パリオリンピック最終予選大会「オリンピック予選シリーズ(略称:OQS) 」の1戦目となる上海大会が中国・上海にて2023年5月16日(木)〜19日(日)にわたり開催され、競技3日目となる18日(土)にBMXフリースタイル・パーク種目の決勝が行われた。男子はフランスのアントニー・ジャンジャン、女子は中国のスン・シベイが優勝。なお日本人最高位は男子の中村輪夢選手の9位となった。

オリンピック予選も佳境に迫る中、最後の予選大会として開催されるこのOQSでは今回の上海大会と、来月6月に開催されるブダペスト大会の結果を合計したポイントランキングを元に、トップ6の選手個人(ただし国別最大2枠まで)に割り当てられる。

その後、2022年のUCIアーバンサイクリング世界選手権で男女各2枠、2023年のUCI自転車世界選手権で男女各3枠、そしてオリンピック開催国であるフランスが男女各1枠という形で、各過去大会の成績に応じて全大陸に行き渡るように国に割り当てられ、男女ともに計12枠がパリオリンピック出場枠となる仕組みだ。

なお、OQSの2大会の合計結果だけで、計6枠のパリオリンピック代表への切符が国枠関係なくダイレクトに選手たちに与えられることから、極めて独特な緊張感の中でトップ6に残るべく壮絶な戦いが繰り広げられた。

本記事では入賞者3名のライディングと日本人選手たちのパフォーマンスに関してクローズアップする。

女子カテゴリーは中国人選手が全員90ptオーバーという圧倒的な強さを見せた。日本の内藤は惜しくも16位で予選敗退で大会を終える。

女子カテゴリーには各国から選ばれた23名が参加し、決勝は予選を勝ち抜いた12人で行われた。日本からは現全日本チャンピオンの内藤寧々が出場し、東京オリンピック銀メダリストのハンナ・ロバーツ(アメリカ合衆国)や、同金メダリストのシャーロット・ワーシントン(イギリス)など世界トップ選手たちを相手に争った。そして今大会で顕著な結果を残していたのはメダリストや世界チャンピオンたちを上回り全員が90pt台を残した中国人選手だろう。 

スン・シベイのライディング
Photo: OIS/Jon Buckle. Handout image supplied by OIS/IOC

まずは今大会で95.86ptという超高得点を残して優勝したスン・シベイ。ラン1本目では「ダブルトラックドライバー」や「スイサイドノーハンド to バースピン」をはじめ様々なバラエティのトリックをメイクしていく。一つ一つの丁寧なトリックは高く評価され、92.72ptをマーク。

最終出走者となった彼女は暫定2位の状態でラストランを迎え、逆転を目指しコンボトリックを増やしたライディングを見せる。「トリプルトラックドライバー」から「トラックドライバー」のトリックアフタートリックを皮切りに、クオーターでの「ダブルバースピン」や、トランスファー中の「トラックドライバー」などトリックの難易度はさることながら、各セクションを満遍なく使うパーフェクトランで95.86ptをマークし完全優勝を達成した。

スン・ジアキのライディング
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

次は普段の大会であれば十分に優勝できるスコアである93.68ptをマークして、準優勝を収めたスン・ジアキ。彼女もハイエアーの中で「360・テールウィップ」「ダブルテールウィップ」「バックフリップ」などの高難度トリックを次々とメイクしていき93.68ptをマークし暫定1位に。2本目では1位の座を確かなものにするべく1本目のランを上回るクオリティを目指し、途中に「バックフリップ・X-up」をチョイスするも足を着くミスで得点を伸ばせず57.24ptに。1本目の93.68ptのベストスコアとして準優勝となった。

デン・ヤーウェンのライディング
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

最後は91.50ptをマークして3位になったデン・ヤーウェン。昨年のワールドカップ中国大会で優勝した彼女は、1本目では「ダブルトラックドライバー」をはじめ、「ダブルテールウィップ」や「ダブルバースピン」など完成度の高いライディングで91.50ptをマークした。
更にスコアアップを目指すべく、2本目ではファーストトリックとして「トリプルトラックドライバー」にトライするもハンドルキャッチに失敗して転倒しランを中止とする判断。ただラン1本目のスコアで順位を守り切り、3位入賞を果たした。

内藤寧々のライディング
©︎Naoki Gaman : Japan Cycling Federation

一方で内藤は1本目で「360」や「X-up ワンフット to キャンキャン」そしてクオーターでの「テールウィップ」などトリックを次々メイクし51.10pt、そして2本目では1本目をブラッシュアップしたライディングを見せるも51.58ptに。2本のランの平均点が最終スコアとして扱われる今までと違うフォーマットで、最終スコアは51.34ptとすると16位で決勝進出に必要な上位12位の座を逃した。

女子カテゴリーにおいては、同じアジア大陸という括りで言うと今後も日本の1番の強敵であり続ける中国。特に現在は東京オリンピック銅メダリストでありベネズエラの現役トップライダーのダニエル・デアーズがコーチとして参画していることもここ数年の競技力の急成長に繋がっているだろう。今や世界最強国と言っても過言じゃないこの強豪国を相手にどう日本が立ち向かうのかも注目だ。

男子カテゴリーは各選手が苦戦を強いられる中、フランスのアンソニー・ジャンジャンが勝ち越す。日本人最高位は中村の9位。溝垣は15位で惜しくも予選敗退。

男子カテゴリーでは、参加選手24名の中から前日の予選を勝ち上がった上位12名にてよって争われた。今大会に日本からは中村輪夢と溝垣丈司を出場し、中村が決勝進出を果たし、世界ランク3位で最近絶好調のアントニー・ジャンジャン(フランス)や、東京オリンピック金メダリストのローガン・マーティン(オーストラリア)、現世界チャンピオンのキーラン・ライリー(イギリス)など世界のトップ選手たちと表彰台を争う熾烈な戦いとなった。

