ネット証券の投信売れ筋ランキングの2024年5月のトップは同率で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だった。新NISAのスタートを前後して始まった「全世界株式(オール・カントリー)」、または、「S&P500」を使った積立投資人気の盛り上がりを感じさせるランキングになった。

一方、第3位に「iFreeNEXT FANG+インデックス」が入り、同率9位に「<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」。同率6位に「SBI 日本株4.3ブル」、同率9位に「楽天日本株4.3倍ブル」がランクインするなど、「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」など代表的なインデックスファンドとは異なるファンドがランクインしている。特に、日本株の4.3倍ブル型のファンドは、新NISAの対象外であるにもかかわらず売れ筋上位にランクインしている。短期的には株価が安値圏にあるとみてブル型のレバレッジ投信に人気が回ったものと考えられる。この投資家判断が吉と出るか、6月の日本株の相場展開に注目したい。

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ランキングは、投信の販売額で群を抜いているSBI証券と楽天証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、2社のランキング10位までのファンドの点数を集計し、点数の多い順に並べた。

◆日経平均4万円台復活に期待!? 「日本株ブル型レバレッジ」が堅調

日本株のブル型レバレッジ投信は、SBI証券では第4位に「SBI 日本株4.3ブル」が、楽天証券でも第6位に「楽天日本株4.3倍ブル」がランクインしている。2024年4月末時点で、「SBI 日本株4.3ブル」の1年間のトータルリターンは191.33%と非常に大きなリターンを記録しているため、その恩恵にあやかりたいのだろうが、ブル型ファンドは市場が一本調子に上昇している時には強いのだが、株価が上下にブレる時は、思うほど大きな収益につながらないという傾向がある。

日経平均株価は、2024年2月22日に終値でバブル後の高値3万9815円の最高値を更新し、3月4日に4万円の大台をクリア。3月22日に4万0888円の高値を付けて以来、株価調整局面にある。4月19日に3万7068円の安値を付け、5月30日にも3万8054円の安値になった。4月の底入れ反転期待は裏切られ、5月に改めて反転を期待して再び売れ筋に上がってきたのだろうが、5月の月末に株価は再度安値を付けて、投資家の期待を裏切った格好になっている。

「SBI 日本株4.3ブル」の基準価額は、株価が史上最高値を付けた3月22日に3万3729円になったが、4月19日には2万2122円に急落。その後、2万7000円台に上昇した後で、5月30日には2万3972円に下落している。市場変動の4.3倍で基準価額が動くため、注文した日が1日違うだけでも、基準価額が大きく動いていることがある。4月19日の下落率は1日だけで12.0%だった。反対に、4月24日のように1日で10.18%上昇することもある。よほど「これ以上の下値はない」と確信を持てないと購入は難しいファンドといえる。

今後の日本株の見通しを考える時、長期金利の基準とされる「新発10年国債利回り」が5月24日に1.005%と1%台に乗せ、5月29日には1.075%にまで上昇したことに注意したい。新発10年国債利回りが1%台に乗せたのは2012年4月以来、12年ぶりのことだ。このような歴史的な変化が起こっている時には、株式市場などの価格変動率が大きくなる傾向が強い。レバレッジ型のファンドには難しい局面を迎えている。

◆大型テック株へ集中投資するファンドが「オルカン」「S&P」を猛追か

一方、その他のランキングファンドでは、第3位に「iFreeNEXT FANG+インデックス」、同率の第9位に「<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」が入った。これらは、大型テクノロジー株に、よりフォーカスしたファンドといえる。トップの「S&P500」や「全世界株式(オール・カントリー)」なども時価総額の大きな銘柄の影響が強いが、「NASDAQ100」は時価総額上位100銘柄、「FANG+」はテクノロジー大型株10銘柄を対象としたインデックスになり、より対象が狭い範囲に絞られている。2023年には「S&P500」の値動きが「マグニフィセント・セブン」といわれた大型株7銘柄の騰落率でほとんど説明がついてしまうといわれるほど、7銘柄の影響度が高まっていた。その傾向を映して、より大型株にフォーカスした商品に人気が高まっているのかもしれない。

ただ、一部の銘柄に人気が集中する状態は、過去の経験からは長く続かないといわれている。このため、世界のさまざまな投資資産を対象としたマルチアセット運用では、これまで見過ごされてきた「中小型株」に投資魅力が高まっているという指摘がある。大型株への集中物色が過度に行われた場合は、過去には、大型株から中小型株へと物色傾向の変化があったからだ。2023年の人気を後追いしているような大手証券の売れ筋ファンドランキングには、その後追い傾向に注意が必要だ。

執筆/ライター・記者 徳永 浩