山口真由さん(仮名)は去年まで都内の大手美容サロンに勤務していました。学生時代はモデルのアルバイトをしていたという美貌に卓越した営業センス、さらに顧客受けも抜群の山口さんは、社内の若手のエース的な存在でした。
その頃、山口さんには30歳で独立し一国一城の主になるという夢があり、それを目指してさまざまな自分磨きに励んでいたのです。そんな中で新型コロナウイルスのパンデミックが起こりサロンの経営が悪化、収入減に困った山口さんは、モデル時代の友人から紹介された高収入バイトに入れ込むようになります。
山口さんの勤務先は社員の副業を認めており、バイト自体も合法的な仕事です。さらに、起業家を目指す山口さんにとっては人脈を広げるチャンスにもなる大変魅力的な内容でした。しかし、思わぬところに落とし穴がありました。山口さんはバイト収入を申告しておらず、税務署から“お尋ね”が届いたのです。
この一件は追徴課税で数十万円を支払っただけでは終わらず、結果的に山口さんは職場を去り、それまで築いてきた人脈も失いました。「全ては自分の無知が招いたことだけれど、本当に悔しい。やり直せるなら3年前に戻ってやり直したい」と話す山口さんに、苦い経験を振り返ってもらいました。
〈山口真由さんプロフィール〉
千葉県在住
28歳
女性
無職
実家に両親と同居
金融資産8万円
大学卒業後は大手美容サロンに勤務し、30歳をメドに独立を目指していました。学生時代にモデルのアルバイトをしていた時にスタートアップの若手社長たちと交流があり、自分も経営者として会社を動かしてみたいと思うようになったのです。興味のある化粧品や美容の分野での起業を考えていましたが、経営者には幅広い知識や人脈が必要と、ビジネススクールや語学教室、異業種交流会など自分磨きにお金をかけてきました。
“ギャラ飲み”で数百万円を稼ぎ人脈も広がる
しかし、新型コロナウイルスのパンデミックでサロンの売り上げが落ち込み、収入も大きくダウン。自己投資を続けていくのが困難になりました。そんな時に、モデル時代の友人から教えてもらった高収入バイトが、いわゆる“ギャラ飲み”です。
ギャラ飲みとは、専用マッチングアプリに登録し、報酬(ポイント)をもらって男性たちとの飲み会に参加する仕事です。1回の飲み会が3時間程度で報酬は3万円ほどでした。利用者は主として経営者や広告代理店関係者などで、お店も『ミシュランガイド』に掲載されるような一流店ばかり。呼ばれる女性キャストも数人というケースが多く、ビジネスの最前線を走る方々との会食は、起業を目指す私にとって大変刺激的な楽しいバイトでした。
「副業解禁」の流れで勤務先が副業を容認していたこともあり、平日の夜はせっせとバイトに励み、最初の年は200万円、2年目は300万円を稼ぎました。ギャラ飲みで知り合った社長たちとはSNSでつながり、ビジネスゴルフに呼んでいただいたりスタートアップへの相談をしたりして、30歳起業計画がかなり現実味を帯びてきたように感じていました。お金と夢の実現、まさに一挙両得の素晴らしいバイトを紹介してくれた友人には感謝しかありませんでした。あの時までは……。
忘れもしない1年前のことです。マンションのメールボックスに入っていた一通の封書。管轄の税務署からの、マッチングアプリ運営会社からの収入に関する“お尋ね”でした。
●友人の裏切り!? 全てを失うことに… 続きは後編で紹介します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。