今から14年前の3月26日、大阪市らが出資していた「大阪ワールドトレードセンタービルディング」が倒産しました。破綻は2度目で、大阪市には決して小さくない負担が発生しました。当該ビルは大阪府が所有することになりますが、現在も賃料未払いといったトラブルが発生しているようです。
大阪にそびえる負の遺産
大阪ワールドトレードセンタービルディング(以下WTC)は、大阪市や民間の出資を受け1995年に完成しました。しかし当時はバブル崩壊後の景気低迷期にあたりオフィス需要は低く、WTCは開業1年目から損失を計上します。超過債務の額は2003年3月期までにおよそ236億円も積み上がりました。
WTCは自力での再建を断念し、2003年6月に特定調停を申し立てます。金融機関は債務の一部を放棄し、残りの債務で損失が発生した場合は大阪市が補償すること、さらに大阪市がWTCに40億円の追加出資を行うことなどが盛り込まれ、2004年2月に調停が成立しました。
しかしこのとき、大阪市はWTCを助けるべきではなかったのかもしれません。2009年3月26日、WTCは会社更生手続きの開始を申し立て、2度目の経営破綻を迎えました。調停が成立してからも入居率は好転せず、約643億円の負債を残して倒産します。特定調停で盛り込んだ損失補償条項から、大阪市は金融機関に約424億円の支払いを強いられました。WTCは大阪府が約85億円で購入し、運営会社は2011年3月に解散します。
現在、旧WTCは「大阪府咲州(さきしま)庁舎」(愛称:さきしまコスモタワー)と改められ、ホテルなどが入居しています。しかし、今度はそのホテルと大阪府が対立するようになりました。報道によると、ホテルは賃料を支払っておらず、大阪府はホテル運営会社を提訴したようです。同ビルを巡る混乱はまだまだ続くのかもしれません。
破綻が相次いだ「第三セクター」とは
WTCの運営会社のように、官民が共同で設立する法人を「第三セクター」と呼びます。公共性の高い事業などで設立されるケースが多く、WTCでは不動産会社や総合商社といった複数の民間企業と大阪市の共同出資によって運営会社が設置されていました。ちなみに、国や地方公共団体が経営する公企業を「第一セクター」、民間の私企業を「第二セクター」と呼びます。
第三セクターは2000年代に巨額の倒産が相次ぎました。出資分を通じて地方財政の悪化を招いたことから、その経営が問題視されるようになります。事前の見通しが甘かったこと、また経営が悪化してからも手を引くことができず赤字が積み上がったことなどが指摘されています。
【主な第三セクターの破綻】
出所:参議院 臨海三セクの債務処理と再生
もっとも、2000年代は第三セクターに限らず多くの企業が倒産しました。バブル崩壊で金融機関が多くの不良債権を抱えるようになり、その処理に伴う痛みが表面化したことが理由の1つと考えられています。
【倒産企業の負債総額の推移】
大阪万博会場の再利用はどうなっている?
大阪を巡っては、2025年に開催される「大阪・関西万博(国際博覧会)」が話題を集めています。4月から10月の半年間で約2800万人の来場を見込むビッグイベントです。2023年2月にはスイスが参加国で初めてパピリオンを公表しました。
大阪・関西万博では、大阪市夢洲(ゆめしま)地区に約155ヘクタールの大規模な会場が建設される予定です。建設費は当初約1250億円に収まる予定でしたが、円安や資材価格の高騰で約1850億円に引き上げられました。費用は国と大阪府・大阪市、そして民間の支出で賄われる予定です。
【大阪・関西万博会場建設費の内訳】
・来場者の快適性・安全性・利便性の向上のための施設等:1390億円
・参加国、事業者の多様な参加を促進するための施設:110億円
・大屋根整備:350億円
出所:大阪府 大阪・関西万博の会場建設費について(2020年12月)
これだけ巨額な出費を伴うものが、一時的な消費で終わってしまうのは少しもったいないと感じるかもしれません。そこで大阪・関西万博では、会場のリユースやリサイクルを行う仕組みが採られています。2025年日本国際博覧会協会は、閉会後に施設や設備を引き継ぐ事業者らを募集し、物品賃貸業やメーカーといった34者から応募を受けました。また大阪府と大阪市は、万博跡地の活用に向けて市場調査に乗り出しています。
せっかく大きな費用をかけてつくるものですから、有効に再利用される方法が見つかるとよいですね。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。