしています。

で紹介した通り、文蔵さんは思わぬ入院を経験しました。普段は自由な1人暮らしを楽しんでいる文蔵さんですが、いざというときに手を貸してくれる人がいないことを痛感させられました。マンションの管理人やゴルフ仲間が助けてくれたことは幸運だったと思う一方で、もっと確実な備えをしておかないとこの先が心配です。

●文蔵さんが経験した“想定外の危機”とは… 

娘はオランダに住んでいて家族もいるため、日本に戻って世話をしてもらうことは期待できません。妹たちも本当に困ったときは助けてくれるはずですが、両親のことを任せきりにしている負い目もあって、なかなかそのような話を持ち掛ける機会が作れなさそうです。

身元保証事業者との出会い

先日、入院騒ぎとなった腰の治療のために病院に行った文蔵さんが何の気なしに待合室のパンフレットを眺めていたところ、「家族代わりのサポートを提供します」と書かれたものを見つけました。読んでみたところ、入院するときに書類に身元保証人としてサインをしてくれたり、医師の説明に同席してくれたり、退院するときにも手伝ってくれるなど、まさに文蔵さんが以前困ってしまったことをサポートしてくれるサービスのようです。

家に帰ってからインターネットで検索してみると、同じようなサービスを提供している事業者がたくさんいることが分かりました。決して安い金額ではないですが、払えないというほど高額でもなく、安心のために契約しておくのは良さそうに思えます。どこと契約すべきなのか詳しく調べて検討を始めましたが、どうも内容や値段がまちまちのようで、どこがいいのかよく分からなくなってしまいました。また、大きな事業者が過去に倒産したという記事も発見し、信用してもいいのか不安になってきました。

身元保証事業とは

入院や入所のときに「身元保証人(身元引受人)」としてサインしてくれ、その他にも家族代わりとしてさまざまなサポートをする新たなサービスが近年増えており、「身元保証事業(身元保証等高齢者サポート事業)」と呼ばれています。

この事業には決まった定義はまだ存在せず、監督官庁もありません。一度調査を実施した消費者委員会は、高齢者等に対し、以下のうち少なくとも身元保証サービスまたは死後事務サービスとして掲げたものを提供する事業を「身元保証等高齢者サポート事業」と整理しています。

1.身元保証サービス
・病院・福祉施設等への入院・入所時の身元(連帯)保証
・賃貸住宅入居時の身元(連帯)保証

2.日常生活支援サービス
​・在宅時の日常生活サポート (買い物支援、福祉サービスの利用や行政手続等の援助、日常的金銭管理等)
・安否確認・緊急時の親族への連絡等

3.死後事務サービス
・病院・福祉施設等の費用の精算代行
・遺体の確認・引き取り指示
・居室の原状回復、残存家財・遺品の処分
・ライフラインの停止手続き
・葬儀支援等

簡単にいうと、入院・入所・入居の際に「身元保証人」「身元引受人」になるのが身元保証サービス、亡くなった後の事務手続きを行うのが死後事務サービスで、少なくともこのうちどちらかをメインのサービスとして掲げているのが身元保証等高齢者サポート事業(以下、身元保証事業)というものです。

身近にこういったことを頼める人(主に家族や親族)がいない人が増えており、本人が困るのはもちろん、受け入れる医療機関や介護施設なども困ってしまうことがあるので、それらを解決するための手段として、近年このサービスが注目されています。特に資格や大掛かりな設備が必要でないこともあり、簡単に参入できるビジネスだと考えられている一面も否めません。

介護保険制度や成年後見制度といった公的な制度は、利用するための手続きに長い時間を要しますし、文蔵さんのようにまだ若く、普段健康で判断力に問題がない人はそもそも利用ができません。また、制度の中で提供できる支援の範囲は限定されています。

一方、民間のサービスである身元保証事業は、契約を結べば誰でも利用が可能ですし、支援の内容も公的制度に比べると柔軟です。そのようなこともあって広がりを見せている身元保証事業ですが、利用にあたってはいくつか留意すべきことがあります。

●危険な一面も? 身元保証事業で留意すべきこととは…