2024年から始まる新しいNISA(以下、新NISA)は、「超⼤幅なアップデート」と言えるほど⼤きな制度変更が行われます。では、現行のNISA(以下、旧NISA)と⽐べてどの部分がメリットだと言えるのか。今回は「新NISAを使うべき5つの理由」について解説します。
1.非課税期間が無期限に
新NISAを使うべき1番の理由。それは、⾮課税期間の無期限化です。
旧NISAでは、税⾦がかからない期間に制限がありました。例えば⼀般NISAで100万円投資し、5年後に120万円まで上がった場合。値上がり分の20万円に加え、5年間でもらえる配当⾦には税⾦がかかりません。しかし、さらに5年後、120万円の株が150万円まで上がると……値上がり分30万円と、6年⽬以降の配当⾦には課税されてしまうのです。
⼀⽅、新NISAでは株や投資信託を何⼗年持っても非課税。30歳で100万円分の株を買い、60歳で300万円まで上がった場合、値上がり分200万円が非課税となります。本来であれば約40万円の税⾦がかかりますが、これがゼロになるのです。もちろんこの30年間に得られる配当⾦も⾮課税です。
どれだけ株・投資信託を持っていても「永久に」⾮課税。これが、新NISAを使う最⼤のメリットです。
2.投資枠が大幅拡大
新NISAを使うべき2つ目の理由は、投資枠が⼤幅に拡⼤されることです。
2023年までの旧NISAでは、
●つみたてNISA:40万円/年
●⼀般NISA:120万円/年
●ジュニアNISA:80万円/年
となっており、国として投資を推進するわりに使える上限が少額でした。また、⽐較的投資枠の大きい⼀般NISAでも、5年間しか利⽤できませんでした。
それが新NISAでは、投資枠が
●360万円/年(つみたて投資枠120万円+成⻑投資枠240万円)
●総額で1800万円(成⻑投資枠は1200万円まで)
と⼤幅に拡⼤されたのです。
もちろん「投資枠」ですので、全額使い切る必要はまったくありません。しかし、枠が⼤きくなったことで、今後の選択肢は格段に広がるでしょう。
3.枠の再利用が可能
新NISAを使うべき理由の3つ目。それは、枠の再利⽤ができることです。
旧NISAでは、枠は⼀度使えば終わりでした。例えば2023年6⽉に、あなたが⼀般NISA(年間上限120万円)を使い、株を100万円分買ったとします。そして、1カ月後の2023年7⽉、たまたま運よくその株が150万円まで上がるとしましょう。いま株を売ると50万円の利益が得られ、税⾦もかかりません。
ここで問題です。2023年、あなたが⼀般NISAで買える株は、残りいくらでしょうか? もともとの枠は、年間120万円。「100万円分の株を買ったけれど、結局すぐ売ったから……また120万円分買える?」と思われるかもしれません。
ところが、正解は20万円です。ここが間違いやすいポイントで、旧NISAでは、⼀度株や投資信託を買うと「枠を消費した」とカウントされます。その後、買った株を持っていようが売っていようが「120万円のうち100万円消費したので、残りの枠は20万円」となるのです。
⼀⽅、新NISAでは、「上限1800万円」の範囲であれば何度でも枠を再利用できます。例えば、新NISAで1700万円分の株を購入すると、新たに購⼊できる額は100万円。しかし、そこから元本700万円分の株を売ると……売却した元本700万円分の枠が復活します。つまり、ここからまた800万円分の株や投資信託を買えるのです。
⼀度枠を使っても、売ればまた枠が復活する。これが、新NISAの3つ目のメリットです。
注意点
新NISAは、全体の枠の上限が1800万円です。この枠は何度でも再利⽤ができます。⼀⽅で、「年間の投資枠360万円」は再利⽤ができないので注意してください。
どういうことかと言うと、例えば2024年に新NISAで300万円分の株を買い、年内に100万円売ったとしても、2024年に購⼊できる残りは60万円となります。
この「総枠は何度でも再利⽤できる」「年間の枠は再利⽤できない」という違いには注意が必要です。
4.年間の枠は使い切らなくてもOK
「年間の枠を使い切らなくて良い」という点も、新NISAの大きなメリットです。
新NISAの年間360万円まで使えるというルールに対して、「毎年そんなに投資できない!」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、⽇本の平均賃⾦は⽉31.1万円(出所:厚⽣労働省「令和4年賃⾦構造基本統計調査」)なので、年間360万円を使い切るために月平均30万円も投資できる人は少数派と言えます。
