巨額な資産を運用し、時にマーケットを大きく揺さぶる存在がヘッジファンドです。英ポンドに売り向かいイギリス中央銀行を負かせたジョージ・ソロスや、破綻したアルゼンチン政府から債務の返済を勝ち取ったポール・シンガーなど、これまで多くの著名投資家が自分のヘッジファンドを通し大きな利益を稼ぎ出してきました。

大物ぞろいのヘッジファンドの世界でも、ヘッジファンド「ブリッジウォーター」のレイ・ダリオは特に有名です。同社の運用資産額は2022年3月時点で18兆5600億円にもなっており、ヘッジファンドの運用額としては世界最大級とみられています。

8月8日はレイ・ダリオの誕生日です。今日はブリッジウォーターの運用戦略や、詐欺とヘッジファンドを見分ける方法について押さえましょう。

世界最大規模のヘッジファンド「ブリッジウォーター」創業者

レイ・ダリオは1949年、ジャズミュージシャンの父と専業主婦の母の間に生まれました。暗記が苦手で高校までの成績は良くなかったそうですが、金融を専攻した大学ではほぼオールAの成績を取得し、卒業後はハーバード・ビジネススクールに入学しています。

レイ・ダリオはブリッジウォーターを1975年に設立しました。当初は商品先物を主に取引し、現在ではさまざまな資産に投資しています。新陳代謝が激しいヘッジファンドの世界でおよそ47年間も続いているのは、ブリッジウォーターの運用成績がそれだけ良好だったからでしょう。例えば今年の上半期は厳しい相場が続きましたが、ブリッジウォーターの旗艦ファンドである「ピュア・アルファ」は同期間に32.2%の利益を得たと報じられています。

ただし、ブリッジウォーターは最も成功したヘッジファンドの1つですが、過去には取引に失敗し社員が彼1人になったこともありました。才能に恵まれた投資家であっても、マーケットから収益を得ることは簡単ではないようです。

出所:レイ・ダリオ『PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則』(日本経済新聞出版)

ブリッジウォーターが広めた「クオンツ運用」とは?

ブリッジウォーターは数々の運用手法を生み出してきました。「クオンツ運用」はその代表的な運用戦略です。

クオンツ運用とは、業績や金利といったマーケットに関連するデータを数学的手法で高度に分析して行う運用をいいます。レイ・ダリオはハーバード・ビジネススクール時代から食肉などの商品先物を取引していましたが、当時から天候などを定量的に分析し需要を予測する運用モデルを構築していました。

「リスク・パリティ戦略」はブリッジウォーターが広めたクオンツ運用の1つです。パリティ(Parity)には均等といった意味があり、値動きの大きさが一定になるよう、さまざまな資産を組み合わせる運用をリスク・パリティ戦略といいます。通常は業績などから組み入れる銘柄を決定することが多いですが、リスク・パリティ戦略は値動きの大きさに着目する点で画期的でした。ブリッジウォーターが導入したことで注目され、今では広く運用に採用されています。

ヘッジファンドをうたう詐欺が多い理由

ヘッジファンドについて、あまり良いイメージを持たない人もいるかもしれません。ヘッジファンドを装う詐欺が多く発生したためです。

これまで多くの詐欺師がヘッジファンドをうたい、不正にお金を集めてきました。運用の実態がないにもかかわらず、配当や値上がりを約束して出資を募り、資金を持ち出してしまうような詐欺です。

どうしてヘッジファンドをうたう詐欺が多いのでしょうか。お金を集めるという名目が立ちやすいこともありますが、「ヘッジファンドの分かりにくさ」が詐欺師に狙われていると考えられます。

ヘッジファンドの多くは「私募」形式で資金が集められます。これは数を限定して投資家を募る方法で、通常の投資信託と異なり一般的な金融機関では販売されません。形態もさまざまであることから、正規のヘッジファンドと見分けることが困難です。また金融庁に登録がないヘッジファンドがあることも、詐欺との区別を難しくしているでしょう。

ヘッジファンドと詐欺を見分ける1つの目安に出資額があります。私募型のヘッジファンドは多くの投資家を募れないことから、1人あたりの出資額がある程度大きくないと、まとまった運用資産を用意できません。一概にはいえませんが、最低でも数千万円から数億円の出資が求められることが多いでしょう。少額の出資を受け入れる場合、詐欺を疑った方がよいかもしれません。

仲介者を利用する方法もあります。通常、銀行や証券会社はヘッジファンドを扱いませんが、富裕層向けのサービスでヘッジファンドを扱うケースはあります。また、ヘッジファンド専門の証券会社やプライベートバンカーなどはヘッジファンドを扱うケースが少なくありません。国内の仲介者は基本的に金融庁に登録しその監督を受けているため、詐欺的なファンドに出会う可能性は低いでしょう。

ヘッジファンド自体は機関投資家も利用する運用方法です。もしヘッジファンドに資金を預けたい場合、これらの方法を検討してみてください。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。