アントニー・ジャンジャンのライディング
Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC

そんな戦いで見事優勝を収めたのは1週間前のFISE Montpellierの覇者であるアントニー・ジャンジャン。今年乗りに乗っている彼はラン1本目から、ハイスピードでライディングしながら、滞空時間の長いエアーの中に「バックフリップ・トリプルテールウィップ」、「ダブルバックフリップ」「フレア・テールウィップ」など超高難度のトリックを詰め込みフルメイクするライディングを見せ、93.54ptと大きく後続を引き離し暫定1位に躍り出る。

ラン2本目ではさらにリードを伸ばすため1本目の内容に加えて様々なバラエティのトリックを色んなセクションで行うも87.82ptをマーク。1本目を上回ることはできなかったがその後も93.54ptを超える選手はいなかったため表彰台の頂の座をもぎ取った。

ローガン・マーティンのライディング
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

また優勝したジャンジャンに迫る90pt台をマークして準優勝したのはローガン・マーティン。ラン1本目では「コーク720・ダブルバースピン」を皮切りに「クアッドテールウィップ」や「フロントフリップ・タックノーハンド」など超高難度トリックをメイクしていくも、終盤残り10秒を前にクオーターでの「フレア・テールウィップ」でスリップダウンし得点を伸ばしきれず63.40ptとする。

2本目ではなんとか1位にジャンプアップするべく、1本目のルーティンのミスをしっかりカバーし、最後はランプでの「900」も決め切り92.65ptをマークした。惜しくも優勝には一歩手が届かなかったがしっかり次に繋げる好成績を残して見せた。

キーラン・ライリーのライディング
Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC

そして続いて3位入賞を果たしたのは現世界チャンピオンのキーラン・ライリー。ラン1本目はダイナミックな「1080」で始めると「フロントフリップ・ノーハンダー」、「720・バースピン」など豪快かつ高難度なトリックを数々メイクし89.28ptをマーク。2本目では暫定2位から優勝争いに食い込むため1本目のランを改善するライディングをするも途中の「720・バースピン」で足がペダルから外れてしまいランを中断しスコアを28.54ptとする。しかしその後も1本目の89.28ptのスコアで表彰台の座を獲得した。

中村輪夢のライディング
©︎Naoki Gaman : Japan Cycling Federation

世界ランキング4位の中村は前日の予選を8位で通過し、決勝には1組目5番目で登場。1本目のランでは「バックフリップ・バースピン・バーバック」をはじめ、「720・ダブルバースピン」や「フレア・ルックバック」などメイクするもポイントは84.00ptに。表彰台を目指すには90pt台が必要な中、2本目は攻めに出て新技「バックフリップ・バースピン・バーバック to ターンダウン」をメイクしたが、その次の「360・トリプルバースピン」のようなトリックで転倒してしまいランを中断したことで得点を伸ばせず、1本目の得点が採用されて9位で大会を終えた。

溝垣丈司のライディング
©︎Naoki Gaman : Japan Cycling Federation

なお溝垣はラン1本目は「360・ダブルテールウィップ to トボガン」や「360・ダブルバースピン to ワンハンド X-up」、「トリプルトラックドライバー」など良い流れで進めていき最後「180・フェイキー」でまとめると77.80ptというスコアに。

ラン2本目では1本目のランをブラッシュアップし、クオーターでは「トリプルバースピン」そして最後は「180・トボガン to フェイキー」 でランをまとめてスコアを81.36ptまで伸ばした。2本のランの平均点が最終スコアとなるため79.58ptをマークすると全体15位で内藤同様に予選敗退となった。

今大会では中村輪夢をはじめ、出場した日本人選手が世界トップ選手を相手に厳しい戦いを強いられた一戦となった。この時点で2大会の合計の成績でトップ6に残るのは極めて難しい展開となっているが、最終戦のブダペスト大会で日本人選手たちが活躍する姿を期待したい。

決勝進出選手コメント

中村輪夢選手 ©︎Japan Cycling Federation中村 輪夢 選手(男子エリートクラス)
*Olympics.comのインタビューより抜粋引用

「自分のやりたいことができなかったので悔しいです。やってきたことで今回出せたこともありましたが出せなかったこともあるので、出せなかったことをもっと追求して次に向けていきたいと思います。
ブダペスト大会が(オリンピック出場のための)最後の大会になるので、次こそよい走りをしてパリに向かうことができればと思います。ライブを見てくださったみなさん、応援ありがとうございます。今回は不甲斐ない結果になりましたが、次はまた頑張りますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。」

大会結果

左からマーティン、ジャンジャン、ライリーの順
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

<男子エリート>
優勝: アントニー・ジャンジャン (フランス) / 93.54pt
準優勝: ローガン・マーティン (オーストラリア) / 92.65pt
第3位: キーラン・ライリー (イギリス) / 89.28pt
10位: 中村 輪夢 (ナカムラ・リム) / 84.00pt
15位: 溝垣 丈司 (ミゾガキ・ジョージ) ※予選順位 

左からヤーウェン、シベイ、ジアキの順
Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC

<女子エリート>
優勝: スン・シベイ (中国) / 95.86pt
準優勝: スン・ジアキ (中国) / 93.68pt
第3位: デン・ヤーウェン (中国) / 91.50pt
16位: 内藤 寧々 (ナイトウ・ネネ) ※予選順位

各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施

またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。

ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。

特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。

今回のオリンピック予選シリーズ(OQS)では、BMXだけでなく、ブレイキン、スケートボード、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。
選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。

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