今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、投資信託の基本的な知識と投資するファンドの選び方について解説した濱島成士郎著『証券会社が勧めた投資信託で100万円損しています! ハマシマさん、資産運用のコツを教えてください』の一部を特別に公開します(全4回/本記事は第3回)。

※本記事は濱島成士郎著『証券会社が勧めた投資信託で100万円損しています! ハマシマさん、資産運用のコツを教えてください』(ビジネス社)から一部を抜粋・再編集したものです。

選択基準3  アクティブファンドは最低3年運用しているものを選ぶ

投資信託は預貯金と違い、事前にリターン(利回り)は約束されません。特にアクティブファンドの場合、運用成果は投資先のマーケット動向だけでなく、投資方針や運用担当者の手腕によって大きく変わってきます。そこでアクティブファンドを選ぶ際は、まずは過去の運用実績を確認しましょう。もちろん、過去の運用実績が将来も続く保証はどこにもありません。過去1年のリターンが10%でも、次の1年はマイナス10%になることも十分に起こり得ます。将来のリターンがどうなるかは誰にもわらないのです。

ただアクティブファンドの場合、ベンチマークとなる株価指数との対比で良い運用が行われたかどうかを推察できます。

アクティブ型にとって「良い運用」とは、ある一定期間の運用においてベンチマークを上回るリターンを出せたかどうかによります。

仮にベンチマークが10%値上がりした時に運用実績が10%を超えていれば、良い運用ができたことになります。ベンチマークが10%のマイナスでも運用実績のマイナスがそれよりも小さければ、やはり良い運用ができたと考えられます。

ただしこれらを判断するためには、ある程度、長期の運用成績を見る必要があります。

半年、1年程度の期間だと、たまたまその時期だけ株価が大きく上昇していたなどの理由で、リターンが出ていることも考えられます。そのような偶発的要因で運用の良し悪しを判断するのは危険です。

では、どのくらいの期間を見ればいいでしょうか。これも諸説ありますが、私は最低でも3年は見たほうが良いと考えています。

なぜ3年なのか。これはもっとも短い景気のサイクルは約40カ月程度だからです。「キチンサイクル」という、企業の在庫循環に規定された景気サイクルであり、株価をはじめとしてマーケットの値動きは景気の動向に左右される側面が強くあります。

したがって、特に景気の動向によって左右されやすい株式を組み入れて運用する投資信託を選ぶ時には、最低でも過去3年程度のベンチマークと基準価額の値動きを比較する必要があります。可能であれば5年、あるいは10年というように、長い期間の運用成績で比較することをお勧めします。

また、新しく運用がスタートする投資信託に飛びつくのは避けたほうが良いです。最近はやや落ち着いてきた感もありますが、かつては新しい投資信託が次々に設定された時期がありました。「新しい運用モデルを使った投資信託で高い運用実績が期待できます」「新規設定なので基準価額10000円で購入できます」など、目新しさや新規設定そのものがある種のセールストークに用いられたのです。

しかし、営業担当者が熱心に勧めてくる、新規設定のアクティブファンドに飛びついてはいけません。ある程度、運用実績や資金の流出入を確認してから判断するようにしてください。

インデックスファンドは例外です。インデックスファンドは、株価指数などに連動することを目標にしてポートフォリオを組むので、運用実績はインデックスに連動します。ただし、純資産総額や後述する総経費率もチェックする必要もあることから、新規設定のものは慎重に判断したほうが良いと思います。

新規設定の投資信託は、金融機関を選ぶ際のリトマス試験紙のようなものです。営業担当者が、サイトのフロントページで大々的に宣伝している新規設定ファンドを強力にプッシュしてくるようであれば、そっと離れるくらいでもいいと思います。

選択基準4  信託期間が無期限のものを選ぶ

投資信託は長期的な資産運用を行うためのツールです。信託期間が設けられていること自体いかがなものかと思いますが、実際に信託期間を設けている投資信託は結構あります。

信託期間が10年の投資信託で、運用が開始されて7年が経過していたとしたら、運用できる期間はあと3年しかありません。このような投資信託を買うべきではないでしょう。

ただし、追加型投資信託で償還日が近づいた時点で純資産総額が大きいと、償還期間を延長するケースがあります。したがって、一概に償還日までの年数の短い投資信託がダメだというわけではありません。それでも「償還されるかもしれない」という不確定要素があることを考えれば、買わないほうが無難です。

投資信託で長期運用をしていくうえでは、信託期間を「無期限」にしている投資信託を選ぶようにしましょう。

選択基準5  分配金の考え方は千差万別

すでにご説明したように分配金とは、前回の決算日から今回の決算日までの運用によって生じた収益の一部を受益者に還元することです。

投資信託には分配金を支払うタイプと支払わないタイプがあります。どちらのタイプを選択するかは、個人個人の方針次第です。

これから資産を増やしていきたい資産形成期にある人は、分配金を支払わない方針の投資信託を選ぶようにしましょう。分配金を支払う投資信託の場合でも、分配金を再投資することで資産を増やしていくことは可能です。しかし、分配金には原則として20.315%の税金がかかりますので、再投資は税引き後の金額になり、税金の分だけ効率が悪くなってしまうのです。

元本を増やすのは、運用期間中にいっさい分配金を支払わないタイプの投資信託が一番効率的です。

一方、分配金を生活費や趣味などの費用に充てたい資産活用層は、分配金を支払う投資信託を選ぶのも手です。

ただし注意点がひとつあります。それは高額な分配金がもらえるからといって、必ずしも運用成績がいいわけではない点です。

分配金の原資は、前決算日から今決算日までの期中に得られた運用収益だけではありません。分配金を支払うのか支払わないのか、支払うのならいくらにするかは、投資信託会社が自由に決められるようになっています。

たとえば期中に1億円の運用収益が得られたとしても、5000万円だけを分配して残りの5000万円は内部留保しておくことも考えられます。そうすることによって運用がうまくいかなかった期があっても、分配金を払えるようにしておくのです。

分配金の支払いを継続するために、このような分配方法が認められているのです。内部留保された分配金は基準価額を押し上げます。つまり受益者が得るべき利益を、分配金として受け取るのか、それとも基準価額の値上がり益で受け取るのかの違いでしかありません。この点をよく理解しておく必要があります。

たとえば期中で得た運用収益が2000万円程度なのに、過去の内部留保を引き出して5000万円分を分配金として支払った投資信託があったとします。この投資信託を保有している人が、期中の利益だけなら2万円の分配金のところ、5万円をもらえるイメージです。おそらく多くの人は、「5万円もの分配金をもらえるなんて、なんて優秀な運用をしている投資信託なんだ!」と思うでしょう。

でも、それは大いなる誤解です。

高額な分配金が継続的に出ている投資信託は、基準価額がほとんど値上がりすることなく、むしろ値下がりしていくことのほうが多いのです。特に、毎月分配金が出ている投資信託には注意してください。

●第4回【インデックスファンド選び…信託報酬も重要だが、「総経費率」も必ず確認するべき〝理由”】では、投資信託のコストなどについて解説します。

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『証券会社が勧めた投資信託で100万円損しています! ハマシマさん、資産運用のコツを教えてください』(ビジネス社)