コロナ禍からの回復ペースは緩慢ながら、新興国通貨は全般的に堅調地合いを維持してきました。米連邦準備理事会(FRB)による緩和的な金融政策が背景にあります。ただ、新興国のなかでも強弱があり、その差は鮮明になりつつあるようです。





経済開発協力機構(OECD)は5月31日に公表した経済見通しで、世界の成長率について+5.6%から+5.8%に上方修正しました。各国の政策対応で持ち直してはいるものの、ワクチン接種や新興国・低所得国の支援に失敗すれば、格差は拡大すると警鐘を鳴らしています。足元はFRBの緩和政策の長期化が見込まれるなか、新興国通貨はおおむね堅調ですが、個別には「明」と「暗」に分かれます。





OECDがG20のうち比較的好調とみているのはブラジル。成長率は2021年が+3.7%、22年は+2.5%と予想しています。新興国通貨のなかでもブラジルレアルは対ドルで最も強く、市場は再評価し始めました。その要因として考えられるのは、商品価格の上昇です。ブラジルの主要輸出品である鉄鉱石と大豆が高水準で推移しており、世界経済の回復に伴う貿易黒字の拡大がレアル相場を押し上げる見通しです。





一方、ブラジルの今年の成長率を凌ぐものの、来年は伸び悩むと予想されるのが南アフリカです。コロナまん延の影響は次第に和らぎ、回復期待により資金流入が増大しつつあるようです。米格付け会社による格下げも見送られ、ランドは対ドルで2019年の水準に戻しています。ただし、財政や景気見通しが他の新興国と比べ依然ぜい弱で、短期資金が多いことを考えると、リスクは小さくありません。





南アと経常赤字の国内総生産(GDP)比率の高さや乏しい外貨準備などの点でよく似通っているトルコについて、OECDは今年+5.7%、来年+3.4%に失速すると予想しています。が、下方修正の可能性が出てきました。国内では慢性的なインフレが続いているものの、エルドアン大統領が中央銀行への利下げ圧力を強めているためです。それによりトルコリラは過去最安値を更新中で、一段の下げが警戒されます。





国際通貨基金(IMF)が4月6日に公表した世界経済見通しでは、今年の成長率を+6.0%に上方修正し経済の崩壊は阻止されたと指摘しています。ただ、リーマンショック時と比べ、先進国よりも低所得国と新興国への打撃に懸念を示しました。実際、世界経済をけん引する中国は一服感が広がり始めました。インドも金融緩和で株価は最高値圏を維持していますが、インフレ圧力が強く政策的に手詰まり感は否めません。





こうしてみると、新興国全体は減速しつつあり、そのなかでも格差は拡大しているようです。少し前のように、コロナの打撃によく持ちこたえているとは言えなくなったかもしれません。

(吉池 威)



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