穀物(特に米)を主体とする日本型の食生活を推進し、健康で元気な人を増やすことを目的とする一般社団法人日本健康食育協会(JHE)が、8(八)と18(十八)を合わせると「八十八=米」という漢字になることから、8月18日を「健康食育の日」として制定した。

日本古来の主食・米に秘められたビッグな価値

ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の食糧供給に大きな影響をもたらしている。小麦輸出で世界最大のロシアと第6位のウクライナが戦争状態に突入したことで、日本でもパンなどの原料となる小麦粉が高騰し、家計を揺さぶる。

このため、改めて伝統的な日本の主食である米に対する再認識が広がっている。約3000年も前の縄文時代にさかのぼる日本の米は、パンとは異なり添加物も脂分も入っていない健康的な食品だ。米にはエネルギーを発生するデンプンが多く含まれているため、米を食べると体や脳が活発になる。

米は日本だけでなく多くの国で作られる。ビーフンという米の粉で作った細長い麵は、中国の南部や台湾をはじめタイやマレーシアなどの東南アジアで人気の食べ物だ。ベトナムでポピュラーな料理とされるフォーも、米から作る平打ちの麺である。スペインのパエリア、韓国のビビンバも米の料理だ。

米は食卓の主食であることにとどまらず、活用される分野は広い。日本酒をはじめ調味料としての酢も、米が原料だ。

菓子作りにも使われる。米を原料とする伝統的な菓子として、餅、団子、せんべい、あられ、おかきなどが挙げられる。餅は平安時代から食べられており、長い歴史がある。団子は、餡(あん)団子やみたらし団子がポピュラーだ。せんべいは、日本各地で独特の名産作りが盛んだが、草加せんべいなどは全国的にも有名だ。

小麦粉の価格が急騰する中、小麦粉に米粉を混ぜてパンを作る業者が増えつつある。パンを膨らませるためには小麦粉は欠かせないが、米粉を混入させることで原価を抑えようとするものだ。幸い、消費者の評判は良く売れ行きも好調なようだ。

再認識したい健康食育の意義

「健康食育の日」を機に、改めて食事と健康の関係を考えてみたい。従来から「医食同源」という言葉がある。病気を治すのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためであり、その本質は同じだと、広辞苑は定義する。英語圏にも“An apple a day keeps the doctor away”(1日1個のリンゴは医者を遠ざける)ということわざがあり、食する事の大切さを説いている。

新鮮な果物や野菜を意識的に摂取することは大切だ。細胞やDNAを損傷しかねない酸化性物質を中和させる抗酸化物質を摂取するには、最適の食べ物といえる。酸化性物質がもたらす損傷を減少させることで、若々しい気分をいつまでも保つことが可能だ。

ついスナックなどを食べたくなったときなど、代わりに好きな果物や野菜に手を伸ばしてみてはどうだろう。必要なエネルギーである活力が増すだけでなく、優れた栄養素が体に浸透する。

一方、今や世界では日本食ブームだ。健康に良いとされる日本独特の食べ物は多い。枝豆や豆腐は欧米でも人気だ。スーパーの店頭には、日本からの輸入品である白菜、ゴボウ、小松菜,大根なども並ぶ。

ただ、納豆だけは栄養価が高いことを知りつつも、遠慮する外国人が多いようだ。ネバネバと糸を引くことやジャコウのようなにおいが駄目だとする人が多い。納豆には、その分量と同じ量の牛肉に匹敵するタンパク質が含まれ、かつコレステロールがない優れた食べ物である。しかし、ダメなものはダメとする人が多いようだ。

食料安保のためにも急がれる米をはじめとする穀物の増産体制

ウクライナ危機は、日本の食料の安全保障に警鐘を鳴らす。中国による台湾への侵攻が現実化すると、輸入する小麦や牛肉などの食料の重要運送路であるシーレーンは活用できなくなり、まさに食料は自給体制に入る。畜産分野で鍵を握る輸入穀物も打撃を免れない。しかし、カロリーベースでの日本の食料自給率は、1965年度の73%から2020年度は37%と大幅に低下している。

米ですら自給率は低い。1960年代後半に米の豊作が続き大幅な供給過剰状態となり、国は米価維持のため米の生産を抑制する一方で、農家への収入を保証する減反政策を1970年から2017年までの50年近くにわたり実施した。こうした政策も影響し、農業に従事する人は減少し農地も縮小した。このため2018年から減反政策を中止したが、増産の動きは鈍い。農林水産省の予測では、2022年の米の生産量は上限でも675万トンにとどまる。終戦時に行っていた米の配給に匹敵するだけの量を確保するだけでも、1400万トン強が必要だとされ、自給どころの話ではない。

一方、農業従事者減少の危機を救うべく、企業なども新規分野として農業に取り組む動きが高まった。しかし、農地法では農地を耕作するには農地の所有者である必要があり、企業が参入するには障壁があった。最近になりやっと、農家が事業を法人化する場合に限り、企業が農業をすることが認められることになった。

それにしても、農業は多面的な機能を持っている。食料の自給体制の確立や地域の活性化に貢献するだけでなく、環境の保全や防災にも役立つ。既存の農業従事者に依存するだけでなく、新たに農業を目指す人やボランティア、企業あるいは金融機関なども参画することで、農業を主要産業の一角に育て上げ、真に自立できる国家を目指したいものだ。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。