宮田恵里さん(仮名、42歳)は5年前、仕事を通して知り合った不動産会社社長に気に入られ、社長の経営する弁当店にマネジャーとして入社しました。しかし待遇はパート従業員と大差はなく、給与は時給計算で毎月の手取り収入は18万円ほど。生活はギリギリでした。

3年ほど前に社長の長男が副社長として経営に参画し、徹底的なコスト削減や厳しい時間管理等の経営改革を断行。職場の雰囲気が悪化したところ、さらに“ある事件”が発生し副社長とパート従業員の対立が決定的に。

両者の間を取り持つ役割だった宮田さんは「無能」扱いされた上、あらぬ疑いをかけられて突然解雇を言い渡されてしまいます。この5年間はいったい何だったのか――。納得できない宮田さんが取った行動とは……。

●「人間を全否定」パート従業員たちも激怒した事件とは… 

“最後のとりで”に相談

勤務先の弁当店から突然クビを言い渡された時点で貯蓄はゼロ。父母は亡くなっていて、唯一の身内である妹は自分の家庭のことで手一杯です。もともと友人が多い方ではなく、頼れる相手は誰一人として思い浮かびませんでした。

このままだと来月の家賃も払えない。明日からハローワークにでも通おうか。そう思ってふと手に取ったファイルで目に留まったのが、パートさんの時給問題でもめた時にお世話になった社会保険労務士さんの名刺でした。

それが藤代さんです。名刺にはファイナンシャルプランナー(FP)の肩書も記載されていました。お金の専門家なら、カネなし・仕事なしのアラフォー独身女にも何らかの解決策を示してくれるかもしれない。その時の私にとっては、本当に最後のとりででした。

退職金の支払いに好待遇の再就職先まで!?

電話をしたその日の夕方に藤代さんの事務所で落ち合うことになり、そこで、これまでの経緯を一切合切打ち明けました。藤代さんは私の話にじっと耳を傾け、幾つか疑問点を確認した後、こんな言葉をかけてくれました。

「それは悔しい思いをされたことでしょう。しかし、宮田さんに何一つ非はありません。むしろ、今回のことは不当解雇に当たる可能性があります。宮田さんからは言いにくいでしょうから、私が社長に直接話をします」

その言葉通り、藤代さんはすぐに動いてくれました。解雇に至る過程やこれまでの処遇の問題点を指摘し、慰謝料込みの退職金の支払いを社長に了承させたのです。雇用保険に加入しておらず失業給付も受けられない状況だったので、当面の生活資金が確保できたことに安堵しました。

それからは本格的な職探しです。コロナ禍の人手不足で臨時雇いやアルバイト、パートといった求人なら少なくないのですが、藤代さんには「社会保障のことを考えて正社員の仕事を探しましょう」と助言されました。ハローワークでなかなか思うような求人がないと話すと、藤代さんは地域の社会保険労務士のネットワークを活用して、求人のある会社を紹介してくれたりもしました。

3カ月後、藤代さんが親しくしている社会保険労務士さんの顧問先の介護会社に、正社員として採用してもらえることになりました。仕事は介護施設の事務、勤務時間は9時5時で完全週休2日制、手取り月収も前の職場より3万円近く上がるという願ってもない好待遇です。それまでに応募した会社の数はゆうに30社を超えていました。採用の連絡があったことを知らせると、藤代さんはわがことのように喜んでくれました。

しかし、お金の専門家である藤代さんの“本領発揮”はむしろそれからでした。

老後は公的年金プラスアルファの対策が必要

「宮田さんは15年以上国民年金の保険料を納付していませんでしたね。今のままでは将来、平均的な会社員の半分より少し多いくらいの年金しかもらえません。家計に余裕ができたら未納になっている国民年金保険料を10年前までさかのぼって追納することができますし、個人型確定拠出年金(iDeCo)など上乗せ年金を準備する方法もありますよ。国民年金の場合、1年分の保険料を支払うことで将来の受給額が約2万円増えます。10年分だと20万円、侮れませんよ」

正直、これまでは毎日暮らしていくのに精一杯で、先のことなど考える余裕はありませんでした。でも、ご自身もバツイチのシングルだという藤代さんから「家賃や光熱費は1人でも2人でもそう変わらないため、老後の1人暮らしは相対的に負担が大きい。それに、おひとりさまは自分の介護や死後の始末もある程度自分で手当てしておかなければならないから、それなりにお金がかかりますよ」といった話を聞いているうちに、私のような者こそ、しっかりと将来の準備をしていく必要があることを痛感しました。

すぐに藤代さんから紹介されたiDeCoの取り扱い金融機関や銘柄の比較サイト「iDeCoナビ」でiDeCoについて調べて、幾つかの銀行から資料を取り寄せました。そして、口座管理手数料が安く、資料が私のような素人にも一番分かりやすかったインターネット銀行に口座を開いて積み立てを始めました。

藤代さんには、まずは1年間の生活資金分の貯蓄を確保することを目標に、アプリを使って支出を把握し、家計を管理することを提案されました。自分ではカツカツのつもりでしたが、藤代さんに指摘され、食品の買い置きが多過ぎるとか、コンビニエンスストアで新発売のスイーツがあるとつい買ってしまうなど、結構無駄遣いが多かったことに気付きました。

「老後2000万円問題」の不安も解消、将来の目標も

3カ月が過ぎて家計管理にもだいぶ慣れ、少しは貯蓄もできるようになりましたが、数年前、「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」と大騒ぎしていたことを考えると、「60歳までに2000万円ためるなんて絶対無理!」と思います。

先日久しぶりに藤代さんにお会いした時にその話をしたら、こんな言葉が返ってきました。

「宮田さん、日本は世界有数の社会保障大国ですよ。健康に気を付けながら細く長く働いて、いざという時は公助や共助の制度をうまく使えばいいんです。それよりも、日々の暮らしの中で自分なりに幸せだなと思うことを増やしていくことの方が大切だと思いませんか?」

その言葉で、ふっと肩の力が抜けた気がしました。新しい仕事が総務や人事関係ということもあり、最近、私も社会保険労務士の資格を取りたいと考えるようになりました。今の職場で経験を積み、いずれは独立して藤代さんのように社会の中で困っている人に寄り添いながら、それこそ、細く長く働いていけたらいいなと思うからです。

今となっては、藤代さんは良きアドバイザーというだけでなく、私の人生のロールモデルでもあります。これからもできる限り長くサポートをお願いできたらと思います。

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※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。