つまり、私たちが意識するのは「総枠の1800万円」だけで良いのです。
新NISAでは、1800万円を使い切る方法として、
●年間180万円×10年
●年間90万円×20年
●年間60万円×30年
などと、ルートは無数に考えられます。
さらに「1年⽬は50万円、2年⽬は100万円……」と変則的な投資も可能です。⼦どもの⼊学を控えているなどの出費が多い年は投資を抑え、逆にお⾦に余裕のある年は投資を増やすといった動き方もできるのです。
年間360万円の枠は、無理に使い切る必要はありません。⽬標を立てるなら、何⼗年かけても良いので、総枠1800 万円を⽬指すのがオススメです。
5.旧NISAとは別の扱い
新NISAを使うべき最後の理由。それは、新旧NISAは別枠で管理されることです。
旧NISAで投資した株・投資信託は、2024年以降も「旧NISAに⼊ったまま」になります。実はこの制度設計から「2023年の1年間は旧NISAをフルに使うのがベスト」という答えが導き出せます。
例えば2023年に、
●あなたの証券⼝座:つみたてNISAで40万円
●あなたのお⼦さんの証券⼝座:ジュニアNISAで80万円
という額を投資した場合、元本120万円分が⾮課税となります。そして2024年からは、新NISAでさらに1800万円まで投資ができるのです。このケースでは、合わせて1920万円分もの⾮課税投資が可能となります。
旧NISAを最大限使った上で、新NISAもしっかり使う。これが、税制面で言えば最善の動き方となります。
新NISAを使った30年後、使わなかった30年後
ここまで新NISAを使うメリットを説明しましたが、最後に、預金のみで30年過ごす場合、新NISAを30年間使って過ごす場合をそれぞれシミュレーションをしてみます。前提は以下の通りです。
●毎年の初めに60万円積み立てるものとして計算
●平均月5万円×30年のペースで新NISAの投資枠1800万円を埋めるものとする
預金の場合
まず、積立金を全額預金した場合。現在、大手銀行の普通預金利率は0.001%です。
60万円を預金すると、1年後の利息は6円。そして預金を続けて30年後、元本1800万円から得られる利息は2790円になります。少々悲しくなりますが、預金は「安全に預けること」が目的なので仕方がないとも言えるでしょう。
新NISAの場合
では、新NISAを使った場合はどうなるか。本記事では、資産増加率を毎年4%として計算します。
<資産増加率を毎年4%と仮定する理由>
「毎年4%増えるって、投資に夢を⾒すぎじゃないの?」と思われる方のために、例として⽶国の優良企業 500 社からなる指数「S&P500」から検証してみましょう。
S&P500のリターンは、2022年までの10年間で平均14.8%。直近ではコロナショックなどで下がっているものの、5年平均で10.8%、3年平均でも9.0%が得られています。
S&P500(3年平均)の半分以下と考えると、「資産増加率4%」という前提はむしろ保守的とも言えるかもしれません。
※過去のデータを参考にした筆者の予想であり、資産増加率を保証するものではありません
リターン4%の場合、元本60万円は1年後に62万4000円となります。2年目も60万円を積み立てますが、元本は120万円ではありません。1年間で増えた2万4000円も乗ってくるため、あわせて122万4000円がベースです。
これを繰り返すと、なんと30年後には3499万7001円まで膨れ上がります。もちろん、元本から増えた約1700万円分に対し、税金は1円もかかりません。
投資にはリスクがあり、「確実に年間4%増やせる」とは言い切れません。しかし、シミュレーション通りに資産が増えたと仮定すれば、節税額は
●約1700万円×20.315%=約345万円
つまり、本来払うべき345万円の税金が完全にゼロになるのです。
一生涯、元本1800万円分もの税制メリットが受けられる新NISA。少額からでもコツコツ積み上げることで絶大な効果を発揮します。月々無理のない金額で、長期の投資プランを考えてみてはいかがでしょうか。
※試算した数値はシミュレーションであり成果を約束するものではありません
※シミュレーションにおける数値は、預金利息にかかる税金や、投資にかかる手数料を考慮